『松の露 宝暦郡上一揆異聞』|諏訪宗篤|早川書房
2025年2月1日から2月末日の間に、単行本(ソフトカバー含む)で刊行される時代小説の新刊情報リスト「2025年2月の新刊(単行本)」を公開しました。
今月の注目作は、諏訪宗篤(すわ・むねあつ)さんによる歴史小説『松の露 宝暦郡上(ぐじょう)一揆異聞』(早川書房)です。
諏訪宗篤さんは、2017年に「商人伊賀を駆ける」で第9回朝日時代小説大賞を受賞し、翌年『茶屋四郎次郎、伊賀を駆ける』と改題してデビュー。2024年には『海賊忍者』で第15回小説野性時代新人賞を受賞した、気鋭の時代小説家です。
あらすじ
浪人の奥津慶四郎は、郡上領で年貢算定法が変更され、領民が重税に苦しむさまを目の当たりにする。村を代表する惣次郎を助けた慶四郎は、領主・金森頼錦の非道を江戸に訴えるが、頼錦はさらなる圧政を強行。やがて、惣次郎は命を賭した最後の手段に出ようとする――。(※上記は『松の露 宝暦郡上一揆異聞』Amazon内容紹介より抜粋・編集)
読みどころ
小説野性時代新人賞を受賞した『海賊忍者』は、伊賀忍者であり志摩海賊でもあった向井正綱を主人公とする、ロマンあふれる戦国時代小説です。
本作『松の露 宝暦郡上一揆異聞』は、江戸時代中期・宝暦四~八年(1754–58)に美濃国郡上藩(現在の岐阜県郡上市)で起こった大規模な一揆「郡上一揆」を描いた歴史小説です。当時の郡上藩藩主は金森頼錦(かなもり・よりかね)で、奏者番を務め、老中・若年寄など幕閣とも深いつながりを持っていました。
また、郡上一揆の処理を担当した田沼意次が幕府内で台頭する要因となったことでも知られています。将軍・家重も事件の背後に幕府要人の関与を疑い、評定所御詮議懸りによる吟味が行われました。
郡上藩の事情や弾圧、農民側の苦悩と怒り、幕閣の動き――事件に関わる人々を、気鋭の作家がどのように描くのか、大いに期待が高まる一冊です。

今回取り上げた本
