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1999年10月・神無月の巻
幽霊屋敷の女 はやぶさ新八御用帳 by 平岩弓枝 |
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謎ジパング 誰も知らない日本史 (なぞじぱんぐ・だれもしらないにほんし)
明石散人
カバーデザイン:石倉ヒロユキ |
♪京極夏彦作品の主人公・古書店主京極堂が“築地の先生”と呼び、師匠とするのが、明石散人さんだそうだ。そういえば、築地に明石町というのがありました。博覧強記の著者が、豊富な史料を駆使し、歴史の謎や定説に挑戦する“歴史ミステリー”。思わず納得させられる話の展開力が見事。麻雀の白發中の牌には、黒を示す玄武牌があった筈で、日本書紀の書かれた時代には、元明天皇、元正天皇、舎人親王、太安万侶、稗田阿礼らが麻雀卓を囲んだ…という話が好きだ。ほかには漢委奴国王の金印をめぐる話が面白かった。そういえば、白石一郎さんの短篇小説に『金印』の話がありました。『孤島物語』(新潮文庫)収録。 解説のタニグチリウイチさんは、「積ん読パラダイス」http://www.asahi-net.or.jp/~WF9R-TNGC/index.htmlの作者。 読みどころ●オムスビはなぜ三角形になったのかとか、将棋の駒のルーツや頼朝と義経の本当4062639629の関係など、ユニークな視点から歴史の謎を解き明かす歴史読み物。 目次■桃太郎の正体 お伽話はどうやって作られる?|どこからやって来たのか日本のお茶 抹茶の栄西VS.煎茶の円爾|オムスビの不思議 なぜ三角になったのか|「皿屋敷」の謎 番町それとも播州|日本最古の将棋駒 王様はいなかった?|金閣寺の伝説 究竟頂天井板の謎|江戸っ子の洒落 命を賭けた江戸の闘食会|富士山雑話 誰も気づかなかった? 北斎の失敗|宇宙を閉じ込めた日本人 日本人にとっての「有限」と「無限」|青いチューリップ 「野のユリ」はどこからやって来た? |伽羅先代萩 頼朝と義経は本当は仲がよかった?|黄金の国ジパング 東経一四一度線の驚愕|江戸文化立役者の罪 蔦屋重三郎と居候達に何があったか|川中島合戦の通説の真偽 上杉謙信は空を飛びたかった|失われた大四元 太安万侶は麻雀をしていた?|国宝金印のキズ (1)漢委奴国王の金印はいくつもあった|金印発見の裏事情 (2)金印をデビューさせた男|解説 タニグチリウイチ |
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天皇家の忍者 (てんのうけのしのび)
南原幹雄
装幀:安彦勝博 |
♪天皇家と忍びというと、隆慶一郎さんの『花と火の帝』(講談社文庫)の八瀬童子(やせどうじ)・岩介を思い出す。この南原作品では、八瀬のライバルとして、かつて後白河法皇の駕輿丁に命じられた静原(しずはら)の冠者(かんじゃ=若者)を登場させ、静原の側から描いている。
静原VS.八瀬という闇の対決と、朝廷(後水尾天皇)VS.幕府(徳川秀忠)という威信をかけた駆け引きがドキドキものである。とくに、秀忠のヒールぶりがいい。
物語●洛北の静原村は、代々朝廷の役目をおおせつかってきたが、後醍醐天皇が八瀬村に綸旨を与えてからその役目を解かれて、長年屈辱に甘んじ、憎しみをいだいてきた。朝廷につかえる役目を取り戻すことが、鞍馬での忍術をはじめ諸修行を終えて静原に戻ってきた竜王丸に課せられた使命だった。八瀬村が秘蔵する後醍醐天皇の綸旨を探索していた竜王丸は、ある日、八瀬を率いる釈迦童子の娘・若菜と知り合い、恋に落ちた…。 目次■静原の冠者/八瀬の娘/暗殺/京都所司代/御付武士/夜這い/四季の間/九条関白/鯖街道/寛永時代/御前会議/桔梗/静原葬儀/大御所上洛/寂光院/女間者/紫衣事件/遷都着工/密勅/江戸新都/東福門院 |
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妖鬼 飛蝶の剣 介錯人・野晒唐十郎 (ようき・ひちょうのけん・かいしゃくにん・のざらしとうじゅうろう)
