【今日の書棚】祝「陰陽師」シリーズ40周年! 新刊2冊

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このコーナーでは、新しく書棚に加わった本を中心に、少しずつご紹介していきます。

シリーズ第18巻『陰陽師 烏天狗ノ巻』、第19巻『陰陽師 氷隠梅ノ巻』

『陰陽師 烏天狗ノ巻』|夢枕獏|文春文庫

夢枕獏さんの「陰陽師」シリーズが初めて「オール讀物」に掲載されたのは、1986年9月号でした。2026年は、ちょうど「陰陽師」40周年にあたります。アニバーサリーイヤーを自ら祝うかのように、シリーズ第18巻となる『陰陽師 烏天狗ノ巻』文春文庫から、第19巻の『陰陽師 氷隠梅ひごもりのうめノ巻』が単行本として、2026年1月に相次いで刊行されました。

ここに注目!

陰陽師 烏天狗ノ巻本書には、Xで話題となった「梅道人」をはじめ、全八話が収録されています。
「兼家奇々掻痒」は、関白・藤原兼家が原因不明の全身の痒みに悩まされ、晴明を頼る物語です。その意外な原因とは何なのでしょうか。

兼家は「哪吒太子」の話にも登場します。シリーズでは、高い身分の貴族でありながら、食いしん坊で女好きという俗物的な一面を持ちつつ、どこか憎めない人物として描かれ、コメディリリーフ的な役割を担っています。大河ドラマ「光る君へ」での段田安則さんの姿が思い浮かんでしまいます。

「媚珠」と「殺生石」では、シリーズをより面白くしている晴明のライバル、陰陽師・蘆屋道満が主役を務めます。その並外れた怪物ぶりは、まさに見ものです。

「哪吒太子」と「按察使大納言 不思議のこと」では、貴族・橘実之の娘が生き生きと描かれています。十八歳になる露子は、同じ年頃の娘たちのように御簾の向こうに姿を隠したり、外出の際に被衣で顔を覆ったりすることもなく、近所の男の子たちと一緒に虫やどじょうを捕まえる、まるで「蟲愛づる姫君」のような存在です。
晴明の家にも頻繁に出入りし、さまざまな相談を持ちかける姿が印象に残ります。

さて、「梅道人」では、いつもとは少し趣の異なる晴明と博雅の関係を楽しめる点も、本書の大きな読みどころの一つです。

あらすじ

朱雀大路で焼き栗を商う行者が、晴明の屋敷を訪れる。聞けば、夜な夜な烏天狗に踏みつけられ、「罰あたりめ」と折檻されるという(「ちび不動」)。酒を愛する蘆屋道満が招かれた、怪しげな茅葺家の主の正体とは(「殺生石」)。古今東西の妖が引き起こす、愉快で恐ろしい事件の数々。晴明と博雅の名コンビの魅力が詰まった、傑作シリーズ第18巻!

(『陰陽師 烏天狗ノ巻』カバー裏の内容紹介より抜粋・編集)

今回取り上げた本
書誌情報

『陰陽師 烏天狗ノ巻』
夢枕獏

文藝春秋・文春文庫
2026年1月20日 初版1刷発行

装画:村上豊
デザイン:城井文平

目次
兼家(かねいえ)奇々(きき)掻痒(かいかい)
金木犀の夜
ちび不動
媚珠(びしゅ)
梅道人(むめどうじん)
殺生石(せっしょうせき)
哪吒(なた)太子(たいし)
按察使(あぜち)大納言 不思議のこと

本文318ページ
単行本『陰陽師 烏天狗ノ巻』(文藝春秋、2023年10月刊)を文庫化したもの

初出
兼家奇々掻痒 「オール讀物」2018年10月号
金木犀の夜 「オール讀物」2018年11月号
ちび不動 「オール讀物」2019年11月号
媚珠 「オール讀物」2020年1月号
梅道人 「オール讀物」2022年3・4月合併号
殺生石 「オール讀物」2022年8月号
哪吒太子 「オール讀物」2022年9・10月合併号
按察使大納言 不思議のこと 「オール讀物」2023年1月号

