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「居眠り磐音」シリーズに登場する御典医桂川家とは

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佐伯泰英さんの『白桐ノ夢』を読んだ。痛快時代小説「居眠り磐音」シリーズの第二十五弾である。二十五冊目にもなると、多彩な登場人物たちが物語に興趣を添えることになる。今回の巻では、将軍家世子(江戸城西の丸の主)の徳川家基の主治医を務める御典医にして蘭方医の桂川甫周国瑞(かつらがわほしゅうくにあきら)が主要な役割を演じる。

白桐ノ夢 ─ 居眠り磐音江戸双紙 25 (双葉文庫)

白桐ノ夢 ─ 居眠り磐音江戸双紙 25 (双葉文庫)

尚武館道場の佐々木磐音は、家基より西の丸に出仕している師範代依田鐘四郎を通じて、桂川国瑞が西の丸にお脈拝見に登城する折に、宮戸川の鰻を持参するように命じられる。家基が別行で日光社参をした際に、磐音は道中を密かに警護し危難を救った際に、宮戸川の鰻を献上することを約定していた。また、江戸城西の丸では、何者かの命を受けた忍びの集団が暗躍して、家基の御身を脅かそうとしていた…。

また、作中では、国瑞の新妻の桜子が気鬱気味で、磐音が剣術の稽古をつけることで体を動かし元気付けるシーンも出てくる。

さて、この桂川家は、代々御典医の家系で、作中では四代目の国瑞のほか、その祖父で二代目の国華(くにてる)、父で三代目(当代)の国訓(くにのり)も存命という設定。国瑞は、「天性頴敏、逸群の才」として秀逸の評価を受ける人物で、『解体新書』を杉田玄白、中川淳庵らとともに翻訳し、長崎のオランダ商館の医者で植物学者のツュンベリーが江戸産府の折りには、中川淳庵とともに最新のオランダ医学を直に学んだという。興味深い江戸人の一人である。

なお、桂川国瑞の「居眠り磐音」シリーズの初出は、第九巻『遠霞ノ峠』からであり、十八大通の一人として登場している。

肝心の物語のほうは、忍びの集団との対決のほかにも、大道芸として殴られ屋で生計を立てる間宮一刀流の遣い手、向田源兵衛が登場したり、尚武館の若手二十六人による剣術試合ありで、今回もチャンバラシーンがてんこ盛りで大いに楽しめる。