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神無き月の十番目の夜
★★★★☆☆
![]() 装幀:ミルキィ・イソベ 時代:慶長七年(1602)年 舞台:常陸・小生瀬。 (河出書房新社・1800円・97/6/25第1刷、97/10/3第3刷・339P) 購入日:97/10/29 読破日:97/12/30 |
♪「雷電本紀」の作者の新作ということで、とても気になっていたのだが、帯の“大虐殺”という文字や農村が舞台ということで、何やら悲惨な物語のような感じがして二の足を踏んでいた作品を遂に読む。この本を推薦してくれたひょこひょこさんのおかげだ。(感謝しています。) 名作「雷電本紀」にも通じる、作者の視点の確かさや、清冽な語り口から、当初懸念していた題材の暗さが気にならない物語だった。 関ケ原の戦い直後という時代背景のもと、戦の経験のある大藤嘉衛門や月居(つきおれ)騎馬衆の石橋藤九郎と、辰蔵ら戦未経験の小生瀬の若衆たちの対比が面白かった。 月居騎馬衆の馬の育成をする厩頭・袋田の藤兵衛が、「月の満ち欠けと日の運行による秘伝の算術を駆使して」馬を産み出すという個所が、イタリアの馬産家フェデリコ・テシオを彷彿させて面白い。また、月居騎馬衆が馬への負担をできるだけ減らし、いざという場面に備えるという考え方も、競馬ファン、馬好きをうならせてしまう。 物語●奥州との境に近い常陸の山里、小生瀬(こなませ)の地へ急派された比藤村(ころふじむら)の旧騎馬衆の大藤嘉衛門は、悪い夢を見ているようだった。強烈な血の臭い、人影の無い宿場――いったい、この村に何が起こったのか…。関ケ原の戦いの記憶も新しい、慶長七年十月、古文書に数行記されたまま、歴史から葬り去られた事件の真実とは? 目次■序章/第一章/第二章/第三章 |
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ジャガーになった男
★★★★☆
![]() カバーイラスト:ひろき真冬 カバーデザイン:シー・アイ 時代:慶長十八年(1613)年 舞台:仙台、オランダ、セビーリャ、ピルーほか。 (集英社文庫・648円・97/11/25第1刷・359P) 購入日:97/11/23 読破日:97/12/28 |
♪うーん、何ともスケールの大きな時代小説だ。17世紀の初めの日本、スペイン、オランダ、ペルーを舞台にしている。そのため、レコンキスタ(イスラム教徒を相手にした国土再征服戦争)、オランダ独立戦争、リシュリュー枢機卿など、世界史ネタが次々登場して面白かった。 来年は寅年ということではないが、この作品では、寅とジャガーが登場し、何やらタイムリーな感じがする。その主人公寅吉と「ドン・キホーテ」のようなイダルゴのベニトとの友情や、従者ぺぺとのからみなど、ユーモアもたっぷりあり楽しませてくれる。 先ごろ話題になった、トゥパク・アマルやルイ十三世の側近のガスコーニュ貴族ジャン・ドゥ・トレヴィルなども登場する。(「見よや、われらガスコン青年隊♭」って、昔聞いた、モンテ・クリスト伯のラジオドラマの中で歌われていた、ガスコンは、ガスコーニュのことだったのだ!) 支倉使節団といえば、2年3ヵ月にもわたって、スペインに滞在したということであるが、その実態はあまり記録に残されていないだけに、時代小説の題材として、今後もいろいろ面白い作品が生まれるかもしれない。こういう分野の書き手が少ないだけに、次作の「傭兵ピエール」もぜひ読みたい。 物語●伊達藩士・斉藤小兵太寅吉は奥州一の剣士。許婚の米を捨て、冒険を求めて、支倉常長遣欧使節に加わった。着いたイスパニアはすでに、無敵艦隊もやぶれ、斜陽の国になっていた。一人のイダルゴ(戦士)のベニト・レドンデスと意気投合し、その妹エレナと恋仲になり、ともに戦場に赴くために、帰国する使節団と訣別する…。 目次■グラナダ国王サンチョ十五世陛下に捧げる献辞/プロローグ―寅吉独白―/一、武士とイダルゴ/二、男の夢、女の夢/三、黄金郷/エピローグ―寅吉独白―/解説 井家上隆幸 |