夢枕獏「陰陽師シリーズ」特設サイト | 特設サイト
死霊、生霊、鬼などが人々の身近で跋扈した平安時代。陰陽師安倍晴明が親友の源博雅と組み、幻術を駆使してこの世ならぬ難事件の数々に挑む大人気シリーズ。

『陰陽師 氷隠梅ノ巻』|夢枕獏|文藝春秋

一口に40周年といいますが、一人の作家が同じシリーズを書き続けることは、並大抵のことではありません。しかも本シリーズは、累計700万部を突破する大ロングセラーでもあります。
連載開始当初から読み続けている読者もいれば、40周年を機に読み始めたばかりの方もいるでしょう。なぜこれほど多くの人を惹きつけるのか。その秘密を探るには、実際に読んでみるほかありません。

ここに注目!

陰陽師 氷隠梅ノ巻

「氷隠梅(ひごもりのうめ)ノ巻」というタイトルは、「菓子女仙」という作品に由来しています。
物語は、游仙(ゆうせん)という女道士が、筑前から京へやって来て、晴明の屋敷を訪れるところから動き出します。游仙は、大宰府に流された菅原道真から菓子作りを学び、その菓子で病を癒やしたと語ります。游仙が持ち込む相談事とは何なのでしょうか。
ファンタジー色の濃い物語ですが、読後には心に深く沁み入るものがあります。

本書でも藤原兼家が登場する話が「あちちの関白」「碧瑤杯」「黄金兼家」「カタリ爺」の4編、蘆屋道満が登場する話が「碧瑤杯」「ひもひめ」「火車」「色は匂へど」の4編と、いずれも準主役級の活躍を見せ、物語を大いに盛り上げてくれます。

とくに「碧瑤杯」は、兼家と道満のキャラクターが存分に生かされた怪奇幻想的な物語であり、後の展開への伏線にもなっていて、強い興趣を覚えました。

あらすじ

「あの女道士、月を飲ませたらしい」

二度と同じ菓子を作らぬ女道士。菅原道真につながるこの女に、「死人に食べさせたい」という菓子作りの依頼が舞い込む……。
晴明と博雅の変わらぬ魂が胸を打つ、心震える全8編を収録。

「碧瑤杯」……兼家はかよわき女子が好きである。しかし、いつものように通っていた家には、まさかの別の男がいた。とぼとぼと帰路に着く兼家の前に、胸一つの女・青菩薩が現れる。

「カタリ爺」……いつの頃からか、京の鴨川近くの辻で、よどみなく物語を語る老爺がおり、人々からカタリ爺と呼ばれていた。その評判を聞いた兼家が屋敷に招くほどであったが、ある日、忽然と姿を消してしまう。

そのほか、「菓子女仙」「あちちの関白」「ひもひめ」「黄金兼家」「火車」「色は匂へど」など、読み応え十分の全8編を収録。

(『陰陽師 氷隠梅ノ巻』Amazon内容紹介より抜粋・編集)


今回取り上げた本
書誌情報

『陰陽師 氷隠梅ノ巻』
夢枕獏

文藝春秋
2026年1月10日 第一刷

装画:村上豊
装丁:上楽藍

目次
あちちの関白
碧瑤杯(へきようはい)
菓子女仙(かしにょせん)
ひもひめ
黄金兼家(こがねかねいえ)
火車(ひのくるま)
色は匂(にほ)へど
カタリ爺(じい)
あとがき

本文316ページ
四六判ソフトカバー

初出
あちちの関白 「オール讀物」2023年6月号
碧瑤杯 「オール讀物」2023年8月号
菓子女仙 「オール讀物」2024年1月号
ひもひめ 「オール讀物」2024年5月号
黄金兼家 「オール讀物」2024年9・10月合併号
火車 「オール讀物」2025年1月号
色は匂へど 「オール讀物」2025年5・6月合併号
カタリ爺 「オール讀物」2025年7・8月合併号、2025年9・10月合併号

夢枕獏|時代小説ガイド
夢枕獏|ゆめまくらばく|作家1951年、小田原生まれ。1989年、『上弦の月を喰べる獅子』で第10回日本SF大賞を受賞。1998年、『神々の山嶺』で第11回柴田練三郎賞を受賞。2011年、『大江戸釣客伝』で第39回泉鏡花文学賞、第5回舟橋聖...