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幻色江戸ごよみ
★★★★☆☆
![]() 装画:藤田新策 装幀:新潮社装幀室 解説:縄田一男 時代:「紅の玉」天保十四年 場所:新川、石原町、北森下町、高橋たもと、馬喰町、通町、根津 (新潮文庫・552円・98/09/01第1刷・330P) 購入日:98/08/28 読破日:98/08/30 |
♪これはまぎれもなく、“ミヤベ・ワールド”である。下町の人情と怪異を一カ月一話という形で綴る十二話。怖くて、切なくて、心温まる作品集だ。こよみとタイトルについているだけあって、江戸の四季折々が巧みに作中に取り込まれている。 宮部さんの時折使う修飾の表現が気に入っている。たとえば、「なんと面妖な話だ、蓼食う虫も好き好きとは言うけれど、お城のお堀から百貫目のなまずが浮かび上がって手招きしたって、あたしゃこれほど驚きゃしませんよと思っていることがうかがわれる」(「器量のぞみ」より)や「心に湯を注ぎこまれたような気がしてくる。その湯はときにはほんのり温かく、いい気持ちにさせてくれるが、また時には、少しばかり熱すぎて、五郎兵衛の心の奥に、痛いほど強くしみることがある。」(「庄助の夜着」より)、「心のなかからゆっくりと、甘酒がわきたつようにして、とろりとした笑いがこみあげてきた。」(「首吊り御本尊」より)といった具合だ。 物語●「鬼子母火」師走の夜に新川の酒問屋で起こった小火の原因は…。「紅の玉」天保の改革のせいで、一流の腕を持ちながら、貧困にあえぐ飾り職人がいた…。「春花秋燈」行灯にまつわる不思議な話とは…。「器量のぞみ」自他ともに認める醜女で大女に持ち込まれた縁談とは…。「庄助の夜着」庄助は古着屋で見つけた夜着をとても気にいっていた…。「まひごのしるべ」盆市で拾った迷子の首にかけられた迷子札の謎とは…。「だるま猫」火消しにあこがれた若い男がいた…。「小袖の手」娘がはじめて買ってきた小袖をみた母親は…。「首吊り御本尊」奉公が辛くて逃げ出した奉公人に大旦那がした話とは…。「神無月」毎年神無月が来るたびにする男たちの行動とは…。「侘助の花」それは看板屋がついた嘘から始まった…。「紙吹雪」質屋の女中は、屋根の上から雪を降らせることを夢見ていた…。 目次■第一話 鬼子母火|第二話 紅の玉|第三話 春花秋燈|第四話 器量のぞみ|第五話 庄助の夜着|第六話 まひごのしるべ|第七話 だるま猫|第八話 小袖の手|第九話 首吊り御本尊|第十話 神無月|第十一話 侘助の花|第十二話 紙吹雪|解説 縄田一男 |
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女剣
★★★★☆☆
![]() 装幀:神長文夫 舞台:架空の志津野藩、江戸深川仙台堀冬木町 (PHP研究所・1,571円・97/11/13第1刷・234P) 購入日:97/12/21 読破日:98/08/29 |
♪福島県や栃木県の那須で、大雨による大規模な災害が発生していたせいで、「五月雨の剣」の章で描かれる風景が増幅され、とてもインパクトが強い読了感を残した。今まで時代小説で描かれる災害シーンは、時代がかけ離れているためかピンとこないことが多かったのだが…。 北国の架空の志津野藩が、藤沢周平さんの海坂藩のように、作品を読んでいると目の間に広がってくる感じがする。山や川や野があり、人がいて四季の移り変わりが端正に描かれているせいだろう。 作者自身が剣道四段ということもあり、剣での立合いのシーンが圧巻であり、また、一刀流や天道流、鞍馬流、馬庭念流など剣術の流派がわかりやすかった。やはり、藤沢さんの後はこの人に期待したいという思いを新たにした。