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忍者からす
★★★☆☆
![]() カバー装画:鴇田幹 時代:元中三年。嘉吉元年。天文十三年。元亀元年。慶長八年。天保七年 舞台:熊野・太地。鹿島ほか。 (新潮文庫・476円・97/12/1第1刷・349P) 購入日:97/12/6 読破日:97/12/25 |
♪柴田さんの忍者ものというと、快作「赤い影法師」があげられる。本作にもチラッと「影」の名が登場するのが嬉しい。こちらは、忍びの血を受け継ぐ「鴉」一族の伝奇を連作形式で綴るスタイルをとっている。
一休さんの巻が面白い。蜷川新左衛門が登場し、昔のTVアニメ(アニメでは蜷川新右衛門だったような気がする)を思い出し懐かしかった。また、蜀山人(何となく文化人臭くて嫌いな人なのだが)と怪盗・自来也との関わりが描かれる巻も、着想が面白かった。 とにかく、「鴉」の血が歴史を変えるというテーマで、どのように歴史と関わったかが見もの。ただし、時代が進むにつれて、その血を受け継ぐものが卑小化してしまうのは、血の鈍化なのか、残念。 物語●類稀な秘術を備えた異形の容貌の忍者「鴉」。貴人や天才の血を加え、脈々と受け継がれていく「鴉」の血。時代の変わり目に、事件の背景に、著名人の後ろに、すべて「鴉」の血に塗られた狂気の技があった。室町南北朝から江戸末期まで、五世紀にわたる天才忍者の暗躍を描く伝奇小説。 目次■忍者からす/一休禅師/山中鹿之介/塚原卜伝/丸目蔵人/由比正雪/幡随院長兵衛/蜀山人/国定忠治/解説 清原康正 |
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中山道 算学奇談
★★★☆☆☆
![]() 装幀:菊地信義 装画:「千社札 粋のグラフィズム」(マリア書房刊) 時代:文政五(1822)年 舞台:板橋宿 (幻冬舎・1500円・98/1/10第1刷・227P) 購入日:97/12/21 読破日:97/12/22 |
♪今年、「算学奇人伝」(TBSブリタニカ)で開高健賞受賞した後の書き下ろし長編第一作。装幀は、「鮮魚師(なまし)」(読売新聞社刊)と同じ菊地さん。表紙を見た瞬間、衝動的に購入。よく見ると出版社が、また変わっていた。 本作品の主人公加藤曳尾庵は、二十年間にわたって綴った日記・随筆集の「我衣」(ちょうど根岸鎮衛の「耳嚢」のようなものか)の作者で実在の人物。そのほか、勝小吉の兄、男谷彦四郎や渡辺崋山らも登場する。 算学を駆使した謎解きゲームが面白いが、もう少し長いとさらにいいのだが。 物語●町医者で寺子屋の師匠をつとめる加藤曳尾庵(かとうえびあん)は、ある日、手習子たちに親指から小指まで、数を数えて行き1000番目に当たる指はどの指かという問題を出題した。二十人の子どもたちが指を折って数を数えている中で、八歳のお春がいち早く答を見つけた。やがて曳尾庵は、この天才少女お春に掛け軸の暗号の謎を解かせるが…。 目次■なし |
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江戸風狂伝
★★★★
