新・極楽の読書録
1999年12月・師走の巻

西行と清盛 by 嵐山光三郎
千利休とその妻たち 上・下  by 三浦綾子
藩と日本人 現代に生きる〈お国柄〉 by 武光誠
螢の橋 by 澤田ふじ子
陋巷に在り 6 劇の巻 by 酒見賢一
半蔵幻視 by 嶋津義忠
くぐつ小町 平安朝妖異伝 by 加門七海
異人館 上・下 by 白石一郎
埋もれ火  by 北原亞以子
明治東京畸人傳 by 森まゆみ



おすすめ度(100点満点):★ひとつは20点、☆ひとつは5点。

明治東京畸人傳
(めいじとうきょうきじんでん)

森まゆみ
(もりまゆみ)
[明治+人物・地誌]

カバー装画:加藤千香子
解説:鈴木博之
(新潮文庫・514円・99/07/01第1刷・320P)
購入日:99/10/24
読破日:99/12/29

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明治東京畸人傳 江戸情緒研究の一貫で読み始めた。谷中、根津、千駄木(谷根千・やねせんと呼ぶらしい)のスペシャリスト・森さんの著作を初めて読む。NHK-BSの「週刊ブックガイド」でお顔を拝見していたが、文章もとても親しみやすく、何とも言えない温かみがある。いっぺんでファンになってしまった。
谷中、根津、千駄木(文京区の一部にすぎない)といった、ごく狭いエリアで、よく本や地域誌がもつなあ。と不思議に思っていた。ところが、この本を読んでビックリ。話題やネタの宝庫で、実にいろいろな人たちがこの町を通りすぎていったのである。その中でも取っておきのものを集めたのが本書のように思われる。
チベット潜入の河口慧海、中村屋の相馬愛蔵・黒光夫妻、露伴や鴎外などのエピソードも楽しいのだが、昭和恐慌に発展した倒産銀行の頭取ヂエモンさんの話がとくに興味深かった。当時が、今の時代とよく似ていて、「ペイオフ」がなぜ重要案件になっているのかが少し分かった。
巻末についている「この本から広がる読書案内」というリストが親切。参考にしたい。

読みどころ●上野、谷中、根津、千駄木…。徳川幕府崩壊により破壊され、明治になって再開発されたこの地には、かつて滅茶苦茶面白い人たちがいた。最後まで丁髷だった老舗薬局の主人、悲劇のピアニスト、「静座ブーム」を起こした健康運動家、上野動物園に人生を捧げた男…。遠く過ぎ行く明治が近くに感じられる人物列伝。

目次■エルウィン・ベルツの加賀屋敷一二番館/横山松三郎の池之端通天楼/池之端仲町二十七番地守田宝丹翁事跡/山口半六の東京音楽学校奏楽堂/駒込林町 悲運の久野久/木村熊二・鐙子の谷中初音町二丁目二番地/相馬愛蔵・黒光夫妻の駒込千駄木林町十八番地岡田虎二郎と日暮里本行寺静座会/藪蕎麦発祥の地 団子坂の三輪伝次郎/河口慧海の根津宮永町雪山精舎/村山槐多の歩いた田端と根津/福士幸次郎の田端楽園詩社/サトウハチローの桜木町と弥生町/吉丸一昌の動坂町三百五十七番地/殿様作曲家松平信博の桜木町アオイ横丁/春日とよの上野桜木町二十二番地/古賀忠道の上野動物園ひとすじ/桃川燕雄の谷中初音町の茅屋/団子坂の先生・物集高量の大往生/山車の行方―人形師原舟月のこと/露伴が谷中にいた頃―五重塔の話/白秋の墓―天王寺墓畔吟/川端康成―駒込林町雨戸のおまじない/円朝・谷根千めぐり/渡辺治右衛門て誰だ/路上の肖像―あとがき/この本から広がる読書案内 解説鈴木博之

埋もれ火
(うもれび)

