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1997年7月・文月の巻
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風の武士(上)(下)
★★★★
![]() カバー装画:鶴岡蘆水「隅田川両岸一覧」より 解説:岡庭昇 時代:慶応三年(1867)一月 (講談社文庫・各485円・各83/11/15第1刷・97/4/1第34刷、上285P、下286P) 購入日:97/7/25 読破日:97/7/31 |
後期の歴史小説界のドン、晩年の超一流文化人のイメージが強くってちょっと敬遠気味だった司馬さんにこんな作品を書いていた時期があったなんて。嬉しくなってしまった。この作品は、「週刊サンケイ」(今のSPA!か)に連載したもので、当時(1960年)、司馬氏は、サンケイ新聞(この当時はカタカナで表記していた)の編集部長で37歳の頃らしい。 軽忽で、うそがつけない、甘っちょろい性格の主人公・柘植信吾のキャラクターが、自分とよく似ていて、読んでいて他人事とは思えなかった。もっとも、自分はこんなにもてないが…(^^;) また、信吾に絡む三人の女性、ちの、お勢以、お弓が個性的でいい。 物語の重要な鍵を握る、隠れ里(エルドラド)の名前が「安羅井(やすらい)」は、イスラエルから来ているのかなぁ。とにかく、わくわくする伝奇ロマンだ。この本を推薦してくれた、土居林太郎さん、ありがとうございます。 ●幕末のある日、伊賀同心の末裔で貧乏御家人の弟・柘植信吾は、異相の山伏とすれ違った。その瞬間、不吉な予感を感じる。やがてすぐに、信吾が代稽古を務める練心館で変事が起こり、また、幕府の高官から秘事を託されることになる…。 目次■遭った男/暗殺剣/蓮の音/練心館の秘密/退耕斎の正体/伊賀者/天狗の里/四番目の顔/隠密第一日/伊賀の刀法/老忍/仏国土/丹生津姫草紙(にぶつひめぞうし)/黒い影/異変/卵殻/旅へ/その男/安羅井人/神奈川の宿/流れ/青い火/三条大橋(上巻) 新選組/拾う神/幻影の城/早川夷軒/源聖寺坂/大坂蔵屋敷/薬師堂/脱出/変身/隠し国へ/大和路/国栖(くす)ノ国/月の峰/猟師小屋/高力伝次郎/変心/殺陣/岩室/安羅井国/野猿/浦島/頭上の敵/月の出の浜/物語に賭けた志―岡庭昇/年譜(下巻) |
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山田風太郎 明治小説全集(一)、(二) 警視庁草紙 (上)(下)
★★★★☆☆
![]() カバー装画・デザイン:南伸坊 解説:和田忠彦 時代:明治六年(1873)八月 (ちくま文庫・各900円・97/5/22第1刷・上490P、下474P) 購入日:97/6/25 読破日:97/7/27 |
噂に違わない、超面白本。メッセージボードで推薦してくれたNIPさん、山田貴之さんありがとうございます。人の○んどしで相撲をとるってやつですが、ネタ切れのときにはありがたいです。 クラクラしそうなオールスターキャスト。西郷隆盛、大久保利通、山岡鉄舟から若き日の森鴎外、清水の次郎長、元岡っ引き半七まで実在の人物、架空の人物が総出演するが、とくに雲霧お辰と組んで、幕末に悪行の限りを尽くした元旗本の青木弥太郎や、あの新選組の斎藤一が見逃せない。 明治初頭の時代と風俗が随所に活写されていて興味深い。とくに維新の元勲たちの金銭欲、権力欲、色欲などスキャンダラスな実像が話を面白くしている。典厩五郎さんの「上野介の秘宝」にも登場した、長州出身の井上馨がとんでもなく厭らしくて悪い奴に描かれていて、バットマンのシュワちゃんみたいでいい。