メインメニュー
以前の時代小説SHOW
このサイトについて


1)時代小説 : 時代小説って何?
投稿者: jidai-show 投稿日時: 2006-8-20 14:18:33 (7687 ヒット)

●時代小説と歴史小説はどう違うのか?

ここで、あらめて時代小説について、定義してみたいと思う。

広辞苑によると、時代小説は「古い時代の事件や人物に題材をとった通俗小説」。一方、歴史小説は「過去の時代を舞台にとり、もっぱらその時代の様相を描こうとする小説。島崎藤村の『夜明け前』など。単に過去の時代を背景にする時代小説などとは異なる」と記されている。両者の違いを題材ではなく、表現手法に置いていて、時代小説を一段文学性が低いものとして扱っている点がとても気になる。



文芸評論家の福田宏年さん(『戦国城砦群』[井上靖著・文春文庫]の解説)によると、日本の文壇および読書界では、森鴎外の昔から、「歴史小説=歴史其儘→純文学、時代小説=歴史離れ→大衆文学」という考え方が定説化していたようだ。このことが山本周五郎さんが大衆文学に身を置き、すぐれた時代小説を書きつづけながらも、コンプレックスを持ち続け、直木賞さえも辞退される一因になったのではないかと思われる。

説明図1


今まで、文学性という主観的なものさしで、時代小説と歴史小説を分類してきたせいか、両者の定義が次第に曖昧になっていく。また、最近、純文学の商業的な価値が小さくなり、大衆文学がエンターテインメントと呼ばれることで、多くの読者の手に取られ読まれるようになってきた。書店の売場のコーナー表記や出版社による作品のPRの仕方も、両者を分けずに、歴史小説であったり時代小説であったり、「時代・歴史小説」のように併記されたりと、クロスオーバーするようになってきた。
説明図2


「時代小説SHOW」では、時代小説とは、「過去の時代を背景にするフィクション(虚構部分)をもった物語性のある小説」と定義する。歴史小説は、「史実を踏まえ、作者の想像力を駆使して、事件の背景分析や人間ドラマを加えて、歴史上の事件や人物を描く小説」という意味で捉えることにする。すなわち、歴史小説は、時代小説の代表的なジャンルの一つということができる。

説明図3


●時代小説ってどんなジャンルがあるの?

時代小説は、歴史小説をはじめ、剣豪小説、忍者もの、捕物帳、市井もの、仇討ちや御家騒動を描いた武家もの、股旅もの、伝奇小説など多くのジャンルをもっている。過去の時代(太古から日露戦争頃まで)を背景にしたフィクションであるために、あらゆるタイプの表現形態、多種多様のテーマを認めている。日本ばかりでなく、中国や西洋に舞台を置いているものも含む。懐が深い、融通無碍なエンターテインメント文学ということができる。


歴史小説:
時代小説の代名詞のようになっっているのは、司馬遼太郎さんの影響が大きい。ビジネスマンや企業の管理職は、『坂の上の雲』や『竜馬がゆく』等から、歴史上の人物が苦境を乗り越えた事例を学び、生きる指針としたり、リーダー論として読むことができる。いかに史実を扱うかが作者の腕の見せどころである。



伝奇小説:
歴史小説の対極にあるのが伝奇小説。時代背景を借りながらも、架空の人物や架空の事件にスポットを当てた、歴史離れした作品。スーパーヒーローが登場したり、奇想天外な事件が起こったりして、最も時代小説の面白さをもったジャンルといえる。物語の飛躍ぶりに作者自身も収拾がつかなくなってしまい未完のことも少なくない。読者の心構えとしては、肩の力を抜いて、常識にとらわれず、大きな虚構を楽しもう。隆慶一郎さんの『吉原御免状』など一連の作品は、伝奇ものとしてもっとも昇華した形である。



剣豪小説:
腰に刀を差した侍が登場するチャンバラものをいう。宮本武蔵や柳生十兵衛、千葉周作といった実在の剣士から眠狂四郎、青江又八郎、秋山小兵衛といった架空の剣客まで、いろいろな主人公が生み出されてきた。魅力は、ハラハラドキドキの緊張感あふれるチャンバラシーン。かつて時代劇全盛時代に育った人には容易なことだが、若い世代にとっては、その対決シーンの詳細が字面だけではイメージしにくいハンディもある。



