『剣影、桜下に哭く 剣客黒須新九郎 城戸家騒動録』|五月雨輝|アルファポリス文庫

五月雨輝(さみだれ・てる)さんによる時代小説、『剣影、桜下に哭く 剣客黒須新九郎 城戸家騒動録』(アルファポリス文庫)をご紹介します。
著者について
五月雨輝さんは、2023年アルファポリス第9回歴史・時代小説大賞特別賞を受賞し、本作でデビューされました。
同じ第9回の大賞からは、皐月なおみさんの『田楽屋のぶの店先日記 深川人情事件帖』(大賞受賞)や、藍上イオタさんの『仕舞屋蘭方医 根古屋冲有 お江戸事件帖 人魚とおはぎ』(特別賞)が文庫化されています。
受賞作はいずれも、物語の面白さや表現力に加え、魅力的なキャラクター造形と、時代小説に不慣れな方でも読みやすい語り口が特徴です。
あらすじ
藩に仕える剣客・黒須新九郎は、突如として横領の嫌疑をかけられ、安穏な日々を奪われた。 その背後には、収賄によって権勢を拡大する筆頭家老・小田内膳の専横があった。 新九郎は次席家老の大鳥とともに立ち上がり、腐敗を断つ戦いに身を投じる。 藩主・城戸家をめぐる騒動のさなか、新九郎の荒んだ心を癒すのは、黒須家に新しく仕えた女中・りよ。だが、彼女には誰にも明かせない秘密があった――。 陰謀と慕情が交錯する、一代記的時代巨編! (『剣影、桜下に哭く 剣客黒須新九郎 城戸家騒動録』カバー紹介文より抜粋・編集)
ここに注目!
アルファポリス第9回歴史・時代小説大賞には、実に593作もの応募があり、その中から優秀作6作が選出されました。
「読めば腹がすく江戸グルメ賞」や「痛快!エンタメ剣客賞」など、ユニークなテーマ別賞も設けられています。特別賞は、どのテーマにも収まりきらない作品に贈られるものだそうです。
本作は御家騒動を題材に、チャンバラと恋愛要素をあわせ持つ、時代エンターテインメント作品です。
主人公の黒須新九郎は二十一歳。藩の郡方(こおりかた)で小物成(こものなり)を務める中級藩士で、領内南西の鉢窪村で栽培される青苧(あおそ)と、それを原料とした藩の特産・縮(ちぢみ)の生産や納品を管理しています。
ある日、新九郎は職務を利用した横領と抜け売りの嫌疑をかけられ、納屋からは覚えのない縮が山積みで発見されます。まさに絶体絶命の窮地に――。
気づかぬうちに、藩を揺るがす御家騒動に巻き込まれていくのです。
黒須家はもと足軽ながら、戦国期から藩祖・城戸頼龍に仕え、祖先は頼龍から剣の奥義を伝授された剣客の家柄でした。
春風駘蕩とした性格でありながら、どこか抜けている新九郎の人柄は、往年の時代劇ヒーローを思わせます。
そんな新九郎が密かに思いを寄せるのが、けがをしたところを助けられ、黒須家の女中となったりよ。
一方で、家老たちの派閥抗争や、藩士の連続襲撃事件、さらには伊賀者を思わせる覆面の軍団など、陰謀と剣戟が交錯する、ハラハラドキドキの展開が続きます。
王道のチャンバラ小説としての魅力に加え、恋と義理、忠義と陰謀が織りなす重厚な人間ドラマも堪能できる本作。
閉塞感の漂う文庫書き下ろし時代小説界に、新風を吹き込み、停滞を痛快に切り裂くロマンあふれる作品です。
今回取り上げた本
書籍情報
剣影、桜下に哭く 剣客黒須新九郎 城戸家騒動録
五月雨輝
アルファポリス文庫
発行:アルファポリス
発売:星雲社
Illustration:岡添健介
Design:AFTERGROW
2025年11月4日 初刷発行
目次
第一章 春の嵐
第二章 炎塵剣風の屋敷
第三章 蕾光る家と雲陰る城
第四章 花の笑顔と燕の涙
第五章 命運斬開の弧剣
第六章 桜の落ちるその唇に
第七章 真実は、共に光と影の中
第八章 逆転の広間
第九章 焔、未だ燃え尽きず
第十章 春の風
本文410ページ