明治ものもなかなかいいなぁ。 創生されたばかりの警視庁に対して、元南町奉行で隅の隠居(伝馬町の元牢名主の異名)と自称する闊達な駒井相模守信興と、明治の世を拗ねて芸者お蝶のヒモをやっている元同心千羽兵四郎、昔ながらの髪結い床をやっている半七の最後の手先、かん八が組んだ旧パワーの反骨ぶりが、当時の人々の気持ちを代弁していて、当時のいい加減さを浮き彫りしている。 巻末に関連年表がついていたので、時代小説年表に付け加えました。 ●元旗本が殺され、隣に住む落語家三遊亭円朝に嫌疑がかけられた。男は、血糊で目張りされた密室内で何者かに刺殺されたらしい。事件当夜に油戸巡査が見かけた、牡丹の絵が描かれた人力俥に乗った謎の美女の正体は?薩摩出身の川路利良率いる警視庁と、元南町奉行、元同心、元岡っ引きとの知恵比べが展開される。 目次■明治牡丹燈篭/黒暗淵の警視庁/人も獣も天地の虫/幻談大名小路/開花写真鬼図/残月剣士伝/幻燈煉瓦街/数寄屋橋門外の変/最後の牢奉行/関連年表(上巻) 痴女の用心棒/春愁 雁のゆくえ/天皇お庭番/妖恋高橋お伝/東京神風連/吉五郎流恨録/皇女の駅馬車/川路大警視/泣く子も黙る抜刀隊/関連年表/解説―和田忠彦(下巻) |
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木枯し紋次郎(三) 六地蔵の影を斬る
★★★★
![]() カバーデザイン:亀海昌次 解説:郷原宏 時代:天保九年(1838)八月 (光文社文庫・485円・97/3/20第1刷・246P) 購入日:97/6/4 読破日:97/7/21 |
木枯し紋次郎の作品中での知名度がグンと高まっているのが今回の特徴。憧れられたり、喧嘩を吹っかけられたり、恐れをなされたり…といった具合に。 今回はじめて、紋次郎の左頬の古傷とトレードマークの楊枝の由来を描いているのも、見逃せないポイントだ。 笹沢さんの語り口が滑らかで構成がしっかりしているせいか、非常に読みやすい。あっという間に読み終えてしまう。紋次郎が訪れる土地のミニガイドがまた楽しい。 ●「六地蔵の影を斬る」霞ケ浦の近くで、紋次郎は小判鮫の金蔵という男に付きまとわれる…。「噂の木枯し紋次郎」野州板橋の祭礼の日に、紋次郎は若い渡世人に喧嘩を仕掛けられる…。「木枯しの音に消えた」十二年前に傷を負ったところを助けてくれた父娘の消息を求めて、上州神戸を訪れるが…。「雪燈篭に血が燃えた」善光寺道海野宿で、塩が四俵盗まれる珍事件が起きた…。 目次■六地蔵の影を斬る/噂の木枯し紋次郎/木枯しの音に消えた/雪燈篭に血が燃えた/解説 郷原宏 |
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はぐれ五右衛門
★★★★
![]() 装画:百鬼丸 装幀:中村美樹 時代:天正二十年(1592)六月 (双葉社・1900円・97/6/15第1刷・384P) 購入日:97/7/12 読破日:97/7/20 |
鈴木輝一郎さんのホームページを見て、この本がものすごく読みたくなった。作家業を楽しみながら苦闘する、作者の姿が伝わってきて必見。作家で自力でこれだけのWebページを作っている人はいないんじゃないかな。 曽呂利新左衛門というと、小学生の頃、学習雑誌に書かれていた、エピソードを思い出す。確か何かの功を上げ、秀吉から、ほうびを聞かれて、まず、米一粒をいただきたい。そして、毎日その倍の米粒をもらいたい、ということを言った。最初、秀吉に欲がないなあと言われたが、米は2乗されていき、やがて蔵に入りきらない量になっていった。