北原亞以子
(きたはらあいこ)
[幕末]
★★★★☆

カバー画:蓬田やすひろ
カバーデザイン:蓬田やすひろ
時代:「お龍」明治三十年、「枯野」明治二十五年、「波」慶応四年、「武士の妻」慶応四年、「正義」慶応四年、「泥中の花」文久二年、「お慶」明治四年、「炎」明治十三年、「呪縛」明治十四年
舞台:「お龍」東京・海軍病院前、「枯野」千住、「波」三河町、「武士の妻」多摩郡上石原村、「正義」赤坂、「泥中の花」亀戸村、「お慶」長崎、「炎」赤間関、「呪縛」吉田村ほか
(文藝春秋・1,524円・99/10/20第1刷・288P)
購入日:99/10/30
読破日:99/12/27

Amazon.co.jpで購入 [文庫あり]

埋もれ火 最近、読書のスピードが落ちてしまい、ツン読状態がひどくなった。大好きな北原さんの本も未読のものが4冊を数えている。何とかせねば、と、いささか焦っている。この本は、坂本龍馬の妻・お龍や千葉佐那子、高杉晋作の愛妾・うのなど、幕末維新の激動に翻弄された女たちを描いた短編集。歴史というのが、勝者のもの、生き残った者のものであることを痛感させられる。とくに、「武士の妻」と「正義」、「お慶」が読後に強い印象を残す。
「正義」を読んでいたら、北方謙三さんの『草莽枯れ行く』(集英社)が、「お慶」を読んでいたたら、白石一郎さんの『天翔ける女』(文春文庫)が思い出されてならなかった。
ところで、本のカバーがいつもの蓬田さんとは違う装幀だなと思って、表紙をめくると、シャープな斜線と鮮やかな配色に特徴がある画が描かれてあり、やはりそこは蓬田ワールドだった。

物語●「お龍」明治三十年、西村つると名乗る女性のもとに元海援隊の隊士の息子が訪ねてきた…。「枯野」明治二十五年、千葉灸治院の看板を掲げる、佐那子の長屋に、人力車の乗って白髪まじりの紳士と夫人と見える女がやって来た…。「波」慶応四年、近藤勇の愛妾・おさわの家の戸を、丑満刻に叩く者がいた…。「武士の妻」安政六年、一橋家の祐筆をつとめる松井八十五郎の娘・ツネは、多摩郡の豪農・宮川久次郎の三男で、天然理心流の剣術を学び、宗家三代目近藤周助の養子・島崎勇に嫁ぐことになった…。「正義」照のもとに、見知らぬ男が訪ねてきて、夫の小島四郎(相楽総三)が、偽官軍として処刑されたと知らせてくれた…。「泥中の花」庄内藩士堀井達三郎は、清河八郎の妻・お蓮に横恋慕し、清河に対してストーカー行為をしていた…。「お慶」熊本藩士遠山一也が、大浦屋のお慶を訪ねてきたのは、明治四年のことだった…。「炎」赤間関で廻船問屋を営んでいた小倉屋の白石正一郎を、薩摩から藤代亨という若者が訪ねてきた…。「呪縛」高杉晋作の墓を守るうのは、飲みたいのをがまんできずに、一升徳利を抱えて酒を買いにでかけた…。

目次■お龍|枯野|波|武士の妻|正義|泥中の花|お慶|炎|呪縛

異人館 上・下
(いじんかん・じょうげ)

白石一郎
(しらいしいちろう)
[幕末]
★★★★☆

カバー画:百鬼丸
カバーデザイン:熊谷博人
題字:岩田信夫
解説:杉洋子
時代:安政六年(1859)
舞台:上海、長崎、横浜ほか
(朝日文庫・上620円、下580円・99/11/01第1刷・上381P、下309P)
購入日:99/10/16
読破日:99/12/26

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異人館 ご贔屓の白石さんの新刊文庫本。朝日新聞に連載時から気になっていたが、単行本時に買い損ねた一冊。ときどき、ボタンを掛け違えたように縁がない本というのはあるが、この作品ももう少しで自分にとってそうなるところだった。
長崎の観光名所グラバー邸を遺したことで知られる(といっても訪れたことはないが)、イギリス人商人トーマス・グラバーの半生を描き、彼を通して、幕末維新の日本と日本人を描いた長篇。大浦のお慶など、白石ファンにはおなじみの人物も登場し、うれしい作品。とくに、前半で描かれる上海の場面で、脇役の林大元が活躍するシーンは、白石ワールドって感じでたまらない。
幕末に活躍し、維新の原動力になった人物たちが、ほとんど二十代だったということは、よく知られているが、その当時、ニッポンにやってきた外国人商人たちもほとんど二十代だったと知り、ちょっとびっくりしている。グラバーも弱冠21歳で日本に来て、ビジネスをスタートしている。まさにベンチャーといったところか。
解説の杉洋子さんは、作家として活躍されているが、白石さんのアシスタントも務めているらしい。彼女の作品も読んでみたくなった。

