囮になって危険な女盗人退治。若者たちの恋の行方も気になる

『拙者、妹がおりまして(2)』|馳月基矢|双葉文庫

拙者、妹がおりまして(2)馳月基矢(はせつきもとや)さんの文庫書き下ろし時代小説、『拙者、妹がおりまして(2)』(双葉文庫)をご恵贈いただきました。

本所相生町に住まう二十三歳の御家人白瀧勇実と、六つ下の妹千紘、白瀧家の屋敷の隣にある剣術道場の跡取り息子で勇実より二つ下の龍治。三人の若者の日常の出来事を描く青春時代小説の第2弾です。

おなごばかりを狙う女盗人が現れた。天気が悪い日の昼間に狙った相手に近づき、金目のものを盗み取る一方で、夜になると凶悪化し、盗みだけでなく殺しまで働くという。女盗人をつかまえようと躍起になっている岡っ引きの山蔵親分から、捕物の際の囮役になるよう依頼された千紘は、兄の勇実と隣家の龍治の反対を押し切り、囮役を引き受けるのだが――。悩み深き若者たちの日常と成長を爽やかに描く、青春時代小説シリーズ第二弾!

(『拙者、妹がおりまして(2)』カバー裏の内容紹介より)

文政四年(1821)晩秋九月。
薬研堀界隈で目明かしをつとめる山蔵親分が、本所相生町にある白瀧勇実の屋敷を訪ね、白瀧家と境を接する矢島道場の跡取り息子の龍治に、捕物の相談をしていました。
そこに、出先から戻った千紘が加わりました。

「千紘お嬢さん、ちょいとあっしらに手を貸してくれやせんかね。縄張りを荒らされて、あっしら目明かしは面目丸潰れなんでさあ。竪川を挟んだ南北に、両国橋を渡って、神田川を挟んだ南北と、けっこう手広くやられちまっているんですよ」
 千紘は目を輝かせた。
「それは大変ね。山蔵親分、わたしにできることがあるのなら、何でもやらせてちょうだい」

(『拙者、妹がおりまして(2)』P.14より)

雨の降っているときや、今にも振り出しそうな薄暗い日によく現れて、女ばかりを狙って、鮮やかな手口で財布や金目のものを盗み取る、「雨傘のお七」と呼ばれる女盗人が出没して、山蔵親分を悩ませていました。

明るくて活発で、困っている人がいると放っておけない性分の千紘は、山蔵から若い娘がよく狙われるという話を聞きを聞いて、囮の役として捕物に加わりたいと言い出しました。勇実と龍治は、危なすぎると反対しました。

山蔵によると、雨傘のお七は夜に出会うと凶悪化して、盗みを働くだけでなく相手を川や堀に投げ込んだり、刀で刺したりして、殺してしまうと言います。

言い出したら引かない千紘は男たちを言いくるめて、ちょうど手土産を持って白瀧家にやってきた、武家娘の亀岡菊香とともに、囮役をつとめることになりました。

第1作で、大川に落ちたところを、水練の得意な勇実に助けられた菊香が、本書でも重要な役回りで登場し、意外な活躍を見せます。

また、勘定奉行の遠山景晋の命を受けて、勇実に勘定所に出仕するようにと勧誘に来た、謎の男、尾花琢馬がその素顔を明らかにしていくのも面白いところです。

捕物劇を本線にして。痛快で派手な立ち回りを随所に織り込みながらも、若者たちの恋心や苦悩、妬心などを瑞々しい筆致で描いていきます。
胸がキュンキュンする青春時代小説です。

拙者、妹がおりまして(2)

馳月基矢
双葉社 双葉文庫
2021年7月18日第1刷発行

カバーデザイン:bookwall
カバーイラストレーション:Minoru

●目次
第一話 雨傘のお七
第二話 早とちり
第三話 徒花日和
第四話 月下のお七

本文258ページ

文庫書き下ろし

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『拙者、妹がおりまして(1)』(馳月基矢・双葉文庫)
『拙者、妹がおりまして(2)』(馳月基矢・双葉文庫)

馳月基矢|時代小説ガイド
馳月基矢|はせつきもとや|時代小説・作家 1985年、長崎県五島列島生まれ。 京都大学文学部卒、同大学院修士課程修了。 2019年、小学館第1回日本おいしい小説大賞に、「ハツコイ・ウェーブ!」(氷月あや名義)で最終選考に残る。 2...