という学習教訓的な内容だった。ずっと気になっていたが、はじめてこの作品で大きく描かれた。 この本は、鈴木さんの他の著作と同様に「EYEマーク」が付けられ、視覚障害者等に配慮がなされている。総ルビになっていて、少年少女小説っぽい感じもする。でも、「梨地之陽根」とか「子安之陰核」とか、アダルトな秘宝が登場するが、だいじょうぶかな。福祉関係の人に対して。 ●豊臣秀吉治下で朝鮮出兵直後の頃。手下の坂本小虎を連れたはぐれ素破(すっぱ)=フリーランスの忍者、伊賀名張の石川五右衛門は、京都所司代の前田玄以から仕事の依頼を受ける。玄以は、豊臣政権の重鎮浅野長吉の邸宅の座敷牢に囚われている。その仕事とは…。 目次■第一章 はぐれ素破/第二章 淀/第三章 梨地之陽根(なしじのようこん)/最終章 釜煎り/あとがき |
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江戸名物からす堂(二)
★★★★☆
![]() 装画:国貞 装丁:玉井ヒロテル 時代:延命院事件の享和三年(1803)以降、感応寺事件の天保十二年(1841)以前 (春陽文庫・796円・78/11/25第1刷・96/12/20第49刷・610P) 購入日:97/7/12 読破日:97/7/20 |
春陽文庫の本はどうして、大きな書店でしか手に入らないのだろうか? 昔は、街の小さな書店にもコーナーがあった気がするが…。 飯島直子さん(もしくは鈴木京香さん)を思わせる色っぽい美女お紺とからす堂、そして「たつみ」の面々の掛け合いが心地よい。池波正太郎さんの「剣客商売」に通じるものがある。 新興宗教を扱った、「教祖お照さま」が面白かった。破戒僧と寺院を処罰した延命院事件や、江戸後期から起こる新興宗教にヒントを得て描かれたような話だ。 また、三島まで旅に出る、お紺とからす堂の道中記も次々と事件が発生して楽しい。 からす堂シリーズの章立てが少し変。この本では、3つのパートに分かれていて、そのなかに何話かがあるという構成だが、各話はそれぞれ完結している。しかし、細い糸でかすかにつながってもいる。慣れないと戸惑う。 ●主筋の悪運を払うために、禄を離れ、八辻ガ原で観相をもって千人の人助けをする、からす堂、こと唐津栄三郎。神田小柳町でなわのれん「たつみ」を営む、お紺。今回は、毒婦ともいうべき、妖艶な女たちが続々登場。気になる二人の関係は…。 目次■深編笠からす堂(第一話 夜桜お千代|第二話 花曇り村正|第三話 教祖お照さま)/旅枕からす堂(第一話 千人目の春)/春姿からす堂(第一話 大和屋の娘|第二話 怪盗あらわれる|第三話 女からす堂|第四話 花のあらし)/江戸おもしろ事典 隠密 中村豊秀 |
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闇と影の百年戦争
★★★★☆
![]() カバーデザイン:安彦勝博 解説:清原康正 時代:天保七年(1836)二月 (徳間文庫・571円・97/6/15第1刷・381P) 購入日:97/6/11 読破日:97/7/15 |