◆主な登場人物 物語●江戸で生まれ育った里絵は、雪深い志津野で、誠四郎の妻として、藩の剣術指南役市成家の嫁として、幼少から剣の道に携わるものとして、生活をはじめた…。彼女の心と剣の成長を、静かに移ろい行く豊かな自然とともに描く。 目次■春嵐/鬼面/五月雨の剣/秘太刀浮雲/江戸の刺客/雪のぬくもり |
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室の梅 おろく医者覚え帖
★★★★
![]() 装画:中一弥 装幀:丸尾靖子 時代:文化七年 舞台:八丁堀地蔵橋、大川端、芝の中門前町 (講談社・1,600円・98/08/20第1刷・232P) 購入日:98/02/22 読破日:98/08/26 |
♪「おろく」は「南無阿弥陀仏」の六字から来ているが、市井のものは死人の意に使っている。主人公の美馬正哲は奉行所検屍役で、「おろく医者」と呼ばれて、毎日のように死人と格闘していた。しかも図体がでかく容貌魁偉で自分の親から、半鐘泥棒と言われるほどだった。その正哲が一回り年下で細っこい体をした産婆のお杏と結婚していた。人の死と生に立ち向かう夫婦の姿が対照的であり象徴的である。 日本で初めて麻酔を使った手術に成功した、紀州の医師華岡青洲のもとへ、正哲が留学し、その間江戸に残されたお杏が、正哲の書き残した「おろく早見帖」をもとに事件解決に乗り出す話が秀逸だ。 今回は、主人公のひとりが産婆という設定が面白い。宇江佐さんは、作品数は多くないがどの作品もエンターテインメントとしてのクォリティが高く、オリジナリティがあり、いろいろなタイプの捕物ヒーロー創出にチャレンジする姿勢がいい。
◆主な登場人物 物語●「おろく医者」大川端に娘の土左衛門が上がったが、死因は首吊りらしい…。「おろく早見帖」正哲は紀伊国平山村に住む華岡青洲のところへ、教えを請うために出かけた。後に残されたお杏の手元には“おろく早見帖”が残された…。「山くじら」紀伊から戻って来た正哲は、紀伊での質素な食事の反動で、“山くじら”と記した看板を出しているももんじ屋通いにはまっていた…。「室の梅」茅場町の植木市でお杏は、室で育てた小さな梅の木の鉢を買った…。 目次■おろく医者|おろく早見帖|山くじら|室の梅 |
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幕末袖がらみ
★★★★
![]() 装画:大友克洋 装幀:木本百子 時代:「唐竹割り」安政六年、「笑い鐔」安政五年、「槍忘れ」文化十二年、「武州足立郡六道橋」慶応四年、「私談 流山始末」慶応四年、「伝吉殺し」安政六年、「貧窮豆腐」元治元年 舞台:「唐竹割り」横浜本町三丁目、「笑い鐔」甲州、「奸賊絵師」京、「槍忘れ」大田原、「武州足立郡六道橋」足立郡、「私談 流山始末」流山、「伝吉殺し」麻布本村町、「貧窮豆腐」浅草蔵前 (文藝春秋・1,714円・98/07/30第1刷・283P) 購入日:98/08/20 読破日:98/08/23 |
♪どこかで見たようなカバーの絵だなあ、と思っていたら、「Akira」の大友さんだった。時代小説作品の表紙の装画を担当するのは初めてではないだろうか? あとがきを読んで、ハタと思った。幕末というと歴史の転換期で、倒幕だ、佐幕だといって、日本中を二分し、上は天皇から下は庶民まで大混乱に陥っていたのだと思っていたが、実は庶民のほとんどはそんな動乱とは無関係にいたのだ。そして中には、あまり自覚のないまま幕末に放り込まれた人々もいたのである。この作品集は、時代を動かした人物の周辺にいて無名のままに過ごした人々に焦点をあてて描いている。もうひとつの幕末が鮮やかに浮かび上がらせている。 物語●「唐竹割り」初の異人斬りを果たした攘夷浪人。「笑い鐔」刀を抜けば必ず笑う“竹居の吃安”。「奸賊絵師」鹿島神陰流の絵師・岡田次郎光信。「槍忘れ」小藩の悲哀。詰め腹を切らされた奴。「武州足立郡六道橋」土方歳三が命じた足立郡の殺人。「私談 流山始末」近藤勇を捕縛した男の苦悩。「伝吉殺し」江戸中の口入れ屋から狙われた英国通辞・伝吉。「貧窮豆腐」豆腐屋が語る幕末毒婦伝。 目次■唐竹割り|笑い鐔|奸賊絵師|槍忘れ|武州足立郡六道橋|私談 流山始末|伝吉殺し|貧窮豆腐|あとがき |
