『その糸を文字と成し』|高野知宙|河出書房新社
2025年12月1日から12月末日の間に、単行本(ソフトカバー含む)で刊行される時代小説の新刊情報リスト「2025年12月の新刊(単行本)」を公開しました。
今月の注目作は、高野知宙さんによる時代小説『その糸を文字と成し』(河出書房新社)です。
『ちとせ』で京都文学賞を受賞してデビューした、大学在学中の歴史時代作家の待望の第2作です。
あらすじ 急速に近代化が進む明治時代前期、小谷家の奉公人・種吉は、不安定な身分ながらも、桑を刈り、蚕の成長を見守る日々に充実感を覚えていました。 しかしある日、同郷の友人・壮介から学問の奥深さを見せつけられます。壮介の奉公先である深沢家は、民間の憲法私案「五日市憲法」の起草に関わるなど、進歩的な家でした。 種吉は壮介の影響を受け、学びに無関心な主人に内緒で知識を深めようと決意します。そんな折、家出していた小谷家の長男・直助が突然帰宅し、種吉は東京帰りの直助から文字を習うようになります。 一方、世間の景気は次第に陰りを見せ、雇い止めされる奉公人も増えていました。不安が募る種吉に対し、社会状況の悪化を「人為的な不況だ」と考える壮介は、新たな仲間とともに社会を変革しようと先鋭化し、危機的な状況が迫っていたのです――。
(『その糸を文字と成し』表紙カバーの紹介文より抜粋・編集)
著者について
著者は2022年、「闇に浮かぶ浄土」で第3回京都文学賞中高生部門最優秀賞を受賞。同年、受賞作に大幅な加筆修正を加えて改題した『ちとせ』で、17歳にしてデビューしました。本作は、京都の大学に通う著者によるデビュー2作目となります。
なお、デビュー作『ちとせ』は今月、祥伝社文庫から文庫版が刊行されます。
読者の年齢層が比較的高く、いろいろと制約のある歴史・時代小説の世界において、若い作家の登場は非常に明るいニュースです。
ここに注目!
学問を志す奉公人の種吉、
学問によって先鋭化していく壮介、
家出から突然帰宅した直助
―― 激動の明治初期に翻弄される三人の若者を描いた群像劇です。
本書の帯には「現役大学生による時代小説」と大きく記されています。
令和を生きる若者が、明治時代の若者をどのように描くのか、とても楽しみです。
作品の舞台となる五日市(現・東京都あきる野市)や八王子などの三多摩地域は、明治初期には神奈川県に属していました(東京府に編入されたのは明治26年)。自由民権運動の思想が三多摩で急速に広がった背景とともに、当時の地域性がどのように物語に反映されるのかにも注目して読みたいと思います。
2025年、『かぶきもん』(文藝春秋)で第14回日本歴史時代作家協会賞新人賞を受賞した米原信さんに続き、また一人、今後が非常に楽しみな作家が現れました。

今回取り上げた本