![]() デザイン:蓬田やすひろ 時代:「伊達くらべ」天和元年、、「憚りながら日本一」宝暦十一年、「爆発」安永八年、「やがて哀しき」天明三年、「臆病者」天保十三年、「いのちがけ」宝暦八年 舞台:「伊達くらべ」上野広小路、「あやまち」京・真葛ヶ原、「憚りながら日本一」日本橋通町、「爆発」神田橋本町、「やがて哀しき」吉原、「臆病者」新和泉町、「いのちがけ」日本橋榑正町(くれまさちょう)ほか。 (中央公論社・1400円・97/6/30第1刷、97/9/20第2刷・235P) 購入日:97/10/3 読破日:97/12/20 |
♪1997年度女流文学賞受賞作。平賀源内、歌川国芳、池大雅、馬場文耕ら、お上ににらまれ、世に疎まれ、それでも己の意地とプライド、気質に沿って生きたあっぱれな粋人たちの行状を描く短編集。 郡上藩の農民たちと馬場文耕との交流を描いた「いのちがけ」が秀逸。江戸の芸道もの・市井ものを描いて、今いちばん脂がのった活躍をしている北原さんの真骨頂発揮といったところか。 また、遊女との心中で、四千石を棄てた藤枝外記のことも描かれていて興味深かった。山本周五郎さんの「栄花物語」を思い出した。 物語●「伊達くらべ」御用商人石川屋六兵衛は、粋と伊達を追求していたが、その上を行くのが彼の妻およしだった…。「あやまち」池大雅と彼の妻の破門した弟子への愛情を描く…。「憚りながら日本一」材木問屋和泉屋甚助は、自分の考案した太申染を流行させようと身銭をきるが…。「爆発」幽霊がでる新居に住む平賀源内を知人たちが心配して、しきりに引越しをすすめるが…。「やがて哀しき」四千石の旗本藤枝外記は、蔦屋の細見本でかつて通いつめていた吉原の花魁の新造・綾衣が披露目をすませて見世へ出るようになったのを知った…。「臆病者」歌川国芳は改革のお触れを恐れて、世話になった御用商人の依頼を断ったが…。「いのちがけ」馬場文耕は、七日間のつづきものとして、新作の講釈をすることになった…。 目次■伊達くらべ|あやまち|憚りながら日本一|爆発|やがて哀しき|臆病者|いのちがけ |
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新撰組
★★★☆
![]() デザイン:菊地信義 時代:安政五年 舞台:浅草お歯黒溝、館山、小梅村、京・二条城側、比叡山中、桜井村、黒谷、三条小橋ほか。 (講談社大衆文学館・各816円・各95/3/17第1刷・上428P、下418P) 購入日:97/3/21 読破日:97/12/14 |
♪通勤時に読みはじめてから読了まで1ヵ月かかった。講演で向井敏さんが、昔の大衆小説の文体は読みにくいというようなことを話しておられた。本書を読んで痛感した。リズムになかなか乗れず、ページを繰るスピードがでないのだ。 作者の白井さんは、解説によると「大衆文学」の名付け親らしい。文体はともかく、ストーリー展開の奔放さと、剣ではなく独楽試合での解決がすべてという着想の面白さはユニークだ。作品の書かれた同時代に読んでいたら、数倍熱狂できたであろう。 新撰組(選ではなく撰を使ったのは、当時どちらの字も同じくらいに使われたことと、字のもつイメージからつけたらしい)とタイトルを付けながら、近藤勇や土方歳三らが主でないのが画期的だ。 物語●但馬流独楽師・織之助と金門流名人・紋兵衛が、芸の意地と美女をかけて、秘術の限りを尽くして対決する独楽試合の勝負の行方は? 幕末の逆巻く怒涛の中をたくましく生き抜く若者の数奇な運命を描く大長編。 