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無外流の剣士と坐業

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今、宮本昌孝さんの『夏雲あがれ』を読んでいる。東海の小藩で青春を送る三人の青年武士(新吾・太郎左・仙之助)が藩の存亡を賭けて巨悪と戦う時代小説。三人とも直心影流を学んでいるが、物語の中で無外流の剣士が登場し興味深い。

「昨日、安富さまに居合をみせていただいた」

 太郎左は話だけで昂奮している。

「坐業(すわりわざ)で、巻藁を真横に両断されたのだ。藁屑すら飛ばなかった。凄いものだったぞ」

 正座、あるいは、左膝を折り敷き右膝を立てた姿勢から、立ち上がりざまに一挙動で、抜刀して斬るのが坐業である。

精確無比な斬撃で、凄味を感じさせる。無外流の流祖の辻月丹は、回国三十三カ国、参禅二十年に及び、生涯を一剣に捧げた剣士で、『ほうけ奉行―若宮隼人殺生方控』にも重要な役割で登場する。また、『剣客商売』の秋山小兵衛も無外流の達人であった。

夏雲あがれ(上) (集英社文庫)

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剣客商売 (新潮文庫―剣客商売)

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