このコーナーでは、新しく書棚に加わった本を中心に、少しずつご紹介していきます。
光文社文庫の2026年2月の新刊より
今回は、上田秀人さんの『飛躍 「水城聡四郎」シリーズ傑作選』、倉阪鬼一郎さんの『おもいで飯 人情おはる四季料理(四)』、伊藤尋也さんの『綱吉の猫』の3冊紹介します。
『飛躍 「水城聡四郎」シリーズ傑作選』|上田秀人|光文社文庫
あらすじ
「勘定吟味役異聞」「御広敷用人 大奥記録」「聡四郎巡検譚」「惣目付臨検仕る」――上田秀人作品で最長にして大人気の「水城聡四郎」シリーズの傑作選。旗本家の末っ子・水城聡四郎が、ひょんなことから勘定吟味役を命じられ、八代将軍徳川吉宗との関わりを経て成長していく姿を描いた名シリーズ。「惣目付」シリーズ最後の原稿も収録した、記憶に残る一冊。
(『飛躍 「水城聡四郎」シリーズ傑作選』カバー裏の内容紹介より抜粋・編集)
ここに注目!
上田さんは2001年、『竜門の衛』でデビュー。史実を巧みに絡めた伝奇的なストーリーと圧倒的な剣戟描写で、時代小説に新風を吹き込みました。その後、「織江緋之介見参」「勘定吟味役異聞」「奥右筆秘帳」「闕所物奉行 裏帳合」「お髷番承り候」「妾屋昼兵衛女帳面」など、次々と人気シリーズを生み出し、文庫書き下ろしの第一人者として確固たる地位を築きました。
「奥右筆秘帳」シリーズは、2009年に『この文庫書き下ろし時代小説がすごい!』ベストシリーズ第1位に選出され、2014年には第3回歴史時代作家クラブ賞シリーズ賞を受賞。さらに2010年『孤闘 立花宗茂』で第16回中山義秀文学賞、2022年には『百万石の留守居役』シリーズで第7回吉川英治文庫賞を受賞されています。
多くのシリーズが6巻から12巻程度で完結する中、「水城聡四郎」シリーズは主人公の出世とともに物語世界を広げ、「勘定吟味役異聞」「御広敷用人 大奥記録」「聡四郎巡検譚」「惣目付臨検仕る」の4シリーズにわたって書き継がれてきました。作者にとって最も思い入れの深い主人公といえるでしょう。
本書には各シリーズ第1作が収録され、ファンには懐かしく、新規読者には格好の入門編となっています。さらに遺稿「台命 惣目付臨検仕る」も収めた、まさに保存版ともいえる一冊です。
主人公・水城聡四郎は、代々勘定方を務める旗本家の四男。父の隠居と兄の急逝により家督を継ぐことになります。剣の達人でありながら算勘は苦手という異色の人物ですが、儒者・新井白石に抜擢され勘定吟味役となり、表のみならず大奥の不正にも立ち向かいます。
幕府内部の権力闘争と聡四郎の破格の活躍を描く、痛快シリーズの傑作選です。
今回取り上げた本
書誌情報
『飛躍 「水城聡四郎」シリーズ傑作選』
上田秀人
光文社・光文社文庫
2026年2月20日 初版1刷発行
カバーデザイン 田中和枝(Fieldwork)
カバーイラスト 西のぼる
目次
破斬 勘定吟味役異聞(一)
女の陥穽 御広敷用人 大奥記録(一)
旅発 聡四郎巡検譚(一)
抵抗 惣目付臨検仕る(一)
台命 惣目付臨検仕る [遺稿]
解説 末國善己
本文408ページ

『おもいで飯 人情おはる四季料理(四)』|倉阪鬼一郎|光文社文庫
あらすじ
元定廻り同心の優之進と妻のおはるが営む料理屋「晴や」は開店から一年余。常連客にも恵まれ繁盛していた。そんな折、藤沢から来た寅助が料理修業を始めることに。さらに、近くで旅籠を開く予定の竜吉とお幸も修業に加わり、店はますます賑やかに。旅籠の客に「思い出に残る飯をつくりたい」と意気込む竜吉に、優之進は――。好評シリーズ第4弾。
(『おもいで飯 人情おはる四季料理(四)』カバー裏の内容紹介より抜粋・編集)
ここに注目!