目次■名人長屋の独楽作り甕八/樹上の猿、樹下の侍/鎌石策之進の来意/懸想された女の犠牲談/井伊大老牛角の建白書/近江屋お蝶の紅涙/紋兵衛と織之助対面/烈火山上国危うし/独楽作りの苦心/晴れた勝負の朝は来た/時刻太鼓に売った両独楽/美人駕籠と斬込隊/江戸にもあった天誅組/平和境小梅村の波乱ごと/白魚祭は嬉し江戸帰参/お香代捜しの織之助/芸道は死よりも強し/宿命肉独楽の予言/常盤御門に月が出た/東海道五十三次の恋旅/京の伏見流潤吉の屋敷/独楽も奇遇人も奇遇/恋の打明けいずれが早い/闇中に打つ十八番の曲投げ/精進つくした京独楽(以上上巻)|但馬流か伏見流か/転げ落ちた刹那/櫛挽小屋にゆらぐ灯影/二人の不幸者と一人の幸福者/新徴組二百三十三人京へ/比叡山中の他流試合/霧の中にひびく捕手太鼓/鳩より得たる物/天に向かって生きる願い/島原遊郭のおもちゃ猫/近江屋お蝶の時勢のことば/桜井畷手のなぐり込み/変化したこの人生/新撰組の名が生まれた/近藤勇と本願寺の大砲/下鴨明神境内に剣のひびき/新撰組に斬りこむ男/お香代のありか訪ねて/尼寺に花は吹雪く/この世に咲くお香代/男性婆さん東条ちよ女/東西南北縁決め独楽/朗々とうたう謡曲蝉丸/巻末エッセイ 白石一郎/人と作品 木村行伸(以上下巻) |
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銀簪の翳り
★★★★☆☆
![]() 装画:畑農照雄 装丁:藤村誠 時代:文政六年(1823)頃 舞台:上野山下、本町三丁目ほか。 (読売新聞社・1700円・97/10/10第1刷・404P) 購入日:97/10/21 読破日:97/12/13 |
♪帯の「江戸の検屍官が走る!」のコピーに惹かれて購入。時代小説でこれほど、検屍が細かい作品は初めてだ。「無冤録述」という明和五年に発行された、検屍のバイブルが本作品で重要なキーになっている。 著者略歴によると、川田さんは、名古屋大学医学部卒で、病院勤務医だそうだ。そんなわけで、検屍シーンはディテールまで描かれていて面白い。 主人公の彦太郎の妻、お園、検屍好きの医者玄海、検屍風景を写生する美人絵師お月などの登場人物もきっちり描かれていて作品のクオリティも高い。 今度は、パトリシア・コーンウェルあたりに比較してみたい。 物語●大川沿いの深川元町の川縁で、土左衛門が見つかり、北町の定町廻り同心北沢彦太郎が検屍にでかけた…。大店の薬種問屋を襲った難事件を江戸の検屍官は、果たして解決できるのか!? 目次■第一章 梅/第二章 桜/第三章 花蘇芳/第四章 雷/第五章 時雨/第六章 箒星 |
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陰陽師 飛天ノ巻
★★★★☆
![]() 装画・装幀:村上豊 AD:木本百子 時代:天暦元年(947)頃 舞台:京・土御門大路、八瀬、堀川橋ほか。 (文藝春秋・1165円・95/6/20第1刷、97/7/5第6刷・261P) 購入日:97/11/29 読破日:97/12/12 |
♪「陰陽師」シリーズの第2弾。希代の陰陽師安倍晴明と笛の名手源博雅(父は醍醐天皇の第一皇子克明親王、母は藤原時平の女。延喜十八年または延喜二二年生まれ)の名コンビが楽しい。ホームズとワトソン博士、はたまた、京極堂と関口の関係を彷彿させる。ところで、京極夏彦さんの新作はいつ出るんだろうか? 今回は、小野小町と深草の少将なども登場し、趣き深い。また、博雅のプロフィールを紹介する作品もあり、ファンには見逃せないところだ。岡野玲子さんのマンガ版も読みたくなった。 物語●「天邪鬼」菅原道真公の孫、菅原文時が森の中で、裸の童子のあやかしに出会った…。「下衆法師」奇怪の外法に興味のあった絵師が術を修得したいと考えて入門した先は…。