物語●1859年、トーマス・ブレーク・グラバーは、P・Oラインの定期船オリエンタル号で、二ヵ月半にわたる長い航海を終えて、イギリスから上海にやってきた。そこで、彼は、日本人で林大元と名乗る水夫設教という結社に属する元サムライと出会った。やがて彼らは、日本の長崎へ行くことになった…。

目次■上海の月/黄金の国へ/新開地/グラバー商会(以上上巻)|上げ潮/艦砲射撃/千客万来/危険な坂道/終章/あとがき/巻末エッセー・外灘の月 杉洋子(以上下巻)

くぐつ小町 平安朝妖異伝
(くぐつこまち・へいあんちょうよういでん)

加門七海
(かもんななみ)
[平安]
★★★

カバーイラスト:加藤俊章
カバーデザイン:泉沢光雄
カバー毛筆字:林節子
解説:長野まゆみ
時代:承和七年(840)
舞台:鳥辺野、六道の辻、二条、深草ほか
(河出文庫文藝セレクション・480円・99/12/03第1刷・177P)
購入日:99/12/06
読破日:99/12/19

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くぐつ小町 風水の考え方を日本に当てはめた『大江戸魔方陣』が面白かった加門さんの最新文庫。小野篁は、文人・歌人として知られる小野岑守の子で、遣唐副使に選ばれながら、大使と争って乗船を拒み、隠岐に配流された人で、解説によると、彼岸と此岸を自在に行き来した人物として知られるらしい。また、小野小町は、謡曲「通小町」や「卒塔婆小町」にあるように、好色にして驕慢、晩年は老醜をさらしたという伝説をもつ。
想像力が欠如しているせいか、なかなか作品に没入できず、ストーリーがつかめずに苦労する。長野さんの解説でやっと、おぼろにわかった。やはり、妖しい恋物語は向かないみたい。

物語●冥府の官・破軍星・野狂と恐れられた魔性の男、小野篁(おののたかむら)。その娘、小野小町。平安京の死門を護る篁が絶世の美女・小町に秘めた闇の呪法とは? 

目次■くぐつ小町|解説 長野まゆみ

半蔵幻視
(はんぞうげんし)

嶋津義忠
(しまづよしただ)
[忍び]
★★★★

カバーイラスト:毛利彰
カバーデザイン:深堀篤
解説:縄田一男
時代:「半蔵幻視」天正七年(1579)。「重兵衛彷徨」元和七年(1621)
舞台:「半蔵幻視」浜松、京丸、二俣城、高野山ほか。「重兵衛彷徨」日野川、越前北の庄、下市村ほか
(小学館文庫・590円・99/12/01第1刷・301P)
購入日:99/11/07
読破日:99/12/18

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半蔵幻視 『半蔵の槍』(講談社文庫)などの忍者小説の雄、嶋津さんの書き下ろし未発表作品。表題作のほかに、『半蔵の槍』の主人公・柘植重兵衛が活躍する短編『重兵衛彷徨』を収録。
嶋津さんの忍者小説の特徴は、忍びもまた、心を持った人として描かれている点である。それゆえに、登場人物たちが愛に悩んだり、裏切ったり、夢に賭けたりし、生き生きと輝くのである。
もちろん、アクションシーンの描写も見事である。半蔵と武田忍びの竹庵(変装の名人ながら血の臭いを嫌い、桔梗の匂い袋を身につけているという設定が秀逸)との対決。「重兵衛彷徨」での重兵衛と根来忍びの対決など、わくわくする。

物語●「半蔵幻視」服部半蔵正成は、天方山城守通綱とともに家康のもとに呼ばれた。織田信長の命で切腹を申し付けられた嫡男・信康の自裁を見届けるためであった。しかし、半蔵は、信康に、ある夢を夢を託していた…。「重兵衛彷徨」左脚を失った乞食然とした老忍者・柘植重兵衛は、家臣の妻を奪った松平忠直が、妻を返せと掛け合ってきたその家臣を殺させた場面に出くわした…。

