『大江戸綺譚 ――時代小説傑作選』|細谷正充編|ちくま文庫
2024年10月11日から10月20日の間に刊行される文庫新刊情報として、「2024年10月中旬の新刊(文庫)」を公開しました。
今回は、細谷正充さん編の時代小説アンソロジー、『大江戸綺譚 ――時代小説傑作選』(ちくま文庫)に注目しています。
最近では、時代小説の短編を読む機会が減少し、文芸雑誌でも長編連載を優先する傾向があります。短編小説は発表の場が限られているため、アンソロジーは様々な作家の作品を一度に楽しめる貴重な機会です。加えて、編者がテーマに基づいて選んだ短編は、作家ごとの異なる文体やストーリーを一冊で味わえるため、その魅力は尽きません。
「この座敷のわたしのそばにはね、鬼が棲んでいるのだよ」小さなお店に嫁いだわたしが義母から聞いた切ない昔語り(「安達家の鬼」)。「私はお前さんをよく知っている」両国橋で木綿豆腐を作り続けるお由は、突然現れた孫六という見知らぬ老人に付き纏われるが…(「お柄杓」)。名アンソロジストが江戸を舞台に選りすぐった、妖しく恐ろしくも美しい、七つの時代綺譚集。
(『大江戸綺譚 ――時代小説傑作選』(ちくま文庫)Amazonの紹介より)
★収録作品
木内昇「お柄杓」
木下昌輝「肉ノ人」
杉本苑子「鶴屋南北の死」
都筑道夫「暗闇坂心中」
中島要「かくれ鬼」
皆川博子「小平次」
宮部みゆき「安達家の鬼」
編者・細谷正充さんの選んだ作家は非常にバラエティに富んでおり、異なる角度から江戸の世界を楽しむことができそうです。
また、同時期に徳間文庫からも、梶よう子さん、坂井季久子さん、藤原緋沙子さんら現代を代表する女性作家による『時代小説アンソロジー てさばき』が発売されます。江戸を生きる女職人たちの誇りと技を鮮やかに描いた佳作が揃っています。
★収録作品
梶よう子「艶化粧」
坂井希久子「月満つる」
篠綾子「残り香」
山口恵以子「針の歩み、糸の流れ」
蝉谷めぐ実「うわなり合戦」
藤原緋沙子「万年橋の仇討ち」
アンソロジーは、多様な作家の作品に出会える素晴らしい機会です。気に入った作家の作品を、さらに追いかけて読むという楽しみも味わえるでしょう。

■今回ご紹介した本
