このコーナーでは、新しく書棚に加わった本を中心に、少しずつ紹介していきます。
二見時代小説文庫11月の新刊|異例の最終巻続きで、どうなる?
私は、文庫書き下ろし時代小説に特別な思い入れを持っています。
文芸誌に連載され、それが一冊にまとまって単行本として刊行される時代小説も大好物で、最近は読む機会が増えています。とはいえ、単行本が高価でなかなか買えなかった時代に、文庫で次々に登場した「文庫書き下ろし時代小説」に惹かれ、偏愛的とも言えるほど恋をしてきました。
ところが近年、文庫書き下ろし時代小説の人気に限りが見えはじめ、印刷部数や刊行点数が大きく減っていると聞き、強い危機感を抱いています。
そんな中、独自の執筆陣を擁し、毎月複数冊の新刊を刊行してきた二見時代小説文庫で、シリーズの終了が相次いでいます。11月末に刊行された2点が、ともに最終巻であったことには、少なからずショックを受けました。
二見時代小説文庫には、ここでしか読めない作家のシリーズも多く、また新刊点数が少なめになる25日過ぎに刊行されることもあり、当サイトの新刊情報にとっては、心強い存在の出版社でもあります。

『火盗改の二代目 密命 はみだし新番士 4』|氷月葵|二見時代小説文庫
氷月葵(ひづき・あおい)さんは、2022年に「御庭番の二代目」シリーズ(二見時代小説文庫)、「神田のっぴき横丁」シリーズ(二見時代小説文庫)、「仇討ち包丁」シリーズ(コスミック時代文庫)で、第11回日本歴史時代作家協会賞・文庫シリーズ賞を受賞した実力派の時代小説家です。
本シリーズの主人公・不二倉壱之介は十八歳。将軍や世嗣の警護を担う新番組の見習い新番士です。十五歳で将軍の座に就いた家斉からの信頼も篤く、家斉の密命を受け、市中で老中首座として権勢を振るう松平定信の政策を見張りつつ、町の治安を守ろうと奔走します。
家斉のほか、火付盗賊改の長谷川平蔵、蔦屋重三郎、恋川春町ら、大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺」でおなじみの人物も登場します。放送終了後の“べらぼうロス”の時期に、本シリーズ全4巻をまとめて読むのもおすすめです。
今回取り上げた本
書誌情報
『火盗改の二代目 密命 はみだし新番士 4』
氷月葵
二見時代小説文庫
2025年12月25日初版発行
カバーイラスト:浅野隆広
カバーデザイン:ヤマシタツトム(ヤマシタデザインルーム)
目次
第一章 火付盗賊改
第二章 反骨の黄表紙
第三章 大盗賊
第四章 城中の噂
第五章 次の世へ
本文264ページ
文庫書き下ろし

『晩秋の孤剣 御隠居用心棒 残日録 5』|森詠|二見時代小説文庫
森詠(もり・えい)さんは、1982年に『燃える波濤』で第1回日本冒険小説協会大賞・感謝感激大長編賞を受賞し、1994年には『オサムの朝』で第10回坪田譲治文学賞を受賞。スパイ小説、軍事情報小説、架空戦記など幅広いジャンルで活躍し、2005年頃から時代小説の執筆を本格化させました。
2025年5月に刊行された『川は流れる』は、50余年に及ぶ作家活動の集大成とも言える一作で、幕末の北関東の小藩を舞台にした歴史小説です。
二見時代小説文庫では、2009年6月刊行の『進之介密命剣 忘れ草秘剣帖1』を皮切りに、初の時代シリーズ(全4巻)を発表。その後、「剣客相談人」は足掛け10年・全23巻の長寿シリーズとなり、「北風侍 寒九郎」シリーズ、「会津武士道」シリーズと続き、最新シリーズ「御隠居用心棒 残日録」は5巻で完結となります。
本シリーズの主人公は、羽前長坂藩の元江戸家老で、隠居して深川の仕舞屋に移り住み、自由気ままに暮らす桑原元之輔。人助けをきっかけに、用心棒稼業に身を投じることになります。
最終巻では、藩主の異母弟の用心棒を任された元之輔が、かねてより因縁のある闇の仕置人と対峙することに――。
若き日に編み出した秘剣「秘太刀鹿の角」を使うのか、立ち合いの結末が気になる、読み応えあるチャンバラ小説です。
今回取り上げた本
書誌情報
『晩秋の孤剣 御隠居用心棒 残日録 5』
森詠
二見時代小説文庫
2025年12月25日初版発行
カバーイラスト:安里英晴
カバーデザイン:ヤマシタツトム(ヤマシタデザインルーム)
目次
第一章 付き纏う影
第二章 わが道を往く
第三章 闇の仕置き人再び
第四章 秘太刀鹿の角
本文324ページ
文庫書き下ろし



















