【今日の書棚】七ツ下がりに出会った女二人の友情を描く連作集

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このコーナーでは、新しく書棚に加わった本を中心に、少しずつご紹介していきます。

『七ツ下がりの女たち』|志川節子|朝日新聞出版

「七ツ下がり」とは、今の時間で言えば、午前四時過ぎ頃(明け方)および午後四時過ぎ頃(夕方)を指します。

本書では、人の一生を一日の中で刻々と移ろっていく空模様にたとえ、産声を上げて生まれてくるのが暁七ツ、娘時分は朝四ツ、働き盛りは正午の昼九ツ、そして三十代後半から四十代前半(アラフォー世代)の女性たちを、人生の七ツ下がりと表現しています。

夜にはまだ間があるとはいえ、結婚し、子育てや介護など家族のために過ごしてきたり、仕事でも若い頃に比べて体力や腕前の衰えを自覚し、先行きに不安を感じ始める頃でもあります。

本書は、そうした七ツ下がりを迎えた女性たちの日常を、連作形式で描いています。

あらすじ

十代のころ、水からくりの女太夫として見世物小屋を沸かせてきたおはつは、引退後、舞台裏の雑用などをこなしながら、子育てと介護をしてきましたが、ふたたび舞台に立ちたいと思い始めています。
仕事一筋で、過去には大評判を取り、型紙職人として技巧を極めてきたおもんは、齢を重ねるにつれ、体力も腕前も落ちてきていることを実感し、先行きに不安を抱いています。

あることをきっかけに友人づきあいを始めた二人は、女手ひとつで子育てをしてきたこと、技量を極めたいと思っていることなど、互いに似たところがあることを知り、急速に交友を深めていきます。
しかし、実際には正反対の二人は、相手には伏せていることもあって……

(『七ツ下がりの女たち』Amazonの内容紹介より抜粋・編集)

ここに注目!

七ツ下がりの女たち『七ツ下がりの女たち』は、江戸に生きる女性たちを描いた連作時代小説です。

おはつは三十七歳。十代の頃、「初音太夫」の名で見世物小屋を沸かせた水からくりの芸人です。水からくりとは、女太夫(演者)の体や小道具から水がほとばしる出し物のことで、アイドルのような若い娘が女太夫を務めることが多く、人気を集めました。水芸(みずげい)とも言います。

おはつは、人気絶頂のときに引退し、子育てと姑の介護をしてきましたが、七ツ下がりに近づき、主婦としての生活に区切りがついたとき、再び舞台に立ちたいと思い始めます。

一方のおもんは四十一歳。伊勢型紙職人として技巧を極めてきましたが、ある日、胸の苦しさを訴え、医者から女性特有の血の道症と診断されます。人生の坂道の下りに差しかかっていると告げられ、自分がお払い箱になったような心持ちになっていきます。

人生の折り返し点を迎えた江戸の女性たちの仕事と家族への想い、揺れ動く心情を描いています。

仕事に疲れた方、生活に張り合いを感じられない方、自分を励ましたい方に、癒しを与えてくれる一冊です。


今回取り上げた本
書誌情報

『七ツ下がりの女たち』
志川節子

朝日新聞出版
2026年1月30日 第一刷発行

装丁 田中久子
装画 立原圭子

目次
逃げ水
つづら折り
昔日の光
去年今年
門出
七つ下がりの女たち

本文307ページ
四六判ソフトカバー

初出:
「逃げ水」 「週刊朝日」2021年11月12日号~2021年12月3日号
「つづら折り」 「週刊朝日」2023年5-12日合併号~6月2日号
「昔日の光」 「小説トリッパー」2024年春季号
「去年今年」 「小説トリッパー」2024年夏季号
「門出」 「小説トリッパー」2024年秋季号
「七つ下がりの女たち」 「小説トリッパー」2024年冬季号

志川節子|時代小説ガイド
志川節子|しがわせつこ|時代小説・作家1971年、島根県生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業。2003年、「七転び」で第83回オール讀物新人賞を受賞。2013年、『春はそこまで 風待ち小路(こみち)の人々』が第148回直木賞候補に。2020年...