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品川宿の人情が楽しめる時代小説

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今井絵美子さんの「立場茶屋おりき」は、東海道の第一の宿場、品川にある立場茶屋(たてばぢゃや)を舞台にした時代小説シリーズ。立場茶屋は、東海道を旅する人に飲食を提供する茶店のこと。美人女将おりきが営む立場茶屋は料理が自慢の旅籠としても知られていた。シリーズの第二弾の『行合橋(ゆきあいばし)』も、この立場茶屋で起こるさまざまな事件を連作形式で人情たっぷりに描いている。

行合橋―立場茶屋おりき (時代小説文庫)

行合橋―立場茶屋おりき (時代小説文庫)

「はまゆう」 おりきの茶屋に、記憶喪失の男、如月鬼一郎が居候をする。鬼一郎に、おりきはかつて好きだった男を思い出す…。

「行合橋」 おりき茶屋の茶立女のおまきは、昼の書き入れ時が終わった頃にやってくる行商人風の若い男のことが気になっていた…。行合橋は品川海蔵寺近くの橋らしいが地図で確認できなかった。

「秋の果て」 おりき茶屋に、大店の内儀ふうの品のよい女性・お藤がやってきて、旅籠のほうに泊まれないかとおまきに訊ねるが…。おりき茶屋の旅籠は紹介者のいる予約客しか泊めていなかった。

「名草の芽」 岡っ引きの亀蔵親分はやもめで、おりき目当てに立場茶屋に入り浸っていたが、亡くなった女房おあきの妹こうめと一緒に暮らしていた。こうめはおあきの八文屋(安手の居酒屋)を継いで切り盛りしていたが…。

「別れの霜」 幼いながらもおりき茶屋で下働きをするおきちは、桜草売りから深川で兄の三吉によく似た男の子がいるらしいことを知る。三吉は酒飲みの父親のために遊里に売られていた…。

このシリーズは、粗雑でありながらも口舌のよい江戸ことばが楽しめる一編でもある。凛として気品のある女将が主人公の時代小説としては、平岩弓枝さんの『御宿かわせみ』や藤原緋沙子さんの『隅田川御用帳』、山本一力さんの『梅咲きぬ』などの作品が思い出されるが、いずれも江戸の人情と情緒が楽しめるという共通点がある。

新装版 御宿かわせみ (文春文庫)

新装版 御宿かわせみ (文春文庫)

梅咲きぬ (文春文庫)

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