第二回吉川英治文学新人賞受賞作。以前、集英社文庫で出ていたが、品切れ絶版中ということで諦めかけていたところ、徳間文庫から新たに刊行された。実に嬉しいことだ。 「鴻池一族の野望」で、大坂の豪商鴻池一族と幕府の秘密機関・中町奉行との抗争を描いた、南原さんが、今回は大丸(屋)を素材に選んでいる。 現在の大丸デパート(東京駅前)である大丸屋呉服店の奥の一室に幕府の隠密部屋があった、という史実からこの奇想天外な物語を発想したらしい。 薩摩藩、大丸屋、公儀御庭番、紀州家が、江戸、尾張、紀州、京、大坂、長崎、薩摩と舞台を替えながら対決する時代エンターテインメント。敵役に回ることが多い薩摩藩士が主人公で、「灼熱の要塞」(集英社文庫)や「御庭番十七家」(徳間文庫)の裏返しで、興味深い。 大塩平八郎や薩摩藩執政・調所笑左衛門(ずしょしょうざえもん)といった有名人?も登場し、見せ場の多い作品だ。 ●薩摩藩士・志布志平太は、藩主島津斉興からじきじきに特別の御用向きを命じられる。二十九歳の平太は、天地心刀流免許皆伝の腕前に加えて、弓鉄砲の名手であり、代々の江戸定府で、馬廻り役二百石+二人扶持で、非常時には隠密役を務める家柄であった。特別な御用向きとは、三井越後屋と並ぶ大呉服店の大丸屋の探索であった…。 目次■序/福助人形/檜屋敷/大文字山/大坂蔵屋敷/長保寺/大日山の主/紀州家侍帖/観音堂の女/薩摩の秘密/元方寄合/桜の間/長崎店/富士講中/島津斉興/汚穢船/片耳の犬/増上寺養徳院/薩摩屋敷の客/支配頭大番頭/大丸屋尾張店/二番首/大塩の妻/九州へ/卓袱料理屋/抜け荷/肥薩越え/追跡/天狗喝し/天保の乱/隠し館/決断/解説 |
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幕末ガンマン
★★★☆☆
![]() カバーイラスト:志賀功 カバーデザイン:鈴木邦治 解説:郷原宏 時代:文久二年(1862)五月 (双葉文庫・621円・96/12/15第1刷・365P) 購入日:97/4/29 読破日:97/7/14 |
生島さんの小説は、初めて読んだ。確か、ミステリ・サスペンス畑の人(かつて「エラリークインズ・ミステリ・マガジン」の編集長)だったような気がする。時代小説を書いていたのが意外で、つい購入する。 高杉晋作は、幕末で、坂本竜馬と並んで、爽やかなイメージのあるキャラクターだ。おそらく、維新の成功の果実を貪ることなく、絶頂期に亡くなったからであろう。また、その野放図さ、ぼんぼんぶり、私利私欲のなさがいっそう、そう感じさせるのかもしれない。そういえば、池宮彰一郎さんの「高杉晋作」も爽快感のある作品だった。 本作品では、主人公捨の上海でのガンマン修業ぶりが面白い。師匠のアル中の南部人ガンマン・リックと相弟子の中国人ボーイ・猫(マオ)、デント商会のステイとシーラの父娘、シーラに恋心をもつ英軍のメイラー大尉、リックの下宿先のおかみ・ビッグママなど、興味深い面々と当時の上海の町が活写されている。 ●上海行きの幕府御用船・千歳丸の船上で、高杉晋作は、ふとしたことから水夫の捨(すて)と友情で結ばれることになる。捨ては、天涯孤独の身で、メリケン語を喋り、ガンマン志望という変わり種だった。捨の上海でのガンマン修業と、晋作との友情、激動の時代を描く時代ロマン。 目次■ヒュースケンの弟子/上海見聞録/手槍鬼(ザ・ガンマン)/風車の剣/ボディガードの用心棒/夷狄の剣豪/プレゼントは二十二口径/もっとも危険な獲物/花火炸裂/弔音轟々/解説 郷原宏 |
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天空の橋
★★★★☆
![]() 装画・装幀:蓬田やすひろ 時代:文化十五年(1818) (徳間書店・1600円・97/6/30第1刷・265P) 購入日:97/6/29 読破日:97/7/13 |