「陀羅尼仙」叡山の僧が晴明に不思議な夢について相談した…。「露と答へて」藤原兼家が二条大路で、百鬼夜行にあわれた…。「鬼小町」八瀬の山里の破れ寺同然の無名の寺に、品の良い老婆が二年間欠かさず毎日やってきた…。「桃薗の柱の穴より児の手の人を招くこと」源高明の屋敷の柱の節穴から、夜になると、一本の小さな白い子どもの右腕がはいでてきて、ひらひらと人をまねく怪事が…。「源博雅堀川橋にて妖しの女と出逢うこと」博雅は清涼殿の宿直仲間にそそのかされて、堀川橋のあやかしの正体を調べに行くことになった…。 目次■天邪鬼/下衆法師/陀羅尼仙/露と答へて/鬼小町/桃薗の柱の穴より児の手の人を招くこと/源博雅堀川橋にて妖しの女と出逢うこと/あとがき |
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高瀬川女船歌
★★★★☆☆
![]() 装幀装画:蓬田やすひろ 時代:安永五年(1776) 舞台:京二条高瀬川沿い、上樵木町(木屋町)、斎藤町庚申堂ほか。 (新潮社・1400円・97/11/20第1刷・249P) 購入日:97/11/23 読破日:97/12/8 |
♪今年は、澤田ふじ子さんの作品を何作読んだだろうか。新作が多く、とても幸せな気分にさせてもらっている。最近のささやかな歓びだ。 澤田さんの市井ものといえば「橋」シリーズがまず思い出されるが、その系譜にある作品だ。ただ、本作は連作形式になっていて、一編一編の密度が濃い。一幕の舞台劇のようである。とくに「うなぎ報生」が見事。 「京の三条の旅篭の娘、年は十六その名はおとせ」で始まる高瀬川の船頭歌が効果的に使われている。船頭歌というと、鬼怒川の船頭を描いた「花盛りの渡し場」(伊藤桂一著・新潮文庫)を思い出す。 物語●旅篭「柏屋」の養女お鶴は、高瀬川で鯉を獲り、船頭弥助に叱られている少年平太を助ける。平太は、捨て子の自分を助けてくれた遊女小梅が胸を病んでいるために、鯉の生血を集めていたのだった…。川面に映える市井の人情を描く時代小説。 目次■中秋の月/冬の蛍/鴉桜/いまのなさけ/うなぎ放生/かどわかし/長夜の末日/あとがき |
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美男忠臣蔵
★★★★☆☆
![]() 装画:深津真也 装幀:菊地哲男 時代:元禄十五年十二月 舞台:本所松坂町、江戸城、久松松平家三田中屋敷ほか。 (講談社・1600円・97/11/5第1刷・317P) 購入日:97/11/23 読破日:97/12/7 |
♪タイトルの勝利だな。この時期とっても気になる「忠臣蔵」に「美男」という語を付けたネーミングが見事。 「国書偽造」のときも感じたが、鈴木さんの法廷ものはうまい。論理展開が現代風で理解しやすい。本作品でも、柳沢吉保が検事で、稲葉丹波守正通が弁護人で、綱吉が判事といった見立てが面白い。 この作品を読むまでは、綱吉というのは徳川十五代の中で最悪の将軍と思っていたが…。また、「忠臣蔵」ものというと、どうもへそ曲がりのせいか、判官びいきのせいか、心情的に吉良方を応援するのだが…。 ともかく、いままでの「赤穂事件」の解釈としてはいちばん納得のいく描き方がされていて嬉しい。 物語●元禄十五年十二月、柳沢美濃守吉保は絶頂期にあった…。綱吉が目指す絶頂とは、「武士が血を流さざるを誇れる世を作ること」であった…、そんななかで、旧赤穂藩の大石内蔵助以下四十七人が吉良邸へ討ち入った…。 目次■絶頂/検証/終結 |