目次■半蔵幻視(一章 信康の命/二章 王国/三章 血の臭い/四章 秘境京丸/五章 松平郷)|重兵衛彷徨|解説 縄田一男

陋巷に在り 6 劇の巻
(ろうこうにあり・6・げきのまき)

酒見賢一
(さけみけんいち)
[中国]
★★★★☆

装画:諸星大二郎
装幀:新潮社装幀室
時代:春秋時代
舞台:魯、費城
(新潮文庫・476円・99/12/01第1刷・309P)
購入日:99/12/04
読破日:99/12/15

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陋巷に在り 6 劇の巻 孔子に大ピンチ。策謀と激情が交錯し、空前極まる奇襲戦の描写が戦慄を誘う、茫然自失の第6巻。物語はクライマックスを迎えた感じ。
このシリーズの魅力は、子蓉、悪悦、少正卯といった、ヒール(悪役)が強くて、非情な中にユーモアがあること。うーん、しばらく目が離せない。

物語●子蓉の媚術に操られ暴動を扇動していた女予(よ)を救い出し、騒乱鎮圧に成功した顔回。しかし、女予の心身の消耗は著しく、瀕死の状態であった。一方、悪悦の姦計によって理性を失った費城の公山不ちゅうは、籠城策を一転させ、怒りにまかせて魯城を急襲する。防備が手薄の魯城はあっさり費兵の侵入を許し、孔子らの命は風前の灯火に…。

目次■顛沛/迅戦/乱入/鬼落とし

螢の橋
(ほたるのはし)

澤田ふじ子
(さわだふじこ)
[市井]
★★★☆☆☆

装幀・装画:蓬田やすひろ
時代:正保3年(1646)
舞台:京・三条御幸町、三条川原、仁和寺門前、五条大橋西、北野、美濃・久々利村、鳥居本、犬上川、鵜沼ほか
(幻冬舎・1,600円・99/11/10第1刷・358P)
購入日:99/10/27
読破日:99/12/14

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螢の橋 『幾世の橋』、『見えない橋』、『もどり橋』、『天空の橋』と、タイトルに“橋”がつく澤田作品は名作ぞろいだ。作者が人と人が出会い別れる“橋”に思い入れがあるせいか。
この作品は、作者としては珍しい江戸前期(家光時代)の京を舞台にしている。作品の随所に、戦乱の終息と新しい政治体制の確立を感じさせる場面描写があり、作品の大きなテーマとなっている。
澤田さんの本では、あとがきを読むと、いろいろな示唆があり、また、作者がどのような思いで作品を綴ったかが垣間見ることができ、興味深い。平成元年に、京都市中京区三条通柳馬場東入ルから、京都埋蔵文化財研究所が、総数800点以上の「織部」「志野」「唐津」のやきものを発掘したことが執筆のヒントになっているという。物語は、意外な展開を見せる。
御室焼(おむろやき)の陶工・野々村仁清(にんせい)や茶湯者・金森宗和、京都所司代・板倉周防守重宗らも登場し、主人公の美濃の陶工・平蔵らに絡み、芸術と政治の狭間でもがく男と女を京の市井を舞台に堪能させてくれる。

物語●美濃の窯焚きの雑工の娘・お登勢は、京三条御幸町の諸国やきもの問屋「久々利屋」で奉公していた。許婚の陶工・平蔵は、庇護者である古田織部正の死後、衰退しはじめた、美濃のやきものを再興しようと考えていた。そんなある日、京の三条川原で老賊が磔に処せられるという事件が起きた…。

目次■短夜の蔵/秋の旅僧/霧の旗/唐津からの荷/仁清の窯/慶安夜雨/闇の梯子/夏の嵐/あとがき

藩と日本人 現代に生きる〈お国柄〉
(はんとにほんじん・げんだいにいきる・おくにがら)

武光誠
(たけみつまこと)
[江戸学]

