【新着本】PHP文芸文庫2025年9月の新刊。時代小説の醍醐味

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『麻阿と豪』 『産医お信なぞとき帖(二) 子宝いぬ』 『アンソロジー 豊臣合戦』 『剣 時代小説アンソロジー』

遅くなりましたが、PHP文芸文庫の2025年9月新刊4冊をご紹介いたします。

いずれも時代小説の魅力を存分に味わえるラインナップです。
諸田玲子(もろた・れいこ)さんの『麻阿と豪』は、前田利家とまつの娘・麻阿と豪の姉妹を描く戦国歴史長編です。
和田はつ子(わだ・はつこ)さんによる新シリーズ第2弾、『産医お信なぞとき帖(二) 子宝いぬ』は、医療と謎解きを融合させた時代ミステリー。
歴史街道編集部編の『アンソロジー 豊臣合戦』は、次期大河ドラマで注目される「豊臣家」をテーマに、実力派作家たちが競演する掌編集です。
そして、アンソロジー編纂の第一人者、細谷正充(ほそや・まさみつ)さんが選び抜いた『剣 時代小説アンソロジー』では、剣豪たちの生きざまが多彩な筆致で楽しめます。

『麻阿と豪』

麻阿と豪 (PHP文芸文庫)

諸田玲子
PHP研究所・PHP文芸文庫

装丁:芦澤泰偉
装画:水口理恵子

ここに注目!
前田利家の正室・まつは、数え十二歳で利家に嫁ぎ、満十一歳十一か月で長女・幸を出産して以来、三十二歳までの二十年あまりで二男九女をもうけました。
本書のヒロインである麻阿は三女、豪は四女で、わずか一年違いの年子の姉妹です。

二人は前田利家の娘として、それぞれに波瀾の人生を歩みました。
それは、天下人・豊臣秀吉の影響をもっとも強く受けた姉妹だったからです。
戦国の世では、養女や正妻といえども、敵味方の関係が一瞬で入れ替わることもあり、常に人質的な立場に置かれていました。

秀吉の側室となった麻阿、そして秀吉の養女として宇喜多秀家の正室となった豪。
対照的な運命に翻弄されながらも、互いに支え合い、苦難を乗り越えていく二人の姿は胸を打ちます。
「戦国の姫たち」の気高くも切ない物語に、読む者は心を揺さぶられずにはいられません。

あらすじ

加賀百万石の礎を築いた戦国大名・前田利家。 その娘である麻阿と豪は、豊臣秀吉のもとで運命に翻弄されながら、それぞれ波瀾の人生を歩む。
心ならずも秀吉の妻となった麻阿。
一方、妹の豪は秀吉の養女となり、秀吉子飼いの大名・宇喜多秀家に嫁いで幸せな日々を送るが、関ケ原の戦いを機に人生は一変する。
数奇な運命の中で、前田家の存続のために助け合い、前を向いて生きる姉妹の姿を描いた感動の歴史長編。

(カバー裏の説明文より抜粋・編集)

目次

第一章 北の庄(麻阿)
第二章 聚楽第(豪)
第三章 伏見(麻阿)
第四章 大坂(豪)
第五章 京(麻阿と豪)
第六章 伊豆国下田(豪)
第七章 金沢(豪)

2025年9月22日 第1版第1刷
本文364ページ
『麻阿と豪』(PHP研究所、2022年10月刊)を文庫化

今回取り上げた本

『産医お信なぞとき帖(二) 子宝いぬ』

産医お信なぞとき帖(二) 子宝いぬ (PHP文芸文庫)

和田はつ子 PHP研究所・PHP文芸文庫

装丁:長崎綾(next door design)
装画:安良岡美穂

ここに注目!
著者は、「口中医桂助事件帖」シリーズや、幕末の蘭医・伊東玄朴を描いた『汚名』などで知られる、医療時代小説の名手です。本作は、新シリーズ「産医お信なぞとき帖」の第2弾となります。