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浄瑠璃坂の仇討ち
★★★★☆☆
![]() 装画:倉橋三郎 装丁:倉橋三郎 時代:寛文八年(1668) 場所:宇都宮、芳賀郡深沢村、信州諏訪、品川、鎌倉河岸、鷹匠町、浅草門跡、市谷田町 (文藝春秋・2,381円・98/07/25第1刷・493P) 購入日:98/08/20 読破日:98/08/22 |
♪忠臣蔵の赤穂浪士たちが討入りの際に参考にしたのが、その30年前に起こった「浄瑠璃坂の仇討ち」である。市谷浄瑠璃坂の奥平隼人の屋敷に、奥平源八に率いられた四十数名が討入った事件だ。この事件はスケールもあり新鮮な題材なのだが、敵も味方も殿様も奥平姓ばかりで描きにくいのか、小説になることは少なかった。藩主の死から始まる対立、両陣営の血で血を洗う抗争、そしてクライマックスへ。作者は江戸前期を代表する集団討入り劇を描くばかりでなく、源八方に属する剣士生駒尚平を主人公に据え、彼の青春をも描いている。奥山流の剣技の研鑚、許婚との別れ、敵味方に分かれてしまった友への愛と憎しみ…。敵討ち小説と青春小説の2冊分の面白さが満喫できる読み味の好い時代小説だ。 物語●宇都宮城主の六十日忌に家臣同士、両者抜刀の刃傷が起きた。重臣奥平内蔵丞は自害、息子の源八は改易され、一方の当事者で重臣の奥平隼人は減封のみであった。この不公平な裁定をめぐり、藩を二分され、一族郎党巻き込んだ一大事件へと発展していく…。 目次■一章 盟約(ちかい)/二章 凍る湖(うみ)/三章 半夏生(はんげしょう)/四章 堕落/五章 湯女/六章 浄瑠璃坂/七章 洪水/八章 反撃/九章 本懐 |
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江戸ふしぎ草子
★★★★☆☆
![]() 装画:鈴木春信「清水の舞台より飛ぶ女」 装丁:ミルキィ・イソベ (河出書房新社・1,600円・95/08/25第1刷・97/09/10第3刷・225P) 購入日:98/08/05 読破日:98/08/17 |
♪第四回斎藤緑雨賞受賞のファンタスティック時代短編集。 毎日寝る前に一話一話読んでいきたいような物語ばかり。「結び人」や「甘酒売り」「富突」「枕売り」などしみじみとした気分が味わえる作品が多い。 物語●「結び人」いかなるものでも自在に結ぶ名人が吉原にいた…。「煙芸師」山東京伝も魅せられたタバコの煙の芸を見せる不思議な男がいた…。「神足歩行術」飛ぶような速さで歩く術をもった男がいた…。「鋳物師」長崎に珍しい女の鋳物師がいた…。「女画家」絵と旅に生きた女がいた…。「深川の悪婆」旗本屋敷に入り込み、財産を乗っ取ろうとした婆さんがいた…。「蝿とり武士」剣術の名人の意外な特技とは…。「穴掘りの意地」来る日も来る日も夕方に穴を掘り、朝になると埋めている老人がいた…。「経師屋」伊勢参りの江戸の職人が一人の娘を助けたことから起こる不思議な出来事とは…。「花火師」師匠から破門された花火師に持ち込まれた仕事とは…。「松前風流女」蝦夷へ向かう北前船で気軽な一人旅を楽しむ女がいた…。「甘酒売り」かつて全盛を誇った太夫が甘酒屋を出した…。「的人」自分の胸を的に鉄砲を撃たせる曲芸を見せる男がいた…。「富突」遊女が客の忘れた一枚の富くじを拾ったことから彼女の人生が大きく変わっていく…。「生人形師」雨の夜、人形師が一人の尼を泊める…。「おまじない横丁」日暮里に、おまじない横丁と呼ばれる路地があった…。「仕組屋」売れない狂言作者が世間があっと言うような仕組つくりを頼まれた…。「将棋指し」将棋に夢中になった大名の姫君がいた…。「俳諧飛脚」江戸と地方を往復して俳人たちの手紙や作品を運ぶ人たちがいた…。「枕売り」大きな箱にいろいろな枕を詰めてうりにくる行商人がいた…。 目次■結び人|煙芸師|神足歩行術|鋳物師|女画家|深川の悪婆|蝿とり武士|穴掘りの意地|経師屋|花火師|松前風流女|甘酒売り|的人|富突|生人形師|おまじない横丁|仕組屋|将棋指し|俳諧飛脚|枕売り |
