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ハードボイルドな土方歳三

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二十代前半の頃に、ハードボイルドミステリと冒険小説にはまったことがあった。ダシェル・ハメット、レイモンド・チャンドラー、ミッキー・スピレーン、ジャック・ヒギンズ、ギャビン・ライアル、船戸与一、志水辰夫……。不思議と北方謙三さんのハードボイルド小説は読んだことがなかった。

ところが、北方さんが『武王の門』で時代小説デビューされると、一転、北方南北朝小説のファンになった。その後、『三国志』や『水滸伝』など中国時代小説を中心に活躍されるようになり、また少し距離ができた。そして、満を持して、幕末、新選組を描かれた。しかも主人公は、新選組の隊士のなかで、もっともハードボイルドが似合う男、土方歳三。

司馬遼太郎さんの『燃えよ剣』で土方歳三好きになった人は多いと思うが、その後なかなか土方がロマンティックに描かれた作品は出てこなかった。『黒龍の柩』では、夢を追い求め、夢に命を賭ける男として土方が何とも魅力的に描かれている。そして土方の活躍ぶりも史実の間隙を狙ったスケールの大きな途方もない着想(それでいて理詰めでも十分納得できる)でうれしい。何よりもいいのが、ハードボイルド小説の肝、男の友情が見事に描かれていることである。

土方をめぐる男たち、山南敬助や近藤勇、沖田総司、島田魁ら新選組の同志、小栗忠順、勝海舟、徳川慶喜、村垣範正、坂本龍馬ら幕末の雄との交流、謎の料理人・久兵衛やお庭番・加右衛門らとの友情。いま、読了後の快さに浸っている。

相川司さんの解説で、『長いお別れ』や『深夜プラス1』というかつて愛読した本の書名を目にして、懐かしい気分になっている。あらためて土方歳三ファン、新選組ファンに『黒龍の柩』をすすめたい。

黒龍の柩 (下) (幻冬舎文庫)

黒龍の柩 (下) (幻冬舎文庫)

武王の門〈下〉 (新潮文庫)

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燃えよ剣〈下〉 (新潮文庫)

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