『源さんの味噌汁』|松下隆一|時代小説文庫
2026年2月11日から2月20日に刊行予定の文庫新刊情報として、「2026年2月中旬の新刊(文庫)」を公開いたしました。
今回、特に注目したい一冊が、松下隆一さんによる時代小説『源さんの味噌汁』(時代小説文庫)です。
著者について
著者は、2007年に「二人ノ世界」で第10回日本シナリオ大賞佳作に入選。以降、脚本家として長年活躍し、映画『二人ノ世界』『獄(ひとや)に咲く花』、ドラマ『天才脚本家 梶原金八』『雲霧仁左衛門』などを手がけてきました。
2020年には『羅城門に啼く』(新潮社)で第1回京都文学賞を受賞。さらに2023年に『侠(きゃん)』(講談社)で第6回細谷正充賞、2024年には同作で第26回大藪春彦賞を受賞しています。
2024年11月には、文庫書き下ろし作品『落としの左平次』を発表し、時代小説ファンの心をつかみました。同シリーズは、2026年2月時点で第3巻まで刊行されています。
あらすじ
生まれつき耳が聴こえない捨て子のゲンさんは、生きる意味すら知らずに物乞いとして暮らしていました。 御家人だったソウさんは、視力を失ったことで妻子と離別し、過去を捨てて按摩として生きています。 ある出来事をきっかけに、ともに暮らすことになった二人は、お互いの不自由を補い合いながら日々を過ごしていましたが、生活の厳しさは増すばかりでした。 そんなある日、思いがけず女の赤ん坊を拾ったことで、二人に生きる歓びが訪れます。 赤ん坊を育てながら、江戸・両国で小さくも味が評判の味噌汁屋を営むことになった二人ですが、それはさらなる試練の始まりでもありました……。 厳しい境遇に生きる人々の絶望と希望を、温かくも透徹した眼差しで描き切る長編時代小説です。
(『源さんの味噌汁』Amazonの内容紹介より、抜粋・編集)
ここに注目!
本作は、2021年1月に刊行された『ゲンさんとソウさん』(薫風社)を、文庫化にあたり加筆・修正し、改題した作品です。
文庫版あとがきによると、この物語は、十年ほど前に俳優・火野正平さんが書かれたエッセイをきっかけに生まれたといいます。目の見えない男と耳の聞こえない男の物語は、著者の手によって深い友情譚へと昇華されました。しかし映画化は叶わぬまま、残念ながら火野さんは逝去されました。
ゲンさんは、生まれつき耳が聞こえない物乞いで、家庭を知らず、生きる意味を考えることもなく、その日その日を生きてきました。
一方のソウさんは、かつて御家人として妻と娘を持っていましたが、ある日視力を失ったことで家族と離別し、家を出て按摩となります。
そんな二人が、ある出来事をきっかけに、ともに暮らし始めます。
掘っ立て小屋同然のぼろ家ながら、初めて屋根のある家に住むことになったゲンさん。
手のひらに文字や絵を描いて、意思疎通を図ろうとするソウさん。
相手の思いを汲み取り、役に立とうと懸命に行動するものの、失敗を重ねてしまうゲンさん。
そんなゲンさんに対して、怒りの声を上げることも手を上げることもなく、脱力したように大きなため息を吐くだけのソウさん。
二人の不思議でありながら優しい関係に、自然と目を奪われていきます。
厳しい境遇の中で生きる歓びを見いだし、力を合わせて懸命に生きていく二人の姿は、現代人が忘れかけている「互いを思いやる心」の温かさと美しさを、静かに伝えてくれます。
胸を打つ、感涙必至の時代小説です。

今回ご紹介した本












