【今日の書棚】若者たちの捕物劇と成長が頼もしい「深川青春捕物控」

アドセンス広告、アフィリエイトを利用しています。
スポンサーリンク

このコーナーでは、新しく書棚に加わった本を中心に、少しずつご紹介していきます。

角川春樹小説賞作家の文庫書き下ろしシリーズ第4作

本日は、東圭一(あずま・けいいち)さんによる文庫書き下ろし時代小説、「深川青春捕物控」シリーズの最新刊『深川青春捕物控(四) 痩せても枯れても』(時代小説文庫)をご紹介します。

『深川青春捕物控(四) 痩せても枯れても』|東圭一|時代小説文庫

深川青春捕物控(四) 痩せても枯れても

著者は、2023年に『奥州狼狩奉行始末』第15回角川春樹小説賞を受賞し、2024年には同作で第13回日本歴史時代作家協会賞新人賞も受賞しています。

本シリーズは、2025年1月に第1巻『深川青春捕物控(一) 父と子』を刊行して以降、わずか1年で4冊を発行するというハイペースで作品を世に送り出しています。
文庫書き下ろしでは、かつて「3か月に1冊新作を出さなければ忘れられる」とも言われましたが、本シリーズはまさにそれを体現するかのように、精力的に巻を重ねています。

もっとも、作家に新作を書く力があっても、シリーズの継続は売れ行きに左右されるのが現実です。その点、本シリーズは新進作家の作品でありながら、早くも時代小説ファンの支持を獲得している点が注目されます。

人気の理由はいくつか考えられます。

まず、本シリーズの大きな魅力は、深川堀川町の御用聞きの親分・勝次郎のもとで手先として働く、雄太、三吉、茂二という三人の若者の活躍にあります。
さらに、勝次郎の娘・かよを加えた四人の若者たちのチームワークや、それぞれの成長の物語が、読みどころとなっています。

『埋みの棘―鎌倉河岸捕物控 (ハルキ文庫 時代小説文庫)』佐伯泰英さんの「鎌倉河岸捕物控」シリーズの面白さを受け継ぐ、青春捕物小説と言ってよいでしょう。
時代小説文庫版の表紙装画と同じく、イラストレーターの浅野隆広さんが起用されている点も相まって、作品世界にどこかオーバーラップする印象があり、強い引きになっています。

それだけでなく、主人公・雄太の複雑な家庭環境、特に父の死の謎が物語の軸となっている点も見逃せません。
その謎解きへの期待感に加え、雄太たちが遭遇する事件の背後で、卍の朱印を用いる黒幕の存在がほのめかされます。各話完結型の捕物でありながら、継続する謎が残され、次の物語へと読者の興味を巧みに誘っていきます。

本書の第三話に収録された「今川焼物語」は、諸説ある今川焼の起源を題材に、人情味豊かに描かれた一編で、とりわけ印象に残りました。
今川焼を口にするたびに、本作を思い出しそうです。

西に大川(隅田川)、南に江戸湾を臨み、縦横に張り巡らされた堀に囲まれた水辺の町・深川。漁師町としての顔に加え、新開地には岡場所や盛り場もあり、多くの庶民が暮らす生命力と猥雑さが同居する町の魅力が丁寧に描かれています。そうした舞台設定が物語の興趣を一層高めている点も、本シリーズの大きな魅力と言えるでしょう。


今回取り上げた本



書誌情報

『深川青春捕物控(四) 痩せても枯れても』
東圭一

時代小説文庫
2025年12月18日第一刷発行

装画:浅野隆広
装幀:五十嵐徹

目次
第一話 粉屋の火事
第二話 用心棒
第三話 今川焼物語
第四話 御用金

本文249ページ
文庫書き下ろし

東圭一|時代小説ガイド
東圭一|あずまけいいち|時代小説・作家1958年、大阪市生まれ。神戸大学工学部卒。2012年、「足軽塾大砲顛末」で第19回九州さが大衆文学賞大賞・笹沢左保賞を受賞。2015年、「強力ごうりき侍 ―近江伝―」で第2回富士見新時代小説大賞入選。...