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スケールが大きな伝奇時代小説『国禁』

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上田秀人さんの『国禁』を読んだ。幕府奥右筆組頭の立花併右衛門と、立花家の隣家の次男で剣術遣いの柊衛悟が活躍する「奥右筆秘帳」シリーズの第2作目である。

国禁 (講談社文庫 う 57-2 奥右筆秘帳)

国禁 (講談社文庫 う 57-2 奥右筆秘帳)

陸奥津軽家より、物成り豊かにつき高なおしをとの願いが奥右筆御用部屋へ上がってきた。不審に思った併右衛門は、先の筆頭老中松平定信に報告をした。表高と実高の差が大名の経済的な余裕になるが、表高を実高にあわせて増やせば、家格が上がる代わりに、幕府お手伝い普請の回数や費用が高くなり、藩士も軍令にしたがって抱えねばならず、江戸詰の人数も増やさなければならあい。実質収入は大幅に減ることになる。しかも理由が豊作というが、天明の飢饉で数万の餓死者を出していた。

併右衛門は定信より、津軽家が高なおしを願い出る意図を探るように命じられる…。

津軽家というと隣藩の南部家との因縁がよく知られる。今回はその因縁が伏線になっている。

また、このシリーズは十一代将軍家斉の治世下を舞台にしているが、家斉の父一橋治済が物語を掻き回す役割を演じて、その結果、家斉の人物像が新味をもって描かれている。また、治済に使役される元甲賀忍者・冥府防人と涼天覚清流(作者の創作した流派)の遣い手・衛悟とのチャンバラによる対決が迫力があって面白い。

対馬藩による国書偽造事件が描かれたり、朝廷のために働く探索方が登場したり、幕府お庭番や伊賀忍者も出てきて、伝奇小説ファンにはたまらないところ。

早く次回作が読みたいなあ。

対馬藩による国書偽造事件を描いた時代小説では、鈴木輝一郎さんの『国書偽造』が文句なしに面白い。

国書偽造 (新潮文庫)

国書偽造 (新潮文庫)