装幀者:芦澤泰偉
(PHP新書・657円・99/10/04第1刷・205P)
購入日:99/10/16
読破日:99/12/11

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藩と日本人 勤務先で発行している会員情報誌『CAT』のインタビューに登場したのがきっかけで、著者に興味をもった。そのときは、日本人のルーツである、苗字と家紋について述べられていた。その気鋭の歴史学者による、藩の成り立ちとお国柄のルーツを論じる書。江戸時代の藩の特徴をつかむのに適した1冊。
人の性格を分析するときに、血液型と並んで、使われるお国柄。このお国柄に影響を与えたのが、江戸時代の藩単位の多様な文化であったらしい。
江戸時代の藩支配で最も重要だったものが、検地であったというのが、本書を読んでよくわかった。そこには、土地に根ざした土着パワーを検地によって無力化させ、その後で、藩のカラーを付けていく、その色がやがてお国柄になるといった図式が見られる。

読みどころ●古代より村(ムラ)という小さな共同体で生活してきた日本人は、江戸時代に藩を単位にまとめられた。明治維新以後、藩支配は一掃され、中央集権による全国支配で、均質的な社会が作られていった。こうした中で、我々のうちに、藩文化の遺産としてお国柄が残っていった。本書は、加賀(=日本最大の藩)、薩摩・津軽・松前(=辺境の藩)などを例に、様々なお国柄の成り立ちや人々の関わり合いを考察してゆく。

目次■はじめに|第一章 お国柄と江戸時代の藩(藩と幕藩制/国と藩/国衙から城下町/中世の家と藩/国持大名の地位/三つの地域と藩/藩成立の諸事情/幕府の大名統制/二重統治の実態/独自の文化をもつ藩ともたない藩)|第二章 織豊政権から藩の独立(藩の誕生とその役割/豊臣政権と藩/豊臣政権下の二種類の大名/太閤検地と大名/軍役と領内支配/辺境の大名/織豊取立大名/秀吉の国分け/兵農分離の上の新たな支配/大名の首のすげかえ/優雅な大名の京都生活/御恩と奉公/蜂須賀家の阿波入国/土豪との妥協/加藤家から細川家への交代/二〇〇余りの藩)|第三章 地縁にもとづく藩、もとづかない藩(藩の成立が生み出した地域性/甲斐の三つの地域/御牧と清和源氏/旧氏族の没落/武田家の国境警固/南部家の戦国大名化/中央政権への接近/小田原への散陣/佐竹家の秋田入り/秋田城の繁栄/米沢へ移った上杉家/名君、上杉鷹山/戦国大名、最上家/最上家から鳥居家に/天童家の没落/織田家の入国)|第四章 最大の藩、加賀一〇〇石(北陸の繁栄/前田利家の加賀入り/一二〇万石の領主になる/石川県人の気質/三万の前田勢/組と役/藩主と一向宗との対立/本願寺との強調をはかる/城下町の建設/豪商が支配する金沢の町/町年寄をつとめた人びと/産物方を通じた支配/改作法の施行/一〇〇万石文化の誕生/工芸の振興/九谷焼と輪島塗/独特のお国柄「加賀ッポ」)|第五章 岡山藩と庄内藩の藩政(宇喜多家の岡山支配/池田光政の登場/陽明学に立った統治/家臣の統制/岡山藩の農政/備前風の出現/江戸時代後期の岡山藩/小農の苦しみ/最上家の旧領と譜代大名/酒井家の発展/幕府にならった職制/検地と新田開発/庄内藩と戊辰戦争)|第六章 辺境の藩、薩摩、津軽、松前(鹿児島県人の気質/島津家の誕生/外城支配から戦国大名/九州制覇ならず/関ヶ原の敗走/軍役と土地制度/天保の改革と薩摩の近代化/安東家の繁栄/大浦為信の独立/弘前城の築城/松前藩の成立/松前藩の知行制度)|第七章 廃藩置県がもたらしたもの(藩から県に/近代国家へのみち/なぜ廃藩が可能だったか/版籍奉還の上表文/親兵を設置する/山県有朋邸の密談/廃藩置県の断行/県名と藩名/中央集権へ)|おわりに

千利休とその妻たち 上・下
(せんのりきゅうとそのつまたち)

