【今日の書棚】東京にいながら、京都に思いを馳せる

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このコーナーでは、新しく書棚に加わった本を中心に、少しずつご紹介していきます。

PHP文芸文庫の2025年12月の新刊より

最近、新刊をタイムリーに紹介できなくなっていて、読者の方、書店の方、出版社の方、そして著者の方に対して、大変申し訳なく思っています。
本当にごめんなさい。
今回は、積読の山に埋もれる寸前、ジェンガのような状態になっている新刊本たちの中から取り出しました。

PHP文芸文庫は吟味して選び抜かれた作品ばかりで、大好きな文庫レーベルの一つです。
いつもタイトルに注目しています。

今回は、白川紺子(しらかわ・こうこ)さんの『京都くれなゐ荘奇譚(六) 恋は呪いに咲き誇る』天花寺さやか(てんげいじ・さやか)さんの『京都府警あやかし課の事件簿10 聖なる護衛と神猫』、細谷正充さん編による『えどぐらし 〈市井〉時代小説傑作選』の3冊紹介します。

『京都くれなゐ荘奇譚(六) 恋は呪いに咲き誇る』|白川紺子|PHP文芸文庫

あらすじ

高良(たから)が澪の前から姿を消して二年。命の期限が迫っている澪は、自らにかけられた呪いを解き、高良とともに生きる道を探すため、多気女王(たきのおおきみ)が亡くなった地に狙いを定め、熊野に向かう。久しぶりに高良に逢ったものの連れ戻すことじはできず、いったん京都に帰った澪だが、高良が帰ると言っていた冬至の日に再び熊野を訪れる。二人を最後に待ち受ける運命とは。
人気の呪術幻想譚シリーズ完結編。

(『京都くれなゐ荘奇譚(六) 恋は呪いに咲き誇る』カバー裏の内容紹介より抜粋・編集)

ここに注目!

京都くれなゐ荘奇譚(六) 恋は呪いに咲き誇る実は、2021年5月に、このシリーズの第1作で『京都くれなゐ荘奇譚 呪われよと恋は言う』で、白川紺子(しらかわ・こうこ)さんの作品を読んで、この作家のことを知り、ライトノベルへの関心が芽生え、ライトノベル系の作家の作品を少しずつ手に取るようになりました。視野を広げるきっかけを与えてくれた恩人のような作品です。

前作から二年が経過し、澪は十九歳になりました。
「二十歳になるまで生きられない」と呪いをかけられた澪に残された時間はわずか。
澪と高良にどんな運命が待ち構えているのでしょうか。

本作の魅力は、呪いをかけられた二人の純愛で、キュンキュンしながら読んでいます。
それとともに、古都・京都に残る様々な呪いとそれを祓う力の描写も興味深く引き付けられます。今回はさらに熊野の魅力も描かれています。

物語に登場する京都の風景も好きです。
澪の住んでいる下宿屋「くれなゐ荘」は洛北・一乗寺にあり、蟲師(まじないし)たちが暮らしています。その土地を手に入れたり、立ち入ったりすると禍を招くという癖地(くせち)は中京区の町家にあったり、高良の消息を知る手がかりを求めて八瀬に行ったりと。

今回で物語が完結するのは残念ですが、著者の他の作品も読みたいと思います。


今回取り上げた本


書誌情報

『京都くれなゐ荘奇譚(六) 恋は呪いに咲き誇る』
白川紺子

PHP研究所・PHP文芸文庫
2025年12月19日 第一刷発行

装丁 こやまたかこ
装画 げみ

目次
癖地
多気女王
恋は呪いに咲き誇る
番外編 春夏秋冬

本文234ページ
文庫書き下ろし

白川紺子|小説ガイド
白川紺子|しらかわこうこ|小説家1982年、三重県生まれ。同志社大学文学部卒業。2011年、154回Cobalt短編小説新人賞入選。2012年、「嘘つきな五月女王(メイ・クイーン)」で、2012年度ロマン大賞を受賞し、2013年、同作を改題...

