時代小説3シリーズを相次いで発表し、快進撃はまだまだ続く
新進の時代小説家・喜多川侑(きたがわ・ゆう)さんによる、文庫書き下ろしの時代小説を紹介します。喜多川さんは、別のペンネームで活躍していた専業作家ですが、2023年に『瞬殺 御裏番闇裁き』(祥伝社文庫)を発表し、時代小説のジャンルに進出されました。
以降、「御裏番闇裁き」シリーズ4冊、「深川おせっかい長屋」シリーズ(実業之日本社文庫)2冊、さらに太平洋戦争終戦直後、進駐軍占領下の東京を舞台に、エンターテインメント界を描いた謀略サスペンス『SHOW MUST GO ON 1945 謀略のメロディ』(コスミック文庫)など、多彩な文庫書き下ろし小説を発表されています。
まさに、いま勢いのある作家のひとりです。
『情けの花道 品川任侠お宿』|喜多川侑|祥伝社文庫
あらすじ
戯作者の瀬川静馬は、叔父の辰蔵が開いた旅籠『極楽楼』に長逗留することに。そこは表向き、飯盛女も置かない真っ当な旅籠だが、取り仕切るのは侠客・雷辰一家だった! 失踪した兄を弔う娘、名料亭を追い出された板前、苛烈な虐めに遭いお城から逃げ出してきた大奥女中……曰く付きの宿泊客を誰も彼も取り込んで、義と礼を重んじる一家が大騒動を繰り広げる!
(『情けの花道 品川任侠お宿』表紙カバー裏の紹介文より抜粋・編集)
ここに注目!
著者の凄さは、シリーズごとに異なるタイプの作品世界を作り上げている点にあります。「御裏番闇裁き」シリーズは〈必殺もの×芝居小屋〉、「深川おせっかい長屋」シリーズは〈長屋人情×ユーモア〉、そして本書は〈旅籠人情×侠客もの〉と、それぞれに才気あふれる趣向を凝らした作品となっています。
さらに喜多川作品には、幕閣をめぐる抗争などの隠れたテーマが織り込まれており、物語の興趣をいっそう深めています。
本書でも、主人公の若者・瀬川静馬を新進の戯作者として設定し、その創作活動を物語の中に巧みに組み込んでいます。静馬は語り部であり、狂言回しのような役割を果たしながら物語を進めていきます。
果たして静馬は、「極楽楼」に逗留しながら、人情ものの新作戯作を書き上げることができるのでしょうか。
静馬の叔父・辰蔵が開業した旅籠「極楽楼」が、侠客によって営まれているというユニークな設定も秀逸で、読者はまんまと著者の術中にはまる快感を味わえます。
手練れのエンターテインメント作家ならではの職人技が堪能できる、新シリーズの誕生です。
この後にも新作の発行予定が決まっていて、お楽しみは続きます。
今回取り上げた本
書誌情報
『情けの花道 品川任侠お宿』
喜多川侑
祥伝社・祥伝社文庫
2025年11月20日初版第1刷発行
カバーデザイン:高柳雅人
カバーイラスト:井筒啓之
目次
第一話 義理事の達人
第二話 河豚の恩返し
第三話 雪が泣いている
第四話 三行半は品川で
本文324ページ
文庫書き下ろし























