『おまあ推理帖』|諸田玲子|文藝春秋
2026年1月1日から1月末日までに、単行本(ソフトカバー含む)で刊行される時代小説の新刊情報をまとめたリスト、「2026年1月の新刊(単行本)」を公開しました。
今月の注目作は、諸田玲子さんによる時代小説『おまあ推理帖』(文藝春秋)です。
2026年はアガサ・クリスティ没後50年にあたります。
クリスティが生み出した、イギリスの田舎町に暮らす老婦人探偵ミス・マープルを、時代小説家の諸田玲子さんが、江戸・浅草に生まれ変わらせました。
あらすじ
丸顔で黒目がちな目、いつもにこにこして、するりと他人の心の奥に入り込むおまあさん。江戸は浅草、浅草寺の西方にある幸龍寺の一角の小さな家で、庭に野草を育て、茶を皆にふるまう気ままな隠居暮らしをしています。そんなおまあの家には女たちが集い、さまざまな悩みや事件が持ち込まれます。
密通を告発する怪文書がそばに置かれた死体(「うごめく怪文」)、
茶碗屋で亡くなった後妻の袂に入っていた米粒の理由(「袂に米粒を」)、
大昔に当主と妻女が亡くなったという凶宅・榎屋敷の怪事件(「眠れる殺人鬼」)、
南町奉行所の同心への殺人予告(「先触れ殺人」)、
先代将軍の美貌のお中臈をめぐる謎(「銅鏡はくもって」)、
鎌倉の材木商から破格の報酬で頼まれた大山詣りで明らかになった事実(「復讐の咲耶姫」)……と、(『おまあ推理帖』表紙カバーの紹介文より抜粋・編集)
ここに注目!
愛らしいおまあですが、実は手裏剣の名手です。過去には命を受けて“ある仕事”に携わっていたり、南町奉行の根岸肥前守鎮衛と秘密の関係があったりと、知られざる一面も持っています。
〈鳥舞のおまあ〉と呼ばれていた当時の仲間である〈夜駆のおりゅう〉〈怒髪の勝次〉たちと協力して謎を解く連携プレーや、合羽長屋の少年・乙吉との交流も描かれた、心温まるミステリです。
私はこれまでアガサ・クリスティ作品をほとんど読んでこなかったのですが、没後50年という記念の年でもあり、よい機会だと思ってミス・マープルものを2冊注文しました。
恥ずかしい話ですが、長いあいだ「ミス・マーブル」だと思い込んでおり、正しくはミス・マープル(Miss Marple)だったのですね。
海外ミステリ・フリークとして知られる著者が、どのようにミス・マープルに心躍らせ、おまあさんというキャラクターを創り出し、本作を執筆したのか。
読み比べながら、作品世界を大いに楽しみたいと思います。
明治期にジャーナリスト、作家として活躍した黒岩涙香(くろいわ・るいこう)が得意としていたのも、海外小説の翻案でした。日本名や日本風の舞台設定を取り入れ、読者に親しみやすい形でミステリを紹介し、論理的推理を重視した本格ミステリの先駆者とされています。
もちろん本作は、ミス・マープルのミステリの翻案ではなく、設定やストーリーは著者オリジナルのものです。
こうした試みは知的好奇心を大いにくすぐり、読者としても実に面白く、心躍らされます。

今回取り上げた本