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司法卿 江藤新平
★★★☆☆☆
![]() カバー絵:歌川広重(三代目)「東京開化名所」 カバー:田村義也 解説:古川薫 時代:明治六年四月 場所:京都、東京麹町 (文春文庫・438円・98/04/10第1刷・300P) 購入日:98/08/02 読破日:98/08/16 |
♪解説の古川薫さんも書いているように、半ばまで読んでいくと肩透かしを食らわされた感じを抱いてしまう。タイトルにある江藤新平がほとんど登場せず、佐賀の乱にもプロローグで触れられるだけで、なかなか描かれないのである。 ところがやがてこれが、性急な印象であることに気づかされる。われわれは薩長勢力の力と政権抗争の凄さをまざまざと見せつけられるのである。 佐木隆三さんといえば、「復讐するは我にあり」で直木賞を受賞し、裁判もの、実録ものの第一人者であるが、この作品でもその調査力を遺憾なく発揮している。
◆主な登場人物 物語●明治七年、初代司法卿の江藤新平は「佐賀の乱」の首謀者として、佐賀裁判所で死刑判決を受け、即日、斬首の上、梟首された…。 彼はなぜ栄光の座を捨てて下野したのか。司法権の独立に辣腕をふるって、法の正義を貫いた江藤は、薩長勢力と対立して悲劇的な最後を迎える。事件の真相を裁判資料を元に明らかにしていく…。 目次■プロローグ/第一部 転籍拒否/第二部 違令違式/第三部 参座裁判/エピローグ/参考文献/あとがき/解説 古川薫 |
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風雪の檻 獄医 立花登手控え(2)
★★★★ [再読]
![]() カバー装画:小沢良吉 解説:武蔵野次郎 場所:小伝馬町、門前仲町、両国橋 (講談社文庫・466円・83/11/15第1刷・97/02/07第30刷・273P) 購入日:98/07/20 読破日:98/08/15 |
♪このシリーズの楽しさのひとつに、主人公立花登と彼の叔父一家との関係、とくに従妹おちえとの距離感の変化がある。また、杓子定規な女として描かれる叔母の存在がピリッと利いている。 今シリーズでは、柔術の鴨井道場の柔仲間の新谷弥助の失踪とその動向が背景に描かれていて、連作形式ながら連続性を生んでいる。ちょうど「用心棒日月抄」で赤穂浪士の討入りが描かれていたように。
◆主な登場人物 物語●「老賊」登は年老いた無宿人の囚人・捨吉に昔棄てた娘の行方を探してくれるように懇願する…。「幻の女」遠島になる男は、行方知れずになった幼馴染の娘を思い続けていたが…。「押し込み」登は、おしんの働く水茶屋で不穏な三人組を見かけた…。「化粧する女」登は、与力の高瀬の常軌を逸した取調べに不審を抱いた…。「処刑の日」妾殺しで入牢した大津屋の死罪を言い渡される日が近づいた…。 目次■老賊|幻の女|押し込み|化粧する女|処刑の日|解説 武蔵野次郎/年譜 |
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江戸三尺の空
★★★★☆☆
![]() カバー装画:百鬼丸 カバー装幀:新潮社装幀室 解説:末國善己 場所:小伝馬町、神田紺屋町、堀留二丁目、橋本町 (新潮文庫・705円・98/07/01第1刷・580P) 購入日:98/07/18 読破日:98/08/14 |
