2023年時代小説SHOWベスト10、発表!

江戸の人にもお金は大事

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『万事金の世』を読み終えた。お金をテーマにした悲喜劇を描いた時代小説のアンソロジーである。この本に収録された作家のラインナップに妙味がある。活躍が目覚しい現役作家から、故人になられた作家まで、バランスがいい。

収録作品は以下の通り。()内は収録作品集

『武道宵節句』山本周五郎(『与之助の花』)

零落した武家の兄妹が、雛祭りの宵節句に、思いがけない事態に巻き込まれるという話。爽やかな読み味の物語。

与之助の花 (新潮文庫)

与之助の花 (新潮文庫)

『残り火』北原亞以子(『昨日の恋 爽太捕物帖』)

不器量を逆手にとって近づく男から金を巻き上げる女おしかと、女を騙して金を貢がせた末に逃げる男定七。二人の恋と心情が一幕の芝居のように描かれている。

昨日の恋―爽太捕物帖 (文春文庫)

昨日の恋―爽太捕物帖 (文春文庫)

『梅試合』高橋克彦(『完四郎広目手控』)

古本屋藤岡屋由蔵に居候している旗本の次男・香冶完四郎の推理が見事な捕物話。若き日の仮名垣魯文も登場する。

完四郎広目手控 (集英社文庫)

完四郎広目手控 (集英社文庫)

『さびしい水音』宇江佐真理(『深川恋物語』)

裏長屋に暮らす普通の夫婦。大工の佐吉は、女房のお新が絵を描いて金を稼ぐようになると、それに頼ってしまう。やがて、感情がかみあわなくなっていく悲劇を描く。

深川恋物語 (集英社文庫)

深川恋物語 (集英社文庫)

『千両蜜柑異聞』小松重男(『間男三昧』)

朝から晩までひたすら働き続けて、一生かかって五十両、百両を貯める自分の人生。片や千両払っても蜜柑を手に入れる人間がいる。社会の不条理を知った、商家の大番頭は金銭感覚に錯誤を生じてしまう…。

間男三昧

間男三昧

『師走狐』澤田ふじ子(『夕鶴恋歌』)

狐は稲荷信仰の神とされ、商売繁盛の願いを受ける神である。狐の化身らしき男が大垣城下の貪欲な豆腐屋に現れた…。

『骨折り和助』村上元三(『紙の降る城』)

和助は、父親が博打で作った三十両の借金を返済するために、朝から夜まで身を粉にして働く。実直な彼の人柄に関心した人々が次々と彼に手を貸していくところに、大人のメルヘンを感じる、今回最大の掘り出し物的な作品。定廻り同心加田三七が登場するのも注目。

紙の降る城

紙の降る城

『砂村心中』杉本苑子(『永代橋崩落』)

文化四年に生じた永代橋崩落にともなうドラマを描いた一編。不肖の不始末のために、四十両の金策の末に思いがけず犯罪に手を染める父親。この連作集が読みたくなった。

永代橋崩落 (中公文庫)

永代橋崩落 (中公文庫)

『相学奇談』中山義秀(『新編 中山義秀自選歴史小説集 第五巻』)

町医者にして人相見の水木玄庵は、人間の本質をよく知っている。善悪とは別の尺度で行動するところが面白い。中山義秀さんというと、中山義秀文学賞で名を残している。優秀は時代小説を対象に贈られるこの賞の歴代の受賞者はすごい。(いずれ、このネタでブログを書きたいと思っている)

『疼痛二百両』池波正太郎(『上意討ち』、『完本池波正太郎大成 第二十七巻』)

北国の十万五千石のとある藩の江戸留守居役大原宗兵衛は、四歳の若殿が跡継ぎとして認められるかどうかという厄介ごとのために、胃が痛くてたまらない…。

上意討ち (新潮文庫)

上意討ち (新潮文庫)