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吉良上野介夫人の富子から見た忠臣蔵

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1日遅れのエントリになってしまったが、12月14日といえば、赤穂浪士の吉良邸討ち入りの日。もっとも江戸時代は旧暦だから、今のカレンダーでいえば1月下旬になるわけだが…。

ともかく、赤穂浪士の討ち入りを題材にとった時代小説が読みたくなる。今年は、諸田玲子さんの『おんな泉岳寺』を読む。「忠臣蔵」関係の時代小説では、大石内蔵助など赤穂浪士の面々が主人公のものが多い。そんな中で、この中篇小説では吉良上野介の奥方の視点から吉良邸討ち入り劇を捉えているのが、新鮮である。

おんな泉岳寺 (集英社文庫)

おんな泉岳寺 (集英社文庫)

墓参に泉岳寺を詣でた浅野内匠頭の未亡人の瑤泉院は、そこで吉良上野介の妻・富子が墓前を訪れたことを知る…。吉良への憎悪に凝り固まっていた瑤泉院は、悲願が成就し胸には虚しさと禍根の思いが渦巻いていた。一方、静かな晩年を過ごす富子に降ってわいた悲劇…。

表題作をはじめ、「悲恋」「いびつ」「坐漁の人」の四編を収録。

「悲恋」 天保三年八月十九日、鼠小僧次郎吉が処刑された日に、牢屋奉行石出帯刀の嫡男・新之助は身投げをした女を助けた…。

「いびつ」 時代は明治三年、清水の次郎長の一の子分、大政こと政五郎は、かつて自分をやくざ者へと導いた幼なじみの新吉と再会する。政五郎は、懐かしさもあって面倒を見るうちに新吉絡みの騒動に巻き込まれることに…。

「坐漁の人」 昭和九年。明治から昭和にかけて活躍した大物政治家、西園寺公望は晩年、静岡県の興津で暮らす。その西園寺公を憂国の少年、五十嵐軍太が命を狙う…。

それぞれ、時代も舞台も登場人物たちも異なる物語が収録されているが、各話に共通するのは、過ぎ去りし過去を振り返りつつ、残された日々をしっかりと生きていこうという主人公の姿であり、読後に余韻が残る中篇集である。