耳で楽しむ 馳月基矢 時代小説フェア|芳林堂書店
10月11日(土)、高田馬場の芳林堂書店8Fホールにて開催された「耳で楽しむ 馳月基矢 時代小説フェア」(#みみじだ)に行ってきました。
小説家・馳月基矢先生が描く時代小説の朗読&サイン会イベントです。

著者について
2020年、『姉上は麗しの名医』でデビューし、同作で第9回日本歴史時代作家協会賞文庫書き下ろし新人賞を受賞されました。
江戸ラブコメ小説「拙者、妹がおりまして」や「義妹にちょっかいは無用にて」、江戸医療小説「蛇杖院かけだし診療録」などのシリーズで活躍する、時代小説家・馳月基矢さんの原作をもとにした朗読会です。
各作品から抜粋した物語を、舞台上に登場した俳優たちが登場人物になりきって、代わる代わる朗読していきます。
朗読作品
『拙者、妹がおりまして 3』
『義妹にちょっかいは無用にて 1』
『義妹にちょっかいは無用にて 7』
『掌 蛇杖院かけだし診療録』
『深川ふるさと料理帖(一) 輪島屋おなつの潮の香こんだて』
『日本橋恋ぞうし(ニ) 瑠璃の脇差』
全6コマ、各話1時間弱のプログラム構成で、耳に心地よく、緊張感が途切れずに聞きやすい長さでした。
私が実際に拝見したのは、3番目の朗読プログラム「なすと素麺の煮物」(『深川ふるさと料理帖(一) 輪島屋おなつの潮の香こんだて』より)です。
あらすじ
日ノ本各地の郷土料理を味わうことができる「ふるさと横丁」。
地方から江戸に出てきた人々が故郷の味を懐かしんで訪れる通りです。
輪島出身のおなつは、ふるさと横丁にある「輪島屋」で働きながら、許嫁の丹十郎の帰りを待っています。
命懸けの任務が無事に終わるよう祈りながら作るのは、潮の香りが漂う卯の花ずしや、茄子と素麺の煮物。
お腹も心も満たされる、ふるさとの味をめしあがれ。(『深川ふるさと料理帖(一) 輪島屋おなつの潮の香こんだて』カバー裏の紹介文より抜粋・編集)
この作品は未読でしたので、耳から先に時代小説に触れるという、不思議で新鮮な体験ができました。(会場で本も購入しました。)
朗読会では俳優たちの演技はありませんが、会場は朗読とは思えないほど臨場感と立体感にあふれ、作品の世界に没入することができました。
輪島素麺を茄子とみりんで煮た能登の味が目の前に浮かび、食欲をそそられました。
また、紺之丞のおなつへの恋心と、おなつの戸惑いが描かれた場面では、キュンとし、この先どうなるのかと気になって仕方ありませんでした。
Audibleのリアル版といった趣きですが、舞台との距離が近く、俳優たちの熱演もあり、生でしか味わえない魅力があります。
入場無料で入れ替えなしの構成だったため、もっと見ていたかったのですが、サイン会で馳月さんと少しお話をして、次の予定のため、後ろ髪を引かれる思いで会場を後にしました。
次回は、じっくりと聞いて、どっぷりと作品の世界に浸りたいと思います。
なお、馳月さんの代表作のひとつ「蛇杖院かけだし診療録」シリーズの朗読劇化(2026年秋公演予定)も決定し、クラウドファンディングが実施されています(2025年10月31日まで)。

蛇足
会場内では、『深川ふるさと料理帖』シリーズの装画を担当された、しまざきジョゼさんの原画も展示されていました。(とても気に入っているので、クリアファイルを購入しました。)
また、馳月さんから、九州在住の作家たちが「文学フリマ」のために制作した同人誌、『プロ作家による㊙プロット集 架空のヒット作の舞台裏、ぜんぶ見せます!』(架空出版きゅーび社)をご恵贈いただきました。
馳月さんをはじめ、小谷杏子さん、筑前助広さん、嗣人さん、中我生直佑さん、悠木シュンさん、涼海風羽さんによるアンソロジーです。
文学フリマ福岡に行かないと手に入らない貴重な本だと思っていたので、望外の喜びでした。
今回取り上げた本