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龍馬残影
★★★☆☆
![]() 装幀:幅雅臣 時代:慶応三(1867)年四月 舞台:備中六島沖、備後鞆港、長崎ほか。 (文藝春秋・1143円・97/10/10第1刷・211P) 購入日:97/11/10 読破日:97/12/5 |
♪津本陽さんとは、不思議と縁が薄く、読破したのはこの本が2作目。過日の「時代小説のヒーローたち展」で、縄田一男さんがこの本のことを取り上げていたので、読んでみた。 最近のハードカバーにしては安いが、その分活字が大きく薄かった。 それはともかく、確かに新しい龍馬像が描かれているが、司馬さんの「竜馬がゆく」のファンからすると、ちょっと納得いかないかもしれない。龍馬に翻弄される一般人の悲喜劇といったところが主題か。 ただ、結末とあと書きのつながりがよくわからない。 物語●慶応三年四月、紀州藩の軍艦明光丸が、備中六島沖で伊予大洲藩内輪蒸気船いろは丸と衝突し、いろは丸が沈没した。日本で最初の洋船同士の海難事故である。明光丸の艦長高柳楠之助といろは丸を代表する才谷梅太郎こと、坂本龍馬の対決を描く。 目次■第一章 いろは丸沈没/第二章 機略策略/第三章 海援隊の獅子たち/第四章 大洲藩大変/第五章 亀山社中奔/第六章 天下の海へ/「龍馬暗殺」を再現する―あと書きにかえて |
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尾張春風伝(上・下)
★★★★☆
![]() 装幀:菊地信義 装画:「ちょうちょう踊図巻」(大阪市立博物館所蔵) 時代:正徳三(1713)年四月 舞台:名古屋、市ヶ谷、吉原、戸山ほか。 (幻冬舎・各1500円・97/11/19第1刷・上381P、下371P) 購入日:97/11/8 読破日:97/12/1 |
♪以前、「小説歴史街道」で吉宗VS.宗春を特集していた。ちょうどNHK大河ドラマで「吉宗」をやっていた頃だと思う。その中で清水さんが地元のヒーローである宗春を描いていたのを思い出して、本書を手にする。 今まで吉宗サイドからの作品を読んできたせいか。松平通春(のちに尾張藩主となる徳川宗春)が凄く新鮮。閉塞感の強い、享保の改革時代に、こんなバブリーな殿様がいたなんて、拓銀や山一の破綻で、世相が暗い今だからこそ、嬉しくなってしまう。 忠臣蔵を例にあげるまでもなく、歴史上の事件や人物を一方から見るのは、危険であるとともに、別の角度から見るとまた楽しめるいいケースだ。そういえば、「時代小説ヒーローたち展」の対談で縄田一男さんが、「龍馬残影」(津本陽・著)もそういう面をもった作品であるというようなことをいっておられた。今度読んでみよう。 尾張徳川家三代藩主綱誠(つなのぶ)の第二十男(なんと!ただし、乳幼児の死亡率が高いために実質七男か)に生まれた通春(宗春)。その春風のようなキャラクターが爽快感を与えてくれる。ところでそのパートナーとして、小姓の星野藤馬が活躍するが、確か、えとう乱星さんの「あばれ奉行」に登場したような気がする。 また、「元禄御畳奉行の日記」(神坂次郎・著)でおなじみの、日記マニア朝日文左衛門が度々登場するので、ぜひ読みたいところだ。 物語●ド派手なファッションを身につけ、遊郭を公認し、自由、平等、伊達を愛し続けた吉宗最大のライバル、徳川宗春の、痛快にして奔放なる生き様を描く。 目次■春風/時代/変事/三家/初恋/突風/幼君/密会/急流/遊蕩/絵島/将軍/吉宗/雌伏/胎動(以上、上巻)|白象/運命/慈忍/祭礼/革命/対立/自由/挑戦/巻狩/心中/出火/戸山/暗雲/破局/尾張(以上、下巻) |