【今日の書棚】江戸時代の神奈川の流通・産業・観光を俯瞰する

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このコーナーでは、新しく書棚に加わった本を中心に、少しずつご紹介していきます。

巨大都市江戸との関係性から神奈川県域の歴史を発掘

本日は、安藤優一郎さんによる歴史読み物、『江戸を支えた神奈川――流通・産業・観光』(有隣新書)をご紹介します。

有隣新書は、神奈川県を中心に全国展開する大手書店チェーン・有隣堂が刊行している新書レーベルです。

 古来の相模、武蔵の地を占める神奈川県は、中世にあっては鎌倉が幕府政治の中心地となり、近代においては横浜が開港場として西洋文化の窓口となるなど、日本史の流れの中で数々のスポットライトを浴びてきた。

 有隣新書は、これらの個々の歴史的事象や人間と自然とのかかわり合い、ときには現代の地域社会が直面しつつある諸問題を取り上げながら、広く全国的視野、普遍的観点から、時流におもねることなく地道に考え直し、人知の新しい地平線を望もうとする読者の糧を贈ることを目的として企画された。

(「有隣新書刊行のことば」より抜粋・引用)

この言葉どおり、有隣新書は豊かで多様性に富んだ地方文化の維持・発展を目指し、神奈川県に根差した出版活動を行っています。

『江戸を支えた神奈川――流通・産業・観光』|安藤優一郎|有隣新書

江戸を支えた神奈川――流通・産業・観光

本書は、江戸時代の神奈川県域(武蔵国・相模国)の流通・産業・観光に光を当て、当時すでに百万都市となっていた江戸を支える重要な地域であったことを解き明かしています。
鎌倉時代から室町時代にかけて政治の中心であった鎌倉、そして戦国時代に関東に覇を唱えた北条氏の本拠地・小田原。徳川家康の国替えによって、いずれも一時は都市としての役割を失いましたが、やがて東海道の整備や水陸交通網の発達とともに、江戸の発展を支える後背地として新たな役割を担うようになっていきます。

第一章「家康の江戸入城と周辺地域の再編」では、徳川家康が江戸をお膝元に定めたことで、周辺地域が幕府直轄領や旗本領を集中的に配置されるエリアへと改編されていく様子をたどります。

第二章「江戸との流通を支えた神奈川の水陸交通網」では、江戸の商品経済を下支えした水陸交通網に焦点を当てています。

第三章「江戸の生活を支えた神奈川の地域産業」では、周辺地域が江戸向けに食料や燃料などの生活必需品を供給していた実態を明らかにします。

第四章「江戸で活躍し、将軍の生活を支えた神奈川の商人、農民、漁民」では、江戸に進出して商人として成功した豪農や、大名屋敷に奉公した豪農の娘、江戸城の将軍に水産物を献上した漁民、将軍の鷹狩りを支えた農民など、多彩な人々の姿が描かれます。

第五章「江戸からの観光客で賑わった神奈川の観光地」では、片道一泊程度というアクセスの良さを背景に、多くの人々で賑わった県内の観光地を取り上げます。

第六章「幕末の江戸と神奈川」では、江戸の混乱に巻き込まれていく幕末期の神奈川の姿を追います。

神奈川と江戸の関係史を俯瞰でき、神奈川の存在が江戸の発展と成長を力強く支えていたことがよくわかる一冊です。神奈川県民のみならず、江戸時代の歴史に関心を持つすべての人に手に取ってほしい内容と言えるでしょう。


今回取り上げた本
書誌情報

『江戸を支えた神奈川――流通・産業・観光』
安藤優一郎

有隣堂・有隣新書
2025年12月26日初版第一刷発行

カバー:芳虎『東海道 神奈川』佐野富、文久3 国立国会図書館デジタルコレクション
デザイン原案:村上善男

目次
プロローグ
神奈川県域の主な街道・宿場・湊の概念図(江戸期)

1.家康の江戸入場と周辺地域の再編
(1)関東の中心だった鎌倉と小田原
(2)豊臣秀吉の小田原攻めと徳川家康の関東国替え
(3)関東各地に配置された徳川家臣団

2.江戸との流通を支えた神奈川の水陸交通網
(1)東海道各宿場と箱根関所の設置
(2)江戸への流通を支えた相模川
(3)神奈川は海陸交通のハブだった
(4)江戸湾の玄関口・浦賀

3.江戸の生活を支えた神奈川の地域産業
(1)新田開発による農地の拡大
(2)生活必需品の供給地だった江戸周辺地域
(3)「地方巧者」として活躍した川崎宿名主・田中休愚
(4)砂糖の国産化に奔走した橘樹郡大師河原村名主・池上幸豊

4.江戸で活躍し、将軍の生活を支えた神奈川の商人、農民、漁民
(1)江戸で商売を展開した高座郡一之宮村名主・入沢家
(2)江戸で奥奉公した橘樹郡生麦村名主・関口家の娘千恵
(3)水産物を江戸城に上納した御菜八カ浦と多摩川・相模川流域の村
(4)将軍の鷹狩りを支えた鷹場組合からの上納物

5.江戸からの観光客で賑わった神奈川の観光地
(1)観光地として再生した鎌倉
(2)女性に人気が高かった江の島詣
(3)将軍の厄除け伝説と川崎大師
(4)江戸っ子の夏の風物詩・大山詣り
(5)温泉地として賑わった箱根

6.幕末の江戸と神奈川
(1)江戸の防波堤となった周辺地域
(2)江戸の経済力強化を見据えた横浜開港
(3)江戸の終焉と東京の誕生

エピローグ

本文254ページ
書き下ろし

安藤優一郎|著作ガイド
安藤優一郎|あんどうゆういちろう|歴史家1965年、千葉県生まれ。歴史家。文学博士。早稲田大学教育学部卒業、同大学院文学研究科博士後期課程満期退学。主に江戸をテーマとして執筆・講演活動を展開。時代小説SHOW 投稿記事『30の神社からよむ日...