『千住旅籠のお弁当』|大平しおり|角川文庫

2025年10月21日から10月30日に刊行予定の文庫新刊情報として、
「2025年10月下旬の新刊(文庫)」を公開いたしました。
今回、特に注目したいのは、大平しおりさんの時代小説、
『千住旅籠のお弁当』(角川文庫)です。
あらすじ
大火で奉公先の芝居茶屋が焼け、行き場を失った十八歳の小夜は、母が働く千住の小さな旅籠「梅屋」を訪ねます。 しかし出迎えたのは女将と奉公人だけで、母は火事の様子を見に行ったまま戻っていませんでした。 後日、客の話から母が亡くなったことを知った小夜は、女将の計らいで梅屋で働き始めますが、不器用な性格ゆえに失敗ばかり。 そんな中、焼け跡から逃れて北へ向かう人々を見て、道中で食べられる弁当を作ってみてはどうかと思いつきます――。 心を温める絶品の時代小説が、いま開幕します。 (『千住旅籠のお弁当』(角川文庫)Amazon紹介文より抜粋・編集)
ここに注目!
著者の大平しおりさんは、岩手在住の作家です。
2024年刊行の『大江戸ぱん屋事始』(角川文庫)が第13回日本歴史時代作家協会賞・文庫書き下ろし新人賞の候補となり、惜しくも受賞は逃したものの、高い評価を得た注目の新進作家です。
江戸の食文化を題材にした時代小説は数多くありますが、本作は「お弁当」という身近な食をテーマに、千住の旅籠を舞台にしている点が新鮮です。
主人公は、大火で勤め先を失った十八歳の小夜。
離れて暮らす母が働く旅籠「梅屋」を訪ねますが、母は火事の様子を見に行ったまま行方不明に。
北へ逃れる人々で旅籠は大忙しの中、小夜は母の代わりに台所に立つことになりますが、不器用ゆえに失敗の連続です。
心のこもった料理が生む温もりと、人と人をつなぐ絆を描いた、胸を打つ料理時代小説です。
なお、この作品に登場する大火は、文化三年(1806)三月四日に芝車町から出火し、西南の強風にあおられて木挽町、京橋、日本橋、神田、浅草方面まで延焼しました。
武家屋敷八十余、寺社八十余、町家五百余が焼失し、死者は千二百人を超えたといわれています。
「車町火事」「丙寅火事」とも呼ばれ、江戸三大大火の一つに数えられています。

今回ご紹介した本