ゲストブックの本橋淳さんのおすすめの一冊。購入して10日間ぐらい、すぐに読み出すのがもったいなくて表紙を飾りながら日々すごしていました。ろくろの前で作陶する人物の背景に京の町が霞んで見える、蓬田さんの表紙が趣があって気に入っています。 「虹の橋」「見えない橋」「もどり橋」「幾世の橋」に続く、「橋」シリーズの完結編。 徒歩が主要な交通手段であった昔、橋のもつ意味は非常に重かったのではないだろうか。そこでは、人が出会い、別れ、旅立ち、集う。住む人を隔てる境界線ともなっている。そういうことを考えると、「橋」を人情交差点とたとえるのも理解できる。ちなみに、菊池仁さんの編による「時代小説ベストアンソロジー第1巻」(ベネッセ)のタイトルも「人情交差点―橋ものがたり」と名づけられている。 澤田さんの作品では、江戸時代の京の工芸品や風俗、文化が作品の随所に綴られていて、興味深い。本書でも、通常の史料では軽視されがちな京焼(とくに清水焼と粟田焼のライバル関係など)の世界が、作品の重要なテーマとして描かれている。 狩野派とともに日本の画派を二分する土佐派の名手で人物画を得意とする、土佐光孚(みつただ)が、脇役として登場するのも見逃せないところ。 ●但馬・湯嶋の湯治宿で下働きだった十五歳の八十松は、湯治客の京都・五条坂の京焼の積問屋高野屋長左衛門に見込まれ、五条坂の亀屋熊次郎のもとで、陶工として育てられることになる…。行手を阻む困難を克服し、成長のはざまで感じ取った人生の哀歓を描く。 目次■第一章 春の翳/第二章 命の相客/第三章 えせの窯ぐれ/第四章 足引きの町/第五章 あの坂をのぼって/あとがき |
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五人女捕物くらべ(上・下)
★★★★
![]() カバー装幀:風間完 カバーデザイン:岸顯樹郎 時代:将軍家斉の治下。北町奉行小田切土佐守直年、家斉の長女淑姫十三歳の頃 (講談社文庫・各467円・97/6/15第1刷・上277P、下245P) 購入日:97/6/20 読破日:97/7/9 |
登場キャラの設定が見事な平岩捕物帳の新シリーズ。 今回は、豪華な五人の女たち―太公望のおせん(神田明神下に住む釣り好きの講武所芸者)、琉球屋おまん(日本橋本町の琉球物産を扱う店を切り盛りする19歳の女主人)、七化けおさん(両国の女役者一座の花形・吾妻三之丞)、猫姫おなつ(目黒の猫屋敷の姫様)、花和尚お七(本所押上の尼僧)が捕物を競う趣向。 彼女らにからむのが、お玉ケ池の千葉周作道場に通い、剣の腕のたち、どことなく品のいい、岡っ引きの居候・本多忠吉郎。素性が伏せられているのも興趣がわく。 上巻が顔見せ興行で、下巻でその裏を返すといったところか。ぜひ、長編で五人の女たちが直接絡み合う話が読みたい。 ●神田連雀町の老岡っ引き仏の小平次のもとに居候するのは、いわくありそうな青年武士・本多忠吉郎。かれらの手先として、個性豊かな江戸の女たちが、事件の真相を探り出す…。忠吉郎の正体はいかに。 目次■(上巻)太公望のおせん/琉球屋おまん/七化けおさん/猫姫おなつ/花和尚お七 (下巻)遊女殺し―太公望のおせん/雪の夜ばなし―七化けおさん/江戸の毒蛇―琉球屋おまん/文殊院の僧―花和尚お七/まんだらげ―猫姫おなつ |
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新・今川記 戦国幻野(せんごくげんや)
★★★★
![]() 装幀:西のぼる 時代:享禄三年(1530)四月 (講談社・1845円・95/9/25第1刷・410P) 購入日:97/6/10 読破日:97/7/6 |
