『江戸の隼 次男坊侍よろずお届け帖』|千野隆司|角川文庫
2026年2月21日から2月末日にかけて刊行予定の文庫新刊情報として、
「2026年2月下旬の新刊(文庫)」を公開いたしました。
今回、特に注目したいのは、千野隆司さんによる文庫書き下ろし時代小説、
『江戸の隼 次男坊侍よろずお届け帖』(角川文庫)です。
時代小説シリーズの名手による、新シリーズの開幕となります。
あらすじ
武家の堅苦しい空気に馴染めずにいた旗本の次男・宮越隼之助は、稽古の帰り道、腰痛で動けなくなった飛脚・兎屋の主人と出会います。急ぎの文を代わりに届けたことをきっかけに、自らの俊足が人の役に立つ喜びを知り、兎屋を手伝うようになります。
ある日、彼が頼まれたのは、病床の老人がもう一度食べたいと願う蕎麦――「最期の一杯」を届けることでした……。届けものに込められた思いとともに、江戸の町を駆ける隼之助。侍×飛脚の爽快新シリーズ、ここに開幕です。
(『江戸の隼 次男坊侍よろずお届け帖』(角川文庫)カバー裏の紹介文より抜粋・編集)
ここに注目!
千野さんといえば、長年にわたり多くの人気シリーズを手がけてきた、時代小説の名手です。最近も「おれは一万石」(双葉文庫)、「鉞ばばあと孫娘貸金始末」(集英社文庫)、「お節介隠居の便利屋稼業」(文春文庫)シリーズなど、コンスタントに作品を発表されています。
次から次へとオリジナリティあふれる主人公を生み出し、その人物を縦横無尽に活躍させる物語を紡ぎ出す手腕には、思わず膝を打つほどの感心を覚えます。まさに職人的な技巧をもつ作家さんです。
本作の主人公は、旗本の次男坊。特技は足が速いことです。
江戸時代ですから、手足を前後に大きく振らず、同じ側の腕と脚を同時に出す「ナンバ」走りだったのでしょうか。飛脚は、疲れにくいこの走り方で一日に百キロを走ったとも言われています。
さて、千野作品の特長のひとつに、旗本の部屋住みの主人公が家を出て市井で暮らし、さまざまな出会いや苦難を乗り越えながら商家とのつながりを深めていくシリーズがあります。「入り婿侍商い帖」(角川文庫)や「湯屋のお助け人」(双葉文庫)などがその代表例です。この路線のシリーズは爽快感があり、読み味のよい作品として親しまれてきました。
本作がどのような物語を紡いでいくのか、現時点では詳細は分かりませんが、隼之助が飛脚屋でどのような事件に遭遇し、どんな活躍を見せてくれるのか、大いに楽しみです。
また、飛脚という職業の世界も垣間見ることができ、江戸お仕事小説としても興味があります。
西のぼるさんの表紙装画を見ていたら、亡くなられた上田秀人さんと藤井邦夫さんの作品を思い出されました。

今回ご紹介した本