『京都府警あやかし課の事件簿10 聖なる護衛と神猫』|天花寺さやか|PHP文芸文庫

あらすじ

京都信奉会との全面対決に向け、あやかし課の隊員たちは、それぞれスキルアップのための修行に励んでいます。そんな中、海外から「要神」として神猫が人探しのために京都を訪れ、大たちがその警護を担当することになります。京都で行われる全国高校駅伝に探し人がやって来るという噂を聞き、喜ぶ神猫でしたが、実はそれは神猫を狙ったテロ計画の一端だったのです――。 第七回京都本大賞受賞の大人気シリーズ、待望の第十弾です。

(『京都府警あやかし課の事件簿10 聖なる護衛と神猫』カバー裏の内容紹介より抜粋・編集)

ここに注目!

京都府警あやかし課の事件簿10 聖なる護衛と神猫 本シリーズについて、実は勘違いをしていました。タイトルから、勝手に警察小説だと思っていたのですが、第10巻にして初めて読んでみると、単なる警察小説ではなく、「あやかし+恋+ファンタジー」が融合した物語でした。

著者は、投稿サイト「エブリスタ」で「京都しんぶつ幻想記」が「現代ファンタジー×神様」部門にて1位を獲得し、同作を加筆・改題した『京都府警あやかし課の事件簿』(PHP文芸文庫)でデビューしました。本書はその第10巻です。

京都出身の著者ならではの京都愛がたっぷりと詰まっており、その物語世界はとてもディープです。熱心なファンが多いのも納得できました。
2019年に第7回(2019年度)「みんなで選ぶ 京都本大賞」を受賞していることにも、う納得です。

京都府警が擁する「人外特別警戒隊」、通称「あやかし課」。化け物から神様まで、あやかしが関わるあらゆる事件を、人知れず解決するのが彼らの任務です。
そんなあやかし課に、新人女性隊員・大(まさる)が配属されます。しかし、彼女にはある秘密があり……。個性豊かなメンバーとともに仕事に励みながら成長していく、悩みと修行に満ちた青春ファンタジーです。

本書第10巻では、カルタス王国から要人ならぬ要猫・神猫(シェンマイ)が来日し、その警護を任された大と塔太郎たちあやかし課の面々が活躍します。シェンマイが来日した目的は、「初恋の人」を探すことでした。京都の冬の風物詩・全国高校駅伝を背景に、一大騒動が巻き起こります。

第1巻から通して読み、早くキャッチアップしたいと思いました。

「京都府警あやかし課の事件簿」シリーズ〜天花寺さやかのデビュー作あやかし警察小説 |PHP研究所
京都府警が擁する「人外特別警戒隊」、通称「あやかし課」。化け物捜査専門のこの部署に入隊したばかりの新人女性隊員・大(まさる)と、若き隊員たちの活躍を描く。第7回京都本大賞を受賞した大人気あやかし警察小説。


今回取り上げた本


書誌情報

『京都府警あやかし課の事件簿10 聖なる護衛と神猫』
天花寺さやか

PHP研究所・PHP文芸文庫
2025年12月19日 第一刷発行

装丁 小川恵子(瀬戸内デザイン)
装画 ショウイチ

目次

第一話 落橋家の秘酒事件と大達の「一年半後」
第二話 えにし重なる松尾大社
第三話 聖なる護衛と神猫の初恋
終章

本文391ページ
文庫書き下ろし

天花寺さやか|作品ガイド
天花寺さやか|てんげいじ|ライトノベル作家京都市生まれ。小説投稿サイト「エブリスタ」で発表した「京都しんぶつ幻想紀」が好評を博し、同作を加筆修正し、改題した『京都府警あやかし課の事件簿』でデビュー。2019年、同作で第7回京都本大賞を受賞。...