♪この夏の収穫のひとつに、多岐川恭さんの時代小説に出合ったことが上げられる。もちろん、以前からその名前は知っていたが、何となく敬遠していた作家の一人であった。「岡っ引無宿」(光文社文庫)を読んでなかなかやるじゃん、て思い、百鬼丸さんのカバーイラストが気に入って入手していた本書を読む。 市中引き廻しの途上で縄抜けした囚人と、それを追う牢屋同心の息子との手に汗握る対決で、600ページ近いボリュームを一気に読ませてくれた。登場人物がいずれも悪い奴でしかも個性的なのがいい。池波正太郎さんの盗賊ものにも通じる、上質のピカレスク時代小説だ。 主人公の音次とおりゅうが、「俺たちに明日はない」のボニー&クライドのようで、悪い奴なのだが憎めず、泣かせる。 '88年に大陸文庫として刊行されて以来、長く入手困難だったこの作品を刊行した、新潮社の文庫担当者に拍手を贈りたい。巻末の末國善己さんの解説もわかりやすく、過不足なく適切だ。「ゆっくり雨太郎」は“うたろう”と読むことも知る。
◆主な登場人物 物語●押し込み、殺しで獄門となるはずだった囚人・音次が、市中引き廻しの最中に、なぜか縄が解けて脱走する。縄を改めた牢屋同心は切腹し、その息子・角之助は、父の仇を討つために、岡っ引きの子分となって音次の行方を追う…。 目次■なし |
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物書同心居眠り紋蔵(二) 隼小僧異聞
★★★☆☆☆
![]() 装画:村上豊 装丁:熊谷博人 場所:蔵前、両国広小路、小伝馬町、本所緑町 (講談社・1,700円・97/02/10第1刷・305P) 購入日:98/04/10 読破日:98/08/10 |
♪NHK金曜時代劇「物書同心いねむり紋蔵」の原作。アクション刑事ドラマの印象が強い舘ひろしが、勤務中でも所かまわず居眠りをしてしまう奇病をもつ、冴えない中年同心を好演。ドラマが思いのほか面白くて、原作の第二弾を読んだ。 意外というかやはりというべきか、2作目でも主人公・紋蔵は剣の達人の割にパッとせず、中年の悲哀を漂わせている。このシリーズは捕物帳というよりは、江戸サラリーマン小説という感じだ。職場や家族間の人間模様が面白い。 また、佐藤雅美さんは、経済時代小説を多く書いているだけに、作品の中で当時の金銭感覚を上手に描いているところも、読みどころのひとつだ。
◆主な登場人物 物語●「落ちた玉いくつゥ」“お玉落ち”(俸禄を受け取りに蔵前の札差を訪れた紋蔵がそこで見たものは…。「沢瀉文様べっ甲蒔絵櫛」牢屋見廻り役の松原新三郎が失態を犯し、その顛末がご番所内を吹き抜けた…。「紋蔵の初手柄」何者とも知れぬ男が五年も小伝馬町の牢に暮らしていた…。「罪作り」八官屋の捨吉の紹介で、陸奥板倉家の家臣が紋蔵を訪ねてきた…。「積善の家」紋蔵は、深川の材木問屋飛騨屋に、深川の高級料亭・平清で接待を受けた…。「隼小僧異聞」紋蔵は、義父のところで、十両あまりを店から盗んだ疑いをかけられて暇を取らされた元手代文吉の話を聞いた…。「島帰り」紋蔵のもとに、かつて紋蔵の父に世話になったという島帰りの男が訪ねてきた…。「女心と秋の空」藤木家出入りの畳職人の娘お喜代が妾奉公に出ることになった…。 目次■落ちた玉いくつゥ|沢瀉文様べっ甲蒔絵櫛|紋蔵の初手柄|罪作り|積善の家|隼小僧異聞|島帰り|女心と秋の空 |
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間違いだらけの時代劇
[考証]
![]() カバーデザイン:広瀬郁 カバーフォーマット:粟津潔 (河出文庫・460円・89/07/04第1刷・96/04/10第14刷・221P) 購入日:98/07/31 読破日:98/08/08 |
