2023年時代小説SHOWベスト10、発表!

2008年、本年もよろしくお願いいたします

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新しい年、2008年を無事に迎えることができた。昨年12月に義祖母が亡くなり、年賀状を控えたこともあり年末は穏やかに過ごした。正月も毎年定番の初詣を取りやめることになり、のんびりと過ごせそうだ。昨年は時代小説の読書量が減り、ブログの更新も滞りがちだったが、今年は年間100冊を目指して、少しだけがんばりたいと思う。

山本一力さんの『銭売り賽蔵(ぜにうりさいぞう)』を読む。銭売りとは、金貨や銀貨を、町民の間で使われる文銭に両替する商売である。

銭売り賽蔵 (集英社文庫 や 41-1)

江戸時代、小判や一分金、二朱金などの金貨、丁銀や豆板銀(小粒)などの銀貨、一文銭(寛永通宝)、百文銭(天保通宝)などの銅貨の三種類の通貨が流通していた。長屋暮らしの者が日々遣うカネは、銀ではなく文銭である。町場の商店や担ぎ売りから物を買うには、文銭が必要である。ちなみに、銭九十六文を緡(さし)と呼ばれる紐に通して結んだものを銭緡といい、百文として通用した。物価の基準を何に置くかで変わってくるが、四文=100円と考えると、江戸の金銭感覚を理解しやすい。

時代は江戸中期の明和二年。田沼意次が幕閣の中で頭角を現してきたころ。深川で銭売りをする賽蔵は、深川十万坪の銭座から銭を仕入れていたが、あらたに亀戸村に桁違いの大きさの銭座が開かれることを知る。亀戸の銭座は、金座の後藤家の肝いりで、深川に食い込もうとする。真摯に得意先に向き合う賽蔵、そして、その気概に応える大店の主人や仲間たち…。

深川の銭座と亀戸の銭座の対決を主軸に、三井両替店の様子、銭相場の高騰や大岡越前による経済統制の後の時代も描かれていて、江戸経済小説としても第一級である。しかし、われわれ一力ファンがうれしいのは、「難儀をしているときに示す情こそが、本物」という深川に暮らす人たちの心意気、実の部分が描かれていることである。作者自身を想起させるような主人公の賽蔵は、後厄というから四十過ぎの風采は冴えない中年だが、その男気とストレートな商魂からとてもかっこよく見える。賽蔵を支えるおさななじみのおけいの存在も魅力的だ。

山本さんの作品は江戸の人情と情緒にあふれていて、新春に読む本としておすすめである。この『銭売り賽蔵』も思いやりの心や真っ当に仕事と向き合おうという気持ちを取り戻させてくれる一冊だ。