今川義元というと、油断していたために桶狭間(JRA中京競馬場のすぐ近くなので今度見に行こう)で信長に討ち取られてしまっ、マヌケな戦国大名のイメージが強い。成田三樹夫さんの公家顔メークが思い出される。 しかし最近、北方謙三さんや安部龍太郎さんの室町時代を舞台にした、作品を読んでいるうちに、今川家って名門じゃないかという意識が芽生えていたので、すんなりと「新・今川記」とサブタイトルについているこの作品の世界に入り込めた。 「神州纐纈城」を彷彿させる、修験者集団の富士教団が登場する。富士のご神体、木花開耶姫命(このはなさくやひめのみこと)にちなんで「炸耶様」という女装の美少年をあがめるのだが、この辺の扱い方が皆川さんぽくっていい。単なる歴史ものでは済まさないぞって感じが伝わってきていい。 ●師・九英承菊に伴われて、十二歳の方菊丸、のちの今川義元は、長兄や兄の住む府中へ向かう途中、山伏・小聖と歩き巫女・照日に出会う。突然、巫女は神憑りになり、何か託宣をする…。 目次■一 花の稚児/二 闇の力/三 凶兆/四 初陣/五 血の絆/六 野は悽愴/七 花倉の乱/八 覇者/九 影と光/あとがき |
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陰陽師(おんみょうじ)
★★★☆☆☆
![]() 装画:百鬼丸 AD:森玲子 時代:応和元年(961)六月 (文春文庫・448円・91/2/10第1刷・97/5/10第12刷・333P) 購入日:97/7/3 読破日:97/7/6 |
陰陽師という言葉に弱くて購入。京極さん風にいえば、拝み屋。つまり京極堂のルーツってわけだ。平安時代を代表するトリックスター安倍晴明が主人公ということでわくわくして読み進める。 作者は、プロレス雑誌等で馴染み深い夢枕さん。小説を読んだのは今回が初めてだが、前田日明さんをはじめ旧UWF系プロレスラーに関する著述は読んだことがあった。この間の村松さんに続いて奇しくもまた格闘技系の人の作品を読むことになる。 陰陽師・晴明のエピソードを「今昔物語」から引用しながら綴っていく。京極堂における作家・関口巽のように、ワトソン役として登場するのが、源博雅朝臣―帝に仕える武士。武辺ものながらも、琵琶を習うために三年間も蝉丸(あの坊主めくりでおなじみの)のもとへ通うという風雅な面も持ちあわせている愛すべきキャラだ。 この二人のやりとりが楽しくて、また、晴明の人間性がうまく引き出されている。 式神に、酒肴の鮎を焼かせたり、客を出迎えさせたり、と何やら羨ましくなってしまう。 ●「玄象といふ琵琶鬼のために盗らるること」帝が大切にしていた玄象という唐伝来の琵琶が盗まれた…。「梔子の女」口のない女に夜ごと悩まされる僧の話。「黒川主」千手の忠輔といわれている鵜匠の娘の奇行とは…。「蟇」応天門に子どものあやかしが出るという…。「鬼のみちゆき」赤髪の犬麻呂と呼ばれる盗人が遭遇した怪現象とは…。「白比丘尼」博雅は珍しく晴明に雪見酒を誘われるが、人を五、六人切り殺した太刀を持参するようにいわれる…。 目次■玄象といふ琵琶鬼のために盗らるること/梔子の女/黒川主/蟇/鬼のみちゆき/白比丘尼/あとがき |
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灰左様なら(はいさようなら)
★★★☆☆☆
![]() カバー装画:原田維夫 解説:立川談四楼 時代:文化三年三月 (講談社文庫・408円・93/3/15発行) 購入日:93/5/10 読破日:97/7/1 |
