「武士の家計簿」と下級藩士の懐具合

遅ればせながら、磯田道史(いそだみちふみ)さんの『武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新』を読み始めた。時代小説ではないが、幕末から明治初期にかけての武士・士族の経済状態がわかる面白そうな読み物である。

著者の磯田さんは、金沢藩の下級武士の猪山家の家計簿(金沢藩士猪山家文書)を古書店から入手した。天保十三年(1842)年から明治十二年(1879)まで実に三十七年間にわたるほぼ完全な保存状態での記録である。しかも、猪山家は金沢藩で「御算用者(ごさんようもの)」と呼ばれる「加賀百万石の算盤係」、いわば会計処理(経理の専門家)のプロだったから、自宅の私的な家計簿の完成度が高いのも当たり前。

磯田さんは、それを丹念に解読していき、時系列に幕末から明治初期にかけての代表的な武家の経済状態を解説し、裏づけデータとしてこの資料を活用している。はしがきに書かれた「金沢藩士猪山家文書」の入手のくだりから、歴史家らしからぬ、大胆でもったいぶったところのない文体で、読者の好奇心を引き付ける。

こういった武士の懐具合がわかる資料があると、時代小説もディテールまでリアリティあるものになり、より面白さが増すだろうな。

さあ、早くブログを書き終えて、続きを読もう。

武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)

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