元南町奉行所の同心だった優之進は、妻のおはるとともに日本橋と京橋の間、大鋸町の裏通りに料理屋「晴や」を開きました。
有能な同心でしたが、不幸な出来事をきっかけに町人として生きる道を選びます。店にはかつての上役や職人衆、老舗のご隠居などが集い、常連も増えていきました。昨年の秋には娘・おるみも誕生し、店も家庭も温かな時間が流れています。
新たに近くに旅籠ができることになり、主人となる竜吉が挨拶に訪れます。焼き蛤、筍の土佐煮、豌豆の翡翠煮、白魚の筏焼き、鯛茶――春の味覚が並び、読者も思わず舌鼓を打ちたくなります。
さらに藤沢から来た若者・寅助が修業に入り、竜吉とその嫁・お幸も厨房や接客を学ぶことに。人が増えるたびに「晴や」のぬくもりも広がっていきます。
江戸の季節料理と人情が織りなす、心温まるシリーズです。こんな店があれば通い詰めたいと思わせる一冊です。
今回取り上げた本
書誌情報
『おもいで飯 人情おはる四季料理(四)』
倉阪鬼一郎
光文社・光文社文庫
2026年2月20日 初版1刷発行
カバーデザイン 鈴木久美
カバーイラスト 中島花野
目次
第一章 田楽と鯛茶
第二章 若竹鍋と浅蜊づくし
第三章 めで鯛づくし膳
第四章 鯛の膳と深川丼
第五章 刺身膳と炊き込みご飯
第六章 焼き飯と小鉢二種
第七章 いぶし造りともり蕎麦
第八章 鰹の梅たたき膳
第九章 鰻、鮎、穴子
第十章 福来る
終章 海山の幸膳
本文243ページ
文庫書き下ろし

『綱吉の猫』|伊藤尋也|光文社文庫
あらすじ
元禄の江戸城では次期将軍を巡る争いが熾烈を極めていた。貧乏旗本の百地平十郎は「猫奉行」に任じられ、将軍綱吉の愛猫・福松の世話をすることに。御猫番スズとともに世話をするうち、二人と一匹は「将軍の忍びでは」と疑われ、権力闘争に巻き込まれていく……。
(『綱吉の猫』カバー裏の内容紹介より抜粋・編集)
ここに注目!
2023年、『土下座奉行』で第12回日本歴史時代作家協会賞文庫書き下ろし新人賞を受賞した著者の最新作です。
百地平十郎は、伊賀忍びの名家・百地家の分家ながら忍びではなく、小普請組の身。柳沢吉保に呼び出され、将軍綱吉の愛猫・福松の世話を命じられます。部下は御猫番のスズただ一人。
福松は眉間から毛色が人の字に分かれた“はちわれ”の子猫。可愛らしさとは裏腹に、将軍後継を巡る甲州派と紀州派の対立の渦中で、思わぬ騒動を巻き起こします。
江戸城の松の廊下に猫が紛れ込んだことから大騒動に発展し、平十郎は「将軍の忍び」と疑われることに。生真面目な対応が事態をさらにややこしくしていきます。
抱腹絶倒のユーモア時代小説の幕開けです。
今回取り上げた本
書誌情報
『綱吉の猫』
伊藤尋也
光文社・光文社文庫
2026年2月20日 初版1刷発行
カバーデザイン 坂野公一(welle design)
カバーイラスト Debuneko Pyo
目次
其の壱 猫と猩々(前編)
幕間の壱
其の弐 猫と猩々(後編)
幕間の弐
其の参 はちわれ猫の端午(前編)
幕間の参
其の肆 はちわれ猫の端午(後編)
幕間の肆
其の伍 猫屋敷の決戦(前編)
幕間の伍
其の陸 猫屋敷の決戦(後編)
結
本文275ページ
文庫書き下ろし











