大河「豊臣兄弟!」で注目! 戦国のゴッドマザー・ねねの生涯

アドセンス広告、アフィリエイトを利用しています。
スポンサーリンク

『ねねと秀吉(上)』|田渕久美子|河出文庫

ねねと秀吉(上) (河出文庫)NHK大河ドラマの脚本家、田渕久美子(たぶち・くみこ)さんによる歴史小説、『ねねと秀吉(上・下)』(河出文庫)をご紹介します。

本作は、2016年に刊行された歴史小説『おね』を改題し、加筆修正した作品です。ちなみに、この年の大河ドラマは、三谷幸喜さんの脚本による「真田丸」でした。

著者について
著者は、NHK大河ドラマ「篤姫」(2008年度)と「江 姫たちの戦国」(2011年度)の脚本で知られる実力派の脚本家です。近著には、NHK朝の連続テレビ小説のモデルとなった小泉八雲とセツ夫妻を描いた『ヘルンとセツ』(NHK出版)があります。

あらすじ

尾張の下級武士の家に生まれたねねは、木下藤吉郎(のちの豊臣秀吉)と結ばれ、出世街道を駆け上がる夫を内助の功で支え続けます。子をもうけることはありませんでしたが、秀吉の弟・秀長をはじめ、一族や養子、養女、そして加藤清正や福島正則など多くの武将に「母」と慕われ、戦乱の世にあって人の情と知恵で人々を導いていきます。

やがて天下人となった秀吉にも最期のときが訪れ、ねねは信長、秀吉と続いた天下泰平の夢を胸に、豊臣家の行く末と平和の行方に思いを巡らせます。徳川家との対立が深まる中、ねねは「母」として一族を見守り、戦乱の終焉と安らかな世を願いながら生き抜きます。
戦国のゴッドマザーと呼ばれた北政所・ねねの波瀾万丈の生涯を描いた感動の物語です。
(『ねねと秀吉(上・下)』カバー裏の紹介文より抜粋・編集)

ここに注目!
本作は当初、『おね』のタイトルで刊行されましたが、今回の文庫化にあたり『ねねと秀吉』と改題され、「ねね」という呼び名が採用されました。では、「おね」と「ねね」のどちらが正しいのでしょうか。

Wikipediaによると、「ねね」という表記が一般的で、手紙などの文書には「祢(ね)」や「寧(ねい)」の表記が見られます。そのため、「お」を付けて「おね」「おねい」と呼ばれたという説や、「ねい」説もあります(ドラマ「真田丸」では、鈴木京香さん演じる秀吉の妻が「ねい」と呼ばれていました)。

ところが2017年、秀吉自身の手紙に「ねね」と記されたものが確認され、現在は「ねね」説が有力とされています。

さて、本書の最大の魅力は、ねねの視点から秀吉を描いている点にあります。

ねねは数えで十歳のとき、貧しい百姓の出ながら、きらきらと目を輝かせて侍になることを夢見る十五歳の少年・藤吉郎と出会います。猿に似た風貌ながらも、おかしなことばかり言っては人を笑わせ、「日輪の子だ」と語る明るい藤吉郎に、ねねは心惹かれました。

それから五年が過ぎ、ねねには四度の縁談が持ち込まれましたが、いずれも見合いの末に断り、清洲城に上がって織田信長の正室・濃姫のもとで行儀見習いを務めるようになります。

一方の藤吉郎は、水運業を営む蜂須賀小六率いる蜂須賀党に出入りし、さらに織田信長の側室・吉乃の実家である生駒家に売り込みをかけ、ついに信長と目通りを果たします。藤吉郎の奮闘ぶりはコミカルに描かれ、念願かなって信長の家臣に採用されます。

織田家の中で出世の糸口をつかんだ藤吉郎は、ねねと再会しますが、ねねは信長に憧れており……。
藤吉郎との祝言や懐妊、そして織田家で頭角を現す藤吉郎・秀吉と、それを支えるねねの内助の功が描かれていきます。

本能寺の変を転機に、秀吉とねねの関係が変化していく過程は、二人の心理描写を通して繊細に描かれています。歴史の教科書のような男性目線ではなく、女性の視点から見た戦国の世が、鮮やかに、そして新鮮に浮かび上がります。

ねねが秀吉に託した「戦のない世をつくる」という願いは、果たして実を結ぶのでしょうか。

今回取り上げた本



書籍情報

ねねと秀吉(上・下)
田渕久美子
河出書房新社・河出文庫

カバーデザイン:bookwall
カバーイラスト:田中海帆
カバーフォーマット:佐々木暁

上巻:
2025年9月10日 初版発行

目次
出会い
祝言
ふたりの戦
大名の妻
夫の正体
天下一の女

本文377ページ
『おね 上』(NHK出版、2016年10月刊行)を改題・修正のうえ文庫化したもの。

下巻:
2025年9月10日 初版発行

目次
子のない母
去り行く人たち
宴のあと
裂け目
近づく嵐
戦の果てに
旅の終わり

本文381ページ
『おね 上』(NHK出版、2016年10月刊行)を改題・修正のうえ文庫化したもの。

田渕久美子|時代小説ガイド
田渕久美子|たぶちくみこ|脚本家・作家島根県生まれ。脚本家・作家。2003年放送のNHK連続テレビ小説『さくら』の脚本で第11回橋田賞受賞。大河ドラマ「篤姫」(2008年度)と「江 姫たちの戦国」(2011年度)の脚本を担当。著書に『江』(...