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時代小説で冬の京都に思いをはせる

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澤田ふじ子さんの『篠山早春譜』を読み始めた。居酒屋「尾張屋」の主・宗因の活躍と、京の市井の人々の哀歓を情感豊かに描く「高瀬川女船歌」シリーズの第四弾である。

澤田さんの作品は江戸時代の京を舞台にしたものが多く、江戸の町とは異なる伝統と独特の文化を描き、興味深い。この「高瀬川女船歌」シリーズも例外ではない。主人公の宗因は、かつて尾張藩士として京屋敷に詰めていたが、公金横領を疑われて脱藩。嫌疑を晴らすために僧形となり、そのまま京の町に暮らす。その後、冤罪は晴らされたが、藩には復帰せず、京の木屋町で居酒屋を営むようになった。

慶長十六年(1611)、角倉了以が幕府に高瀬川の開削を申請し、慶長十九年に、七万五千両の私費を投じてこれを完成させた。角倉家は、大堰川(桂川)や高瀬川の支配権を得て、諸物資の輸送権を一手に握り莫大な資産を形成した。江戸時代、高瀬川に就航した高瀬船は、荷船・客船合わせて百八十八艘もあったという。

さて、この物語は、京に冷えの強い冬が訪れかけたところから始まる。