捕物帳:
時代小説における探偵もの。江戸町奉行所(今の警視庁と地裁、都庁の役割をもつ)に勤める役人とその役人の下で働く小者が主人公のことが多い。岡本綺堂さんの『半七捕物帳』がルーツ。火付盗賊改方という凶悪犯罪対策用の特別警察が活躍する『鬼平犯科帳』も捕物帳に入れられる。もっとも、作者の池波さんの目は、取り締まる側ばかりでなく、盗賊たちに向いていることが多く、一種の暗黒街ものとも呼べそうだが。



忍者小説:
スパイというよりは特殊工作員といった感じが忍者だろうか? 本来、忍者は影の存在だから史実に残っていては、忍者失格ともいえる。というわけで、忍者を扱った時代小説は、それだけでかなり歴史離れしているということになる。伊賀、甲賀、風魔などの忍者のほかに、戦国時代の有力大名や藩が独自で抱える忍びがいた。山田風太郎さんの「忍法帖」シリーズが有名。ほとんどの忍者小説は、伝奇小説に含めることもできる。



市井小説:
時代小説の登場人物は、武士ばかりではない。士農工商の下二つを担う、職人や商人たちが活躍するのは市井小説。市井とは、中国古代に井戸のある所に人が集まり市ができたことから、人家が集まっているところ=町を指す。江戸時代、普通の町人が住んだ長屋には、中心に井戸があり、まさに市井そのものといったところ。市井小説は、現代ではほとんどなくなってしまった、「人情」があり、読む人にしみじみとした情感を与える。疲れた人の癒し(ヒーリング)として効果がある。


そのほかにも、歌舞伎界や浮世絵師に題材をとった芸道もの、日本を取りまく海に活躍する男たちを描く海洋小説、御家騒動や武士道を描いた士道小説(武家もの)、忠臣蔵などの仇討ちもの、無宿人というアウトローを描く股旅もの、宮城谷昌光さんや酒見賢一さんらの活躍が目立つ中国時代小説、佐藤賢一さんの登場により注目される西洋時代小説などがある。



司馬遼太郎、池波正太郎、柴田錬三郎、藤沢周平、隆慶一郎…。かつての時代小説をリードしている巨人たちには故人が多い。しかし、かれらの遺した名作は、色あせないで今も輝きつづけている。作品を手に取りページをめくれば、いつでも感動の海に浸れる。その薫陶を受けた作家たちが活躍し、新しい時代小説が日々生まれている。

今、時代小説は面白い。

2000年5月28日
2006年8月20日 改稿
 理流

印刷用ページ このニュースを友達に送る
 
投稿された内容の著作権はコメントの投稿者に帰属します。

投稿者 スレッド
dan_na
投稿日時: 2006-8-22 14:21  更新日時: 2006-8-22 14:21
町人
登録日: 2006-8-15
居住地: 江戸
投稿数: 4
 Re: 時代小説って何?
dan_naです。
私のたった1年の短い時代小説読書歴では何も言う資格はなさそうですが、ちょっと一言。。。

確かに時代小説と歴史小説という区分はあるのでしょうが、本を選ぶ時はそういう区分を意識した事はありません。ただ面白そうな本を選んでいるだけです。しかし、現に読んだ本を思い返して見ると、一般的に歴史小説に区分されるものがないことに気づかされます。楽しんで気楽に読めるかどうか、ということで選んだ時に漏れてしまう、というところあたりが歴史小説の文学性の高さなのかも知れないですね。(私が文学性に負けているってことになりますが・・・)

たとえば、佐伯泰英さんの「居眠り磐音江戸双紙」シリーズが単なる剣豪小説ではなく、磐音とおこんさんの壮大なラブロマンスでもあるように、一冊の本を一つのジャンルで括るのはなかなか難しいように思います。

時代小説SHOWでのジャンル分けを頼りに時代小説の世界に踏み行ってきながらこういう事を言うのもなんなんですが、最初は市井ものを読んできたつもりだったのですが、いつの間にやら剣豪小説に区分されるものを読むようになっているように、時代小説の妙はそのクロスオーバーするジャンルの妙なのかも知れない、と思う次第であります。
返信
ログイン
ユーザ名:

パスワード:


パスワード紛失

新規登録
amazonで検索
AD

Copyright © 1996-2010 時代小説SHOW

[お勧めリンク] FXフォーランドオンラインひまわり証券FXプライム品川近視クリニック錦糸眼科ETCカード外為どっとコム神奈川クリニック結婚相談所