♪時代考証に気を取られすぎると、テレビの時代劇がつまらなくなるようで、この手の本はあまり関心を持っていなかったのだが、たまたま立ち読みしたら、抜身の刀の正しい持ち方とか町方同心の巻き羽織の紋とか、時代小説を読む際にも役立つ話が多かった。 ただ、1989年に書かれた本ということで、槍玉に上がっている(引き合いに出されている)時代劇が、その当時のもので、見ていないのが残念。NHK大河ドラマと、杉良太郎さんの出演しているものは、時代考証が比較的ちゃんとしているらしい。 読みどころ●時代が進むにつれて、古いことを知る人が少なくなり、テレビや映画の時代劇の乱れが目立つようになってきた。時代劇は、ちょんまげを頭にのせ、刀を腰に帯びた現代劇であってはならない。昔の姿に近づけば近づくほど、面白くなっていくもの。本書は、時代考証の初歩と面白さをやさしく解説します。 目次■1 様にならない作法のお笑い/2 講釈師、見てきたような嘘を言い/3 テレビの花形、捕物帖の取り違い/4 知らぬが仏、小道具、大道具の間違い/5 いざ戦場に! 便利にできている衣装・武具/これはビックリ! 常識破る珍兵器/あとがき |
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裏表忠臣蔵(うらおもてちゅうしんぐら)
★★★★ [再読]
![]() カバー:原田維夫 解説:扇田昭彦 時代:元禄十四年(1701)三月十四日 場所:江戸城、赤穂、両国矢之倉米沢町、日比谷桜田、京、本所一ツ目 (文春文庫・419円・98/08/10第1刷・221P) 購入日:98/08/05 読破日:98/08/08 |
♪NHK大河ドラマ「元禄繚乱」のおかげで、新潮文庫から刊行され絶版になっていた、本書が文春文庫より装いも新たに発行された。半永久的に読めないと諦めていた作品が読めるようになることはありがたい。最近では、文庫本は大量に流通させるものという認識が出版社側にあるようで、売れない本は、再版されにくくなっている。そのため、発売時に買い逃すと、後で欲しいと思っても手に入れることが難しい。 小林信彦さんは、時代小説にハマる以前、とくに学生のころ、とても影響を受けた作家で、この人に、推理小説の読み方やパロディーの味わい方、喜劇(マルクス兄弟など)の見方を教わったようなもの。この作品も発売当時、パロディーという位置付けで読んでいた。目次の「ビッグ・シティ、ブライト・ライツ」は、その当時流行ったジェイ・マキナニーという青春小説(翻訳は高橋源一郎さん)のパクリである。 グレゴール・ザムザに起こったことが吉良上野介義央にも起こった。ザムザの変身譚を信じられぬ人は、この物語も信じられないだろう。 という始まりは、普通の時代小説家には絶対書けないものだが、この作品のテーマを見事に象徴している。元朝日新聞の記者で、演劇評論家の扇田さんが、解説を務めているが興味深かった。
◆主な登場人物 物語●浅野内匠頭が、江戸城中で吉良上野介に斬りかけたことから始まった、浅野事件。この事件は、西国の小さな町赤穂に大きな衝撃をもたらしたが、両国米沢町の菓子商竹屋の息子・源太郎にも影響を与えることになる…。 京へ菓子の道の修業に出ることになっていた源太郎に、竹屋の出入りの上杉家江戸家老・色部又四郎から赤穂の様子を探るように命じられたのだ。 目次■序章 最初の事件/第一章 小さな町の大きな衝撃/第二章 吉良荘/第三章 商人失格/第四章 鏡の国/第五章 東と西/第六章 ビッグ・シティ、ブライト・ライツ/第七章 存在の耐えられない軽さ/第八章 江戸の向う側/第九章 追いつめられて/第十章 揺れる男/第十一章 幕間狂言/第十二章 虐殺 またはスラップスティック/第十三章 事件の始末/終章 ことの次第/作者ノート/文春文庫のためのあとがき/解説 扇田昭彦 |
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帝都奇譚 紅蓮の密偵
★★★☆☆☆
