文化三年の大火を描いた時代小説

千野隆司さんの『大川端ふたり舟』を読んでいる。文化三年(1806)三月四日に起きた、江戸の三大大火の一つで、後に「車町の大火」と呼ばれる火事を描いた捕物小説である。

 この日は朝から、坤(南西)の風が強かった。乾いた土埃が舞い上がり、見上げる日差しが黄色く見えたほどだった。

(『大川端ふたり舟』P.11より)

千野さんの作品には、江戸の市井を生きる人たちを情感豊かに描く作品が多い。この『大川端ふたり舟』は、「霊岸島捕物控」とサブタイトルが付けられたとおり、捕物小説であるが、大火に遭った人々の生活を哀歓に彩られた形で描き出している。

主人公は、霊岸島を縄張りにする岡っ引五郎蔵の十七歳になる娘お妙である。離別した母を盗賊に殺され悲嘆にくれたお妙をすぐに大火が襲う。大火に遭い、焼け出されて寺に収容された人々の世話に生き甲斐を感じるようになったお妙は、母親を殺した盗賊の一味の手がかりをつかむが…。

そういえば12月14日といえば、忠臣蔵の討ち入りの日(旧暦と新暦の違いはあるが)だった。湯川裕光さんの『瑤泉院―忠臣蔵の首謀者・浅野阿久利』が文庫で出ていたようだから、読んでみようっと。