“嫁して三年、子無きは去る”とは、江戸時代の女子教訓書『女大学』に記された教えで、結婚して三年たっても子どもができない場合、たとえ夫に原因があったとしても妻が離縁されるべきだと説いています。これは、家の継続を最重要とし、男子の跡継ぎを産むことを女性の務めとした封建的価値観を反映したものでした。

本書では、妊婦だけでなく、子どもを授かれないことに苦しむ女性も登場します。
さらに「キオンナ」と呼ばれる、子を宿せない石女(うまずめ)の妖まで現れ、女性たちが置かれた過酷な時代背景が浮かび上がります。子を持てない妻にとって、いかに厳しい時代だったのかを改めて感じさせられます。

しかし、不妊治療は、子のいない産医・お信にとって最も苦手な分野。彼女はいかにして解決策を導き出すのでしょうか。
お信が女性たちに降りかかる理不尽な事件の謎を解く、医療×時代ミステリーの第2弾です。

あらすじ

子を授からない妻に難癖をつけて離縁しようとする武家の裏の顔。小火騒ぎとともに現れる「化け猫」の噂。堕胎を行う中条流の高弟が水死体で見つかった事件。そして、子宝祈願の犬の張り子をめぐる宗教団体の卑劣な陰謀――。 江戸の産医・お信が、罪なき女性たちに降りかかる病と理不尽な出来事に真っ向から立ち向かう。大好評の時代医療ミステリー、待望の第2弾です。

(カバー裏の説明文より抜粋・編集)

目次

第一話 護符
第二話 愛しの化け猫
第三話 罪多き
第四話 子宝いぬ

2025年9月22日 第1版第1刷
本文414ページ
文庫書き下ろし

今回取り上げた本


『アンソロジー 豊臣合戦』

アンソロジー 豊臣合戦 (PHP文芸文庫)

歴史街道編集部編
PHP研究所・PHP文芸文庫

装丁:株式会社ウエル・プランニング(神長文夫+吉田優子)

ここに注目!
2026年放送予定のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」にちなみ、豊臣家が関わった合戦をテーマにした歴史掌編19編を収録したアンソロジーです。

執筆陣は、荒山徹、岩井三四二、風野真知雄、片山洋一、川越宗一、近衛龍春、嶋津義忠、鈴木英治、富樫倫太郎、吉川永青、谷津矢車と、現代の歴史小説界を代表する錚々たる顔ぶれです。

最新の学説を踏まえながら、豊臣方の武将たちの戦いぶりと、豊臣家の栄枯盛衰を多角的に描いており、歴史の面白さが存分に味わえます。

あらすじ

豊臣家の命運を左右した合戦――。 賤ヶ岳、小牧・長久手で天下人へと駆け上がり、文禄・慶長の役を経て、秀吉の死後は関ケ原、そして最後の輝きを放った大坂の陣へ。 本書はこれらの戦いを、蒲生氏郷、藤堂高虎、島津義弘、石田三成、木村重成、真田信繁といった豊臣方の武将たちの視点から描き、豊臣家の盛衰を多面的に浮かび上がらせます。

(カバー裏の説明文より抜粋・編集)

目次

第一部 天下人へ、そして天下人として
賤ヶ岳の戦い 天に味方された者 吉川永青
小牧長久手の戦い(1) 秀吉と家康、それぞれの思惑と誤算 近衛龍春
小牧長久手の戦い(2) 「中入り」の失敗に旧主・信長を想う●池田恒興 谷津矢車
大崎葛西一揆 「独眼竜の野望」を阻んだ雪中行軍●蒲生氏郷 吉川永青
文禄慶長の役(1) 追い込まれて選んだ“起死回生”の一手●小早川隆景 川越宗一
文禄慶長の役(2) 十倍以上の大軍を撃破! 彼の地で示した武威●島津義弘 近衛龍春
文禄慶長の役(1) 名将李舜臣を退けた、水軍大将としての決断●藤堂高虎 荒山徹