部屋を片付けていたら、出てきたのがこの本。4年くらい前に新刊で購入して、未読のままになっていたものだ。 村松友視さんというと、昔、「私、プロレスの味方です」というエッセー集(プロレス観戦指南書)で、プロレス好きにさせてくれた人で、当時、タイガーマスク(もちろん、佐山聡さん)と古舘伊知朗さんと並んで恩人というべき人。「時代屋の女房」って作品もあった。先日、NHKの駿府の家康をテーマにした番組のホスト役として、久々に拝見した。 この作品は、時代小説のテーマにあまりならない、落語界が舞台。主人公の林屋正蔵をはじめ、兄弟子の朝寝房夢羅久、師匠の三笑亭可楽ら落語草創期の人たちが登場して興味深い。古谷三敏さんの「寄席芸人伝」を彷彿させる。 そればかりでなく、同時期に活躍する戯作家たちも描いていて二重に面白い。とくに山東京伝や十返舎一九のペンネームの由来もうまく説明している。「手鎖心中」(井上ひさし・著)とは、また違う面から一九像が描かれている。 高橋克彦さんのファンの方には、おなじみのからくり人形師・泉目吉も登場するので、注目。ふーん、この時代の人だったんだ。 作中に、秀吉と「蘭奢待(らんじゃたい)」のエピソードが出てきたが、聞き覚えがあるなあ、どこで読んだのだろうか。?が残った。 ●怪談咄を手に入れるためには、人間の奥深さや怖さを知らねばならない。怪談咄の祖、林屋正蔵のそんな気持ちが、尊敬する「東海道中膝栗毛」の作者・十返舎一九のもつ得体の知れない正体を暴くことへとかきたてていった…。 目次■灰左様なら/解説、のようなもの 立川談四楼 |
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新選組
★★★★☆
![]() 装丁:神長文夫 装画:黒鉄ヒロシ 時代:元治元年(1864)六月 (PHP研究所・1359円・96/12/26発行) 購入日:97/3/10 読破日:97/7/1 |
「歴史街道」連載中から注目していた作品だったが、新選組についてよく知らなかったので、せめて「竜馬が行く」を読んでからにしようと、温めていた。 黒鉄さんといえば、「ビッグコミック・オリジナル」の「赤兵衛」のイメージが強いので、新選組というとちょっと意外な感じがするが、その「赤兵衛」もテーマは現代であるが、舞台は江戸を借りている。 そんなわけで、黒鉄さんの画がこなれていて味がある。また、この人の最大の特徴である見立て(たとえば下駄の鼻緒を遺影の黒リボンに見立てる、など画による一種の駄洒落)の秀逸さが随所に見られて面白い。つまり、新選組の事跡に詳しければ詳しいほど楽しめるってわけ。 芹沢鴨暗殺の場面での、ちょっとなまめかしい描線も、黒鉄さんには珍しくなかなかだ。 IBMのThinkPadのCMを見ていて気が付いたが、「竜馬が行く」のおりょうは、りょうさんがいいな。 ●池田屋騒動から北海道の土方まで、新選組の面々の活躍を一話完結形式(6ページ)で描く時代マンガの傑作。 目次■序/池田屋騒動(一)(二)(三)/試衛館 天然理心流/新選組をつくった男/柴司・麻田時太郎 切腹/長曾禰虎徹/力士斬り/禁門の大政変/局中法度書/芹沢鴨暗殺(一)(二)/内山彦次郎 暗殺/蛤御門の変/池田屋騒動始末/山南敬助脱走/元治二年三月某日/壬生心中/勘定方 河合耆三郎 斬/伊東一派加盟/人斬り鍬次郎/谷三十郎の介錯 祇園石段下の暗殺/三条制札事件/武田観柳斎 暗殺/四条大橋 斬り合い/佐野七五三之助・茨木司・富川十郎・中村五郎 死/坂本竜馬・中岡慎太郎 暗殺(一)(二)/油小路事件(一)(二)(三)/天満屋事件/墨染事件/鳥羽伏見の戦い/富士山丸/甲陽鎮撫隊/下総流山自首/土方歳三・北へ 雪/沖田総司/宮古湾海戦/土方歳三・北へ 月/土方歳三・北へ 花/明治四十四年/あとがき |