江戸時代通になれる本

最近、時代小説好きが高じて、江戸時代の魅力に取りつかれている。『山本博文教授の江戸学講座』は、そんな江戸好きにピッタリの本だ。

山本博文教授の江戸学講座 (PHP文庫)

山本博文教授の江戸学講座 (PHP文庫)

この本で面白いのは、『ぼんくら』『あかんべえ』など時代小説でもファンの多い宮部みゆきさんと、『重蔵始末』シリーズで知られる逢坂剛さんの、お二人が生徒役として質問して、巧みに山本教授の話を引き出している点である。二人の作家とも、現代小説で活躍していて、時代小説でも優れた作品を書かれている。当然、江戸についてもいろいろと調べて書かれていたはずで、生徒といってもとても優等生である。

ぼんくら(上) (講談社文庫)

ぼんくら(上) (講談社文庫)

あかんべえ〈上〉 (新潮文庫)

あかんべえ〈上〉 (新潮文庫)

猿曳遁兵衛 〈重蔵始末(三)〉 (講談社文庫)

猿曳遁兵衛 〈重蔵始末(三)〉 (講談社文庫)

宮部 先輩が新入生をからかって、しばらくして「嘘だよ」と打ち明ける。昔も今も変わらないですね。ところで大奥で新入りの御末(御半下)が裸踊りをさせられた、というのは本当なんでしょうか。

山本 明治になってからの聞き取りでは、大奥を下がった人が、「そういう噂が流れているけど、そんなことは決してありませんでした」と言っていますけどね。

(『山本博文教授の江戸学講座』P.19より)

逢坂 私は今、北方探検家として知られる近藤重蔵のことを小説で書いているのですが、重蔵の場合も、親の代に近藤家に養子に入っています。「遠山の金さん」で知られる遠山景元(代々金四郎を名乗っていた)の場合も、父・景晋の代に他家から養子に入っていますね。

山本 旗本ですと、養子に行く先は武家になりますが、御家人の場合、武士を捨て、商家に婿入りする人もたくさんいました。江戸も後期になると、戯作者として有名な滝沢馬琴のように、下駄屋に婿入りする者も出てくるわけです。また、持参金をもらって、町人の次男、三男を養子にすることもありました。

(『山本博文教授の江戸学講座』P.47より)

対話形式なので、講義を聴いているような気分で読めて、重要な用語や人名には、脚注も付いているので、気楽に江戸のことを学びたい人には、役に立つ一冊だと思う。個人的には、安政の大地震に関する講義を掲載した第七章が面白かった。