第二部 天下分け目の関ケ原
上田譲渡大津城――二人が抱いた想い●立花宗茂・真田信繁
籠城か、野戦か――その計算はなぜ狂ってしまったのか●石田三成 鈴木英治
主・宇喜多秀家を守るために…… キリシタン武将の覚悟●明石掃部 鈴木英治
毛利は動かず……それでも外交僧が胸に抱きつづけたもの●安国寺恵瓊 岩井三四二
合戦途中で東軍に転じ……「七本槍」の一人が下した決断●脇坂安治 谷津矢車
裏切った小早川軍を幾度も退けた末に……●平塚為広 吉川永青
「ひたすら主のために」関ケ原退き口の薩摩隼人たち●島津義弘 片山洋一

第三部 大坂の陣。最後の光芒
後藤又兵衛が激賞し、家康が惜しんだ若武者●木村重成 風野真知雄
徳川を辞して豊臣方へ――何が突き動かしたのか●増田盛次 谷津矢車
諦めず絶望せず、己を己たらしめるために●真田信繁 嶋津義忠
真田を助けるべし――敵十二隊を退ける最期の奮戦●毛利勝永 吉川永青
父・吉継の想いを胸に、信繁と共に……●大谷吉勝 富樫倫太郎

著者紹介
初出一覧

2025年9月22日 第1版第1刷
本文255ページ
『歴史街道』2017年7月号から『歴史街道』2024年10月号まで、断続的に掲載されたものを、本書収録に際し、加筆修正した。

今回取り上げた本

『剣 時代小説アンソロジー』

剣 時代小説アンソロジー (PHP文芸文庫)

細谷正充編
PHP研究所・PHP文芸文庫

装丁:芦澤泰偉
装画:茂本ヒデキチ

ここに注目!
昭和の時代から数多くの剣豪小説が生まれ、「剣」をテーマにしたアンソロジーも少なくありません。

本書は、PHP文芸文庫で女性作家によるテーマ別アンソロジーを数多く編んできた編者・細谷正充さんが、あえて男性作家(現役・物故者を問わず)に絞り、実在の人物を主人公に据えて編んだ意欲的な作品集です。

池波正太郎さん、隆慶一郎さんから、冲方丁さん、今村翔吾さんまで――作家の顔ぶれだけでも期待が高まります。

さらに、冲方丁さんの「佐渡市 無明剣」は、本書のために書き下ろされた短編で、座頭市のモデルとされる佐渡市(視力を失う前の名・阿部常衛門)を描いています。また、今野敏さんの「丸腰安兵衛――若き日の義士」は、かつて「月刊non」に掲載されながら単行本未収録だった貴重な一編です。まさに、剣豪小説ファン必読のアンソロジーとなっています。

あらすじ

生涯をかけて修練を重ね、腕を極めた剣客たち。彼らが命を賭して挑む勝負の果てに見たものを、世代を超えて愛される豪華作家陣の筆が鮮やかに描き出します。
父の仇討ちを誓う兄弟が出会った、みすぼらしい道場主・辻平内を描いた池波正太郎「かわうそ平内」、柳生新陰流初代・石舟斎の嫡男でありながら、戦場で大怪我を負って不遇をかこつ新次郎の生き様を描いた隆慶一郎「跛行の剣」など、時代を超えて読み継がれる傑作を収録。
今では見ることのかなわぬ“剣の奥義”を堪能できる、贅沢な短編集です。

(カバー裏の説明文より抜粋・編集)

目次

かわうそ平内 池波正太郎
佐渡市 無明剣 冲方丁
大峰の善鬼 柴田錬三郎
何のための太刀 今村翔吾
丸腰安兵衛――若き日の義士 今野敏
跛行の剣 隆慶一郎

解説 細谷正充

2025年9月22日 第1版第1刷
本文252ページ

出典

「かわうそ平内 」(池波正太郎『剣客群像』所収 文春文庫)
「佐渡市 無明剣」(冲方丁 書き下ろし)
「大峰の善鬼」(柴田錬三郎『大峰の善鬼』所収 春陽文庫)
「何のための太刀」(今村翔吾『戦国武将伝 西日本編』所収 PHP研究所)
「丸腰安兵衛――若き日の義士」(今野敏「小説non」1998年12月号)
「跛行の剣」(隆慶一郎『柳生非情剣』所収 講談社文庫)

今回取り上げた本