![]() 写真協力:憲政記念館、毎日新聞社 装幀:中原達治 時代:明治二十四年一月 場所:石川島、元数奇屋町、青山北町、相生町、三ノ輪町、内幸町、銀座 (ノン・ノベル・829円・98/07/20第1刷・264P) 購入日:98/07/31 読破日:98/08/05 |
♪宮武外骨と聞くと、数年前にちょっとしたブームがあったので、名前だけは知っていた。トマソンの赤瀬川原平さんとかが仕掛け人になっていたので、変な文化人というイメージをもっていたが、探偵役としては、魅力的なキャラクターだ。 維新の元勲を除くと、明治の人は、よく知らないだけに、新鮮。しかも、当時の電気や保険に関する事情もわかり、興味深い。作家の井沢元彦さんが絶賛した理由もわかる気がする。
◆主な登場人物
宮武外骨:「頓智協会雑誌」の発行人
物語●明治二十四年、第一回帝国議会開会の前日、帝国議事堂が焼失した。事件の原因は? 目次■プロローグ 帝国議事堂焼失せり/一章 外骨出獄せり/二章 外骨始動せり/三章 外骨号泣せり/四章 外骨苦悶せり/五章 外骨憤慨せり/六章 外骨覚醒せり/七章 外骨遭遇せり/八章 外骨解決せり/エピローグ 天に代わって誅せり |
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峠越え
★★★★☆
![]() 装画:森藤博 装丁:菊地信義 撮影:相田昭 時代:文政ごろか 場所:日光に近い北関東の小藩 (角川書店・1,650円・96/06/30第1刷・341P) 購入日:98/04/07 読破日:98/08/02 |
♪日光に近い北関東の架空の小藩に忍び寄る御家騒動の影。そして、その渦中に巻き込まれる若き藩士。何やら、藤沢周平さんの世界を想起させ、ワクワクしてくるストーリー展開だ。 まして、作者の羽太さんは、「本多の狐」(講談社文庫)で時代小説大賞を受賞している。面白くないはずがない。 主人公の榎戸与一郎は、一本気で単純なところもみられるが爽快感あふれるキャラクターで、翻弄されていくさまを自ら独楽にたとえて嘆くところがいい。
◆主な登場人物 物語●御厩方に勤める榎戸与一郎は、藩の総試合の優勝剣士で、若い者の憧れの的だった。そのため、他家からの養子として新しく藩主につき、初めて国入りする石見守を国境まで出迎えるという動きに巻き込まれようとしていた…。 目次■迷い蝶/隠密斬り/御目見得/峠越え/あとがき |
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妖怪犯科帳 蛮社の獄 鳥居甲斐守忠耀事件控
★★★☆☆
![]() カバーイラスト:宇野亜喜良 カバーデザイン:宇野亜喜良 解説:土山文子 時代:天保九年師走 場所:下谷広小路、北新堀町、東浦賀、麹町貝坂、海辺大工町、馬喰町三丁目 (徳間文庫・552円・98/02/15第1刷・346P) 購入日:98/02/15 読破日:98/08/01 |
♪江戸時代きってのヒール(悪役)鳥居甲斐守忠耀(「耀」+「甲斐」こと、妖怪と忌み嫌われていた)を主人公に描いた異色捕物帖シリーズの第2弾。今回は蛮社の獄を背景に、干鰯問屋一家惨殺の裏を探索する。 普通は弾圧される側から描かれることが多いので、高野長英や渡辺崋山の描き方が画一的な感じがして、ちょっと不満だったのだが…。このあたりをどう料理するかが作者の腕の見せ所か。 鳥居の腰巾着の悪漢・本庄茂平次(「天保図録」(松本清張著・朝日文庫))や、「サムライの海」(白石一郎著・文春文庫)の主人公の父・高島秋帆が出てこないのが残念。そのかわりというか、幕末の三大剣豪の一人である斎藤弥九郎が登場する。
◆主な登場人物 物語●師走二十八日、下谷広小路で、浦賀奉行の与力が殺害された。その3日後の元日の朝、北新堀町の干鰯〆粕魚油問屋「秋田屋」に、盗賊が入り、三十人余りが殺害され二千両以上が奪われた…。 目次■序章/浦賀奉行/高野長英/花井虎一/沿海巡視/弾圧前夜/渡辺崋山/蛮社の獄/妖怪旋風/一件落着/松崎慊堂/あとがき |