【日々是好日】西向く侍ならぬ、西で働く侍、小説家・筑前助広さん

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今日読みたい本|『文芸ムックあたらよ 第三号・特集:嘘』|EYEDEAR

文芸ムックあたらよ 第三号・特集:嘘

西向く侍

「西向く侍(にしむくさむらい)」とは、31日までない月(小の月)を覚えるための語呂合わせです。 2月(に)、4月(し)、6月(む)、9月(く)、11月(さむらい)のこと。11月を「士」と表して「さむらい」と読ませるのが肝となっています。

浅田次郎さんの短編小説にも同名の「西向く侍」(『五郎治御殿始末』所収)があります。明治初期の改暦(旧暦から新暦への移行)を背景に、西洋化に翻弄される武士の姿を描いた作品です。

さて、本題に戻ります。九州・福岡在住の時代小説家、筑前助広(ちくぜん・すけひろ)さんより、『あたらよ 第三号 特集:嘘』(EYEDEAR)と『プロ作家によるマル秘プロット集』(架空出版きゅーび社)をご恵贈いただきました。

著者について

著者は福岡市在住の時代小説家です。2022年、アルファポリス文庫より『谷中の用心棒 萩尾大楽 阿芙蓉抜け荷始末』でデビューし、同作で第11回日本歴史時代作家協会賞文庫書き下ろし新人賞を受賞しました。 スケールの大きな物語構築、こだわりのある登場人物、臨場感あふれるチャンバラシーンが魅力です。ほかに、「颯の太刀」シリーズ(角川文庫)、『独狼 念真流無間控』(早川書房)があります。

『プロ作家によるマル秘プロット集』

副題「架空のヒット作の舞台裏、ぜんぶ見せます!」の通り、本作はパロディで、掲載されているヒット作も実在しません。また、発行元の「架空出版きゅーび社」も架空の出版社です。

しかし、この企画に参加している作家陣──小谷杏子さん、筑前助広さん、嗣人さん、中我生直佑さん、馳月基矢さん、悠木シュンさん、涼海風羽さん──はいずれも実在の作家で、皆さん九州を拠点に活動されています。

筑前さんは、幻のヒット作『音之助 助太刀双紙』のプロットを公開しています。
細部まで練り上げられたプロットからは、作品世界の整合性を保つためのこだわりが伝わってきます。著者の作品ではしばしば架空の藩や剣術流派が登場し、複数作品にわたって連関することがありますが、その世界観が破綻しないよう緻密に設計されている様子がよくわかります。登場人物のキャラクターの書き分けが鮮やかなのも、このプロットの充実ぶりによるものなのですね。

『あたらよ 第三号 特集:嘘』

『文芸ムックあたらよ 第三号・特集:嘘』と『プロ作家によるマル秘プロット集』『あたらよ』には、著者初となる時代小説短編「騙り剣 車螯(しゃごう)」が収録されています。 車螯とは奄美大島以南の珊瑚礁に生息する食用の二枚貝のこと。藤沢周平さんの『隠し剣孤影抄』を思わせるような、糸がピンと張ったような緊張感が漂う好編です。

『あたらよ』は、百百百百(ささもも)さんが経営する神戸の“一人出版社”が刊行しています。

著者は昨年度に4作を発表されましたが、今年は刊行がなく、来年度に向けて充電中なのだと思います。
長編『音之助 助太刀双紙』でも「騙り剣 車螯」でも、新作を心待ちにしています。


今回取り上げた本



書誌情報

『文芸ムックあたらよ 第三号・特集:嘘』
EYEDEAR

2025年11月29日初版発行

目次
巻頭特集 作家たちはこうして「嘘」をつく。
座談会「うそのつきかた」(小谷杏子・筑前助広・馳月基矢・涼海風羽・百百百百)

短篇:
「永遠のファタ・モルガーナに捧げる」夢見里龍
「騙り剣 車螯」筑前助広
「かのんちゃんを救いたい」古池ねじ
「白川」百百百百
「カタリ」神木
「うめにうぐいす」虹乃ノラン
「AIのいた教室」望月くらげ
「思索の涯て」榮織タスク
「モデルケース 副検事・諭吉龍一郎の黎明」青木杏樹

コラム:
諸星めぐる/市街地ギャオ/伊藤亜和/けんご/清繭子/青波杏/海猫沢めろん/寒竹泉美

第三回あたらよ文学賞 最終選考:
小山征二郎・千羽稲穂・三ツ星みーこ・ちくわノート・橋爪志保・聖・曾根崎十三・梧桐彰

筑前助広|時代小説ガイド
筑前助広|ちくぜんすけひろ|時代小説・作家福岡県福岡市在住。2020年、「それは、欲望という名の海」で第6回アルファポリス歴史・時代小説大賞特別賞を受賞し、2022年『谷中の用心棒 萩尾大楽 阿芙蓉抜け荷始末』で出版デビュー。2022年、『...