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徳川幕府黎明期のマカオ。二人の少年の数奇な運命を描く

『南蛮の絆 多聞と龍之進』|大村友貴美|双葉社

南蛮の絆 多聞と龍之進大村友貴美(おおむらゆきみ)さんの長編歴史時代小説、『南蛮の絆 多聞と龍之進』(双葉社)を紹介します。

著者は、2007年「首挽村の殺人」で第27回横溝正史ミステリ大賞を受賞しデビューした、推理作家。
本書は、戦国末期から徳川幕府黎明期のキリスト教禁教へと激変する時代を描いた、本格歴史時代小説です。

装幀にも目を奪われました。
片や木刀を構えた侍の子、片やロザリオを手にした宣教師姿の少年。
スカイエマさんが描く二人の少年の清純で凛々しい姿。
そして、ウクライナの国旗を連想させる黄色と青色の大胆なカラーリング。
カバーを取った本書では、よりシンプルに黄と青のコントラストがきれいです。

共に関ヶ原で生まれ育った12歳の多聞と龍之進は、1600年、大いくさの戦場でそれぞれ、人買いにさらわれてしまう。その後、多聞は宣教師に救われ、龍之進は篤実なポルトガル商人の家にもらわれた。長崎で運命の再会を果たした二人だったが、龍之進の養父が異端者のレッテルを貼られて没落、多聞には禁教政策のうねりが襲う。苦難の末、遠く海を渡ったマカオで再び邂逅した二人は、片や貿易商人、片やイエズス会士として逞しく成長していくが、やがてマカオを攻めてきたオランダとの死戦に起つ。

(『南蛮の絆 多聞と龍之進』カバー帯の紹介文より)

一六〇〇年、関ヶ原で暮らしていた十二歳の多聞と龍之進は戦の様子を見に行き、野盗に襲われ、それぞれ人商人の手に落ち、離ればなれとなりました。

長崎に移された龍之進は、親切なポルトガル人商人のマヌエル・カルバジャルに引き取られ、実の息子のペドロと、マヌエルの友人の娘沙羅と一緒に我が子として育てられました。
沙羅は、貿易商のポルトガル人の父と日本人の母の間に生まれ、マカオで生まれ育った十二歳の娘です。

半年後、長崎の慈善院の前で多聞と再会を果たしました。
多聞は、雑兵に捕まった後、パードレに助けられ、セバスチャンという名を与えれ、キリシタン学校で学んでいました。病人の世話をしたり、身寄りのない童たちに読み書きを教え、食べ物を与えたりするパードレに憧れ、目指していました。

自分の居場所を見つけて、進むべき道の入り口に立ち、友情を深めていきました。

「パードレ・バレンテ、教えてください。カルバジャル殿はどのような罪を犯したのですか」
 聖パウロ教会の祭壇の前で、多聞はバレンテを捉まえた。
「マヌエルはキリスト教信者を装った隠れユダヤ教徒だ。これまで信徒から多くの告発が寄せられている。彼はキリスト教の禁忌を犯し、四旬節や金曜、土曜に肉食をし、教会に通わず、十字架を前にして帽子を取らない無礼を働いた。これらはユダヤの生活様式を守り、キリストの教えに敬意を払わない証拠だ」
 
(『南蛮の絆 多聞と龍之進』 P.47より)

一六〇四年、マヌエルにユダヤ教徒だと何者かによる密告があり、インドのゴアにある異端審問所へ引き渡すため囚われました。財産はすべて没収され、家族はバラバラに。

崖から落ちて捕縛を逃れた龍之進は、囚われてインドに移されるマヌエルと沙羅を救うために、傭兵としてマニラ行きの船に乗ることに……。

次々に苦難に遭う龍之進ですが、マヌエルから教えられた商人や船乗りの知識と人として大切なことを守り、貿易商人として成長していきます。

多聞は、日本が禁教に向かう中で活動の場を長崎からマカオへ移しました。
しかしながら、後ろ盾のない日本人がゆえに目指すパードレへの道は険しく、苦難の連続。
天正遣欧少年使節の一員だった原マルチノが、パードレ・原として多聞を支える人物として登場します。

一六二二年に起きた、マカオの戦いが描かれていて、物語の大きな転換点になっています。規模は違いますが、マカオの人にとってそのインパクトや出し抜け感から、ロシアによるウクライナ侵攻を想起しました。

異郷での二人の少年の友情と成長をドラマチックに描きながら、恋と信仰をテーマにした、爽やかでロマンあふれるエンタメ歴史時代小説です。
徳川幕府黎明期のキリスト教政策や海外交易の影響を色濃く受けたマカオを舞台に、読みごたえある一冊。

南蛮の絆 多聞と龍之進

大村友貴美
双葉社
2022年5月22日第1刷発行

装幀:高柳雅人
装画:スカイエマ
地図・年表製作:ビーワークス

●目次
序章
第一章
第二章
第三章
最終章

本文427ページ

初出:双葉社文芸総合サイト「カラフル」2020年6月10日~2021年7月12日
書籍化にあたり、「双樹、戦ぐ」から改題。

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『南蛮の絆 多聞と龍之進』(大村友貴美・双葉社)

大村友貴美|時代小説ガイド
大村友貴美|おおむらゆきみ|作家 1965年、岩手県生まれ。中央大学文学部卒業。 2007年、『首挽村の殺人』で第27回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、デビュー。 時代小説SHOW 投稿記事 著者のホームページ・SN...