時代小説とは何か

時代小説バカというぐらい、普段、時代小説しか読んでいない。そんな時代小説バカの私から見ると、『文蔵 2009・3』はかなり琴線にひっかかる箇所が多い。

特集は、「『人間失格』『蟹工船』から『カラマーゾフの兄弟』まで リバイバル・ブームを読む!」で、インタビューは石田衣良さんと大崎梢さんで、ちょっと関係ないかなと思っていたら、石田さんから、昔の伝奇ロマンに優れたものが多いとおっしゃられて、半村良さんの『産霊山秘録』や『妖星伝』、山田風太郎さんの忍法帖、司馬遼太郎さんの『梟の城』などを挙げられてうれしくなった。リバイバル(復刊)してほしい、もう一度ブームになってほしい時代小説を考えてみるのも楽しいかも。

宮部みゆきさんの新連載「桜ほうさら」も始まった。貧乏長屋に暮らす浪人古橋笙之介を主人公にした時代小説。八百善の<起こし絵>(紙でできた組み立ておもちゃ)の話が出てきたりして今後の展開が楽しみだ。

新直木賞作家の山本兼一さんの魅力に迫る、細谷正充さんによる、作品ガイドもタイムリーな特別企画だ。受賞作の『利休にたずねよ』の次に読む本を探している人にはありがたい。

利休にたずねよ

利休にたずねよ

あさのあつこさんや中村彰彦さん、火坂雅志さん、加治将一さんらの時代小説の連載もそれぞれ面白いが、今号で一番気になったのが、清水義範さんの「パロディだらけの日本文学」の雑談だ。時代小説とは何かについて話されている(というか書かれている)。

 時代小説とは何か、というのは実はなかなかの難問である。過去の時代を舞台にした物語のことをそう呼ぶのかな、と考えると、かなり幅の広いものになってしまうのだ。

(中略)

 時代小説とは、侍のいなくなった明治時代以降に、侍のいた時代を舞台にして書かれた小説である。主に江戸時代、戦国時代を舞台にするが、まれに源平の時代にまでさかのぼることもある。武士階級の物語であることが多いが、時には、町人ややくざ者が取りあげられることもある。

 だいたいこの定義でいいだろう。しかし、次のように補足をつけておけばより正確だ。

 大きく捉えれば時代小説に含まれるものだが、やや異質なものとして歴史小説を独立させることも可能である。これは、歴史上の実在の人物を主人公にして、その業績や運命を描くもので、歴史そのものを語ることを目的にしている。(後略)

(『文蔵 2009・3』「パロディだらけの日本文学」清水義範 P.348より)

侍のいなくなった明治時代以降に、侍のいた時代を舞台にして書かれた小説」という定義は、とてもうまくポイントを押さえた説明になっている。私も使ってみたい表現だ。