『えどぐらし 〈市井〉時代小説傑作選』|細谷正充編|PHP文芸文庫

あらすじ

兄が急逝し、質屋を継ぐことになった向之助でしたが、しくじりによって店は傾いてしまいます。奉公人たちが去る中、口入屋から紹介されたのは壮平という老人でした(「江戸の柄杓屋」高田在子・書き下ろし)。また、売れない絵師に紙を届けることになった紙問屋のお庸は、彼の人柄と絵に惹かれていきますが、突如として作品が売れるようになり、周囲の態度が一変します(「むらさき」木内昇)。
江戸の人々の哀歓を描いた五編を収録しています。

(『えどぐらし 〈市井〉時代小説傑作選』カバー裏の内容紹介より抜粋・編集)

ここに注目!

えどぐらし 〈市井〉時代小説傑作選 シリーズ累計55万部を突破する人気アンソロジーの第21弾です。

本シリーズの特徴は、毎回ひとつのテーマを設け、5~6人の短編作品を収録している点にあります。現役で活躍中の作家による力作が揃っており、収録作品のラインナップを見るだけでも、思わず手に取りたくなります。「よくぞこの作品を選んでくれた」と、うれしく感じることも少なくありません。

本書『えどぐらし〈市井〉』では、江戸の町に生きる人々の喜怒哀楽を描いた5編を収録しています。

朝井まかてさんの「蒼雲」は、貧乏御家人の三男坊を主人公にした物語です。口減らしのため酒問屋で働いていましたが、兄二人が亡くなったことで家を継ぐことになります。しかし、小普請組となり、勤め口がなく……。

中島要さんの「夫婦(めおと)千両」は、富くじに当たったことから夫婦に起こる悲喜劇を描いています。

三國青葉(みくに・あおば)さんの「倒書(とうしょ)」は、女子ばかりの手習い所で師匠になったばかりの主人公の悩みと成長を描いた、読み味の良い一編です。倒書とは、師匠が子どもの字を直す際、向かいに座ったまま逆さまに字を書くことを指します。子どもから正しく読めるように書く、師匠にとって必須の技です。

とくに注目したいのが、文庫書き下ろし作品で活躍し、単行本『飛上りもん』が話題となっている気鋭の時代小説家・高田在子(たかだ・ありこ)さんによる「七つ星向之助 江戸の柄杓星」です。兄の死をきっかけに質屋を継いだ若者の奮闘を描き、テンポの良い展開で大いに楽しませてくれます。

本書収録作は以下の通りです。
蒼雲 朝井まかて
夫婦千両 中島要
七つ星向之助 江戸の柄杓星 高田在子
倒書 三國青葉
むらさき 木内昇


今回取り上げた本


書誌情報

『えどぐらし 〈市井〉時代小説傑作選』
細谷正充編
朝井まかて・中島要・高田在子・三國青葉・木内昇

PHP研究所・PHP文芸文庫
2025年12月19日 第一刷発行

装丁 芦澤泰偉+明石すみれ
装画 卯月みゆき

目次
蒼雲 朝井まかて
夫婦千両 中島要
七つ星向之助 江戸の柄杓星 高田在子
倒書 三國青葉
むらさき 木内昇

解説 細谷正充

本文282ページ
文庫オリジナル
出典:
「蒼雲」 朝井まかて『草々不一』所収 講談社文庫
「夫婦千両」 中島要「小説宝石」2018年7月号掲載 光文社文庫
「七つ星向之助 江戸の柄杓星」 高田在子 書き下ろし
「倒書」 三國青葉『心花堂手習ごよみ』所収 ハルキ文庫
「むらさき」 木内昇『化物蝋燭』所収 朝日文庫

細谷正充編|時代小説ガイド
細谷正充|ほそやまさみつ|文芸評論家・書評家1963年生まれ。時代小説、ミステリーなどのエンターテインメントを対象に、評論・執筆。自宅に20万冊という膨大な書庫を持つ蔵書家。2018年より、優れたエンターテインメント小説5作品を選出して「細...