三浦綾子
(みうらあやこ)
[戦国]
★★★★☆

カバー:牧進
装幀:新潮社装幀室
解説:高野斗志美
時代:天文十八年
場所:堺、京、安土、山崎、大坂城ほか
(新潮文庫・各514円・各88/03/25第1刷・上97/06/10第23刷、下99/10/05第25刷・上290P、下313P)
購入日:99/11/11
読破日:99/12/07

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千利休とその妻たち 先頃、亡くなられた三浦さんの貴重な歴史時代小説。『氷点』や『塩狩峠』のイメージが強いせいか、時代小説を書かれていたことをつい最近まで知らなかった。刷数の多さから、彼女の人気の高さを実感した。
千利休と友人の妻おりきとの波乱に満ちた半生をロマン豊かに描き、家族愛と信仰、そして芸術と政治の対立など、しみじみと考えさせてくれる快作。三浦作品を初めて読んだが、この作家の特徴は、ストーリーテリングの上手さにあるように思える。先へ先へとどんどん読め、読み味がいい。

物語●堺の豪商・千宗易(後の利休)は、その年、28歳だった。武野紹鴎の弟子として、茶の湯の実力は広く知られはじめていた。妻は、阿波の領主・三好元長の妾腹の娘で、長慶の異母妹・お稲で、おゆうと与之介という二人の子供がいた。その青年・宗易は、友人の能楽者・宮王太夫三郎の妻・おりきに出逢い、激しく心を奪われてしまう…。

目次■なし

西行と清盛
(さいぎょうときよもり)

嵐山光三郎
(あらしやまこうざぶろう)
[平安]
★★★★☆☆

カバー:南伸坊
解説:清水義範
時代:保延元年(1135)
場所:油小路裏、西京極大路、西小路、嵯峨、天竜川、小夜の中山、石渚島、六波羅、高野山ほか
(学陽書房人物文庫・700円・99/11/22第1刷・373P)
購入日:99/11/23
読破日:99/12/01

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西行と清盛 以前に、兼好法師を主人公にした、『徒然草殺しの硯』(角川文庫・絶版)というとんでもない時代小説を読んだことがある。細部は忘れてしまったが、教科書で習ったエライ人のイメージを粉砕する面白い作品だった記憶がある。
本作品の中で、西行も清盛も、作者を彷彿させる「不良中年」として描かれているのが、いい。昔から平家嫌いだったが、清盛がいっぺんで好きになってしまったほど。拳法の達人(火坂雅志さんの作品にも、K-1戦士ばりの西行を描いたものがあるが)として登場する、西行が実にかっこいい。青春していたり、山田風太郎さんの主人公ばりのアクションを見せたりと、思わずニンマリしてしまう。プロレスばりの反則技を随所に使いながらも、朝廷内の権力闘争、保元・平治の大乱、源氏と平氏の興亡など、平安末期の歴史を一気に読ませてくれる。
作者が傾倒し、思い入れたっぷりということで、西行の歌の引用が抜群にうまい。

物語●「西行の歌はめちゃくちゃうまい。絶品である。(略) ここまで日本人を感動させ、だましてしまう作家とはナニモノであるか。かなりのワルを通りこした超凄玉ワルではあるまいか。これこそ文芸の王道である。」(あとがきより)
は「西方の彼岸(死地)を行く」という意味で、西行と名乗り、出家し、旅から旅へ、漂白の歌人という虚構をつくりあげた、平安文壇の巨人を、北面の武士の同僚だった平清盛との交流を通して描く時代小説の快作。

目次■第一部 一、闇の格闘/二、路上競馬/三、菊花宴/四、赤漆の矢/五、不義の情欲/六、義清、出家する/七、嵯峨の仙人たち|第二部 ここで閑話/一、東国への旅立ち/二、闇法師七人衆/三、清盛、矢を放つ|第三部 ふたたび閑話/一、多子立后の宴/二、歌を詠む日々/三、忠通義絶/四、西行、暗闘す/五、密命|第四部 またまた閑話/一、戦力分析/二、捨てた妻子/三、白河殿炎上/四、悪左府の最期/五、処刑の嵐/六、和歌の往来/七、身代わり/八、平治の乱|第五部 閑話休題/一、鹿ケ谷事件/二、奇怪な僧/三、二見ヶ浦の庵/四、怨霊の炎/五、わずか三十一文字|あとがき/文庫版あとがき/解説 清水義範