今年(2025年)、佐々木裕一さんは、「新・浪人若さま 新見左近」(双葉文庫)、「公家武者 信平」(講談社文庫)、「この世の花」(時代小説文庫)の各シリーズにより、第14回日本歴史時代作家協会賞シリーズ賞を受賞されました。
理流もこの選考に携わりました。
前作から続き、15年にわたって刊行されてきた「新・浪人若さま 新見左近」と「公家武者 信平」が対象作品として挙げられたのは当然としても、刊行点数が当時2作だった「この世の花」シリーズも受賞作となったことに、意外な思いを抱かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私自身、痛快時代小説を得意とする著者の新境地が味わえる本シリーズに興奮し、以下のような選評を書かせていただきました。
(前略)物語では、典型的な継子いじめから始まり、次第に手の込んだものへとエスカレートする。その圧倒的な描写に目を背けたくなるが、一方で花に救いの手を差し伸べる者たちも現れ、やがて読書体験は快感へと転じる。派手なチャンバラはないが、苦難に遭っても健気に振る舞う花の行く末から目が離せない、注目のシリーズである。
(『第14回日本歴史時代作家協会賞 受賞の言葉と選評』より引用)
『我が世の春 この世の花(3)』|佐々木裕一|時代小説文庫
あらすじ
事あるごとに助けてくれた若様・藤堂孝次との祝言が決まった花。徳川譜代の名門で七千石取りの旗本の妾の娘として生まれ、正妻や姉から虐められてきた花でしたが、ようやくこの家から抜け出せる日が近づいていました。
大坂からの帰参が遅れていた父も、祝言に合わせて江戸に戻ってくるというのです。ところが、期待に胸を膨らませる花を憎々しげに睨みつける長男・一成の母・瑠璃の姿がありました――。倒れる父、孝次を狙う姉、そして花は牢に入れられてしまい……。
花に幸せな未来は訪れるのでしょうか。波瀾万丈の王道時代小説、待望の第三弾です。(『我が世の春 この世の花(3)』表紙カバー裏の紹介文より抜粋・編集)
ここに注目!
幾多の苦難を乗り越え、旗本の次男・藤堂孝次との祝言が間近に迫り、幸せの絶頂にいる花。ところが、大坂から帰参した父が屋敷の門前で倒れてしまいます。花は祝言を延期し、だれも面倒を見たがらない父の介護を引き受けることになります。
中風で寝たきりとなった父に対し、手のひらを返したように冷淡な態度を取る妻や側室、姉たち。真島家の力関係が変化していく中で、花は新たな試練の嵐に、ただじっと耐える日々を送ることになります。
本作でも、前二作以上に花が直面する過酷な運命から目が離せず、ハラハラドキドキが止まりません。刻一刻と変わっていく花の境遇に、読者の感情は大きく揺さぶられることでしょう。
読み終えた後には、ジェットコースターを乗り終えたあとのような疲労感と安堵感が同時に押し寄せます。ほかの時代小説ではなかなか味わえない、新鮮な読後感をぜひ体験してみてください。
今回取り上げた本
書誌情報
『我が世の春 この世の花(3)』
佐々木裕一
角川春樹事務所・時代小説文庫
2025年12月18日第一刷発行
装画:朱華
装幀:五十嵐徹
目次
第一章 女の執念
第二章 花の慈愛
第三章 身代わりの仏
第四章 花の命
本文285ページ
文庫書き下ろし
