鳥羽亮
カバーデザイン:中原達治 |
♪狩谷唐十郎は、小宮山流居合指南の看板を掲げながらも、かつての道場主である父親が斬殺され評判を落とし、残った門弟は師範代を務める本間弥次郎だけというていたらく。当然、道場主では飯が食えないので、試刀・刀の目利きや、依頼があれば切腹の介錯を生業としていた。介錯によって人の命を断つたびに、庭に石仏を立てて供養することから野晒(のざらし)という異名をもっていた。鳥居甲斐守一派相手に戦う第1弾『鬼哭の剣』、大塩平八郎の残党らしき盗賊団と対決する第2弾『妖し陽炎の剣』に続く、シリーズ第3弾。作者得意のチャンバラシーンは、さらにパワーアップ。ミステリー度が薄れ、伝奇色も強まった感じがする。 物語●鏡新明智流、心形刀流、神道無念流と、実力のある将来を期待される剣の遣い手が何者かに襲われて殺害され、刀を奪われる事件が続いた。現場には、狐と鳶を墨で書いた紙片が落ちていた…。有名道場の門弟が相次いで殺されたことが、巷の噂になっていたころ、小宮山流居合指南の看板を抱える貧乏道場主・狩谷唐十郎のもとに、藩の留守居役かと思わせるような恰幅のいい武士が、切腹の介錯を依頼にきた…。 目次■第一章 天狐地狐/第二章 飛蝶の剣/第三章 影目付/第四章 怪僧道慧/第五章 炎上/第六章 土佐吉光/解説 細谷正充 |
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榎本武揚 改版 (えのもとたけあき・かいはん)
安部公房
カバー:安部真知 |
♪入手困難と思われた、安部公房さんの『榎本武揚』が新本で手に入った。章の扉にアイコンが付いていたり、イラスト地図が入っていたりで、今から25年くらい前に刊行された本としては、おしゃれだ。『砂の女』などに代表される不条理でむずかしいというイメージがあった。今回は、時代小説ということでずいぶんとわかりやすくはなっているが、一筋縄ではいかない不思議さをやはり持っていた。時代の異なる、大東亜戦争時に憲兵を務めた男や、作者らしい語り手、元新選組の浅井十三郎など、いろいろな人の眼を通して、描かれる榎本像。榎本と対比させるために登場する土方歳三など、ユニークな手法をとっている。 榎本武揚という、幕末維新でもっともわかりにくい人物をうまく扱っているが、こういう描き方も正解かもしれない。 物語●伝説によれば、船で護送中の三百人の囚人たちが、途中で反乱を起こして、厚岸の港に上陸し、果てしない原野を越えて阿寒の山のふもとに彼らだけの共和国をつくりあげたという。しかし、その後の消息は不明…。この伝説に榎本武揚が関わっていたという。 目次■第一章/第二章/第三章/解説 ドナルド・キーン |
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巷説百物語 (こうせつひゃくものがたり)
京極夏彦
装画:『竹原春泉 絵本百物語―桃山人夜話』(多田克己編) 時代:不明 場所:越後・枝折峠、甲斐・夢山、伊豆・巴が淵、淡路、加賀・小塩ヶ浦、北品川、京洛・帷子辻ほか (角川書店・1,900円・99/08/31第1刷・511P) 購入日:99/09/05 読破日:99/10/16 |
♪『巷説百物語』は、WOWOWで、12月に映像化される。田辺誠一さん、遠山景織子さん、佐野史郎さんら、いかにも京極作品が似合いそうなキャスティングだ。小説のほうは、妖怪ミステリーと紹介されることが多いようである。読んだ印象としては、京極版「必殺」って感じがする。『絵本百物語―桃山夜話』に収録されている、妖怪話をモチーフにした、不可解な事件を、小股潜りの又市、山猫廻しのおぎん、考物の百介らが、解決する。京極堂シリーズのファンの方も楽しめる、連作時代小説だ。登場人物の設定や、擬音語や効果音の多用、幻想的なモノローグなど、相通じるところが多い。 表紙裏には、「帷子辻」に登場した『九相詩絵巻』を掲載。親切である。 物語●「小豆洗い」枝折峠という難所で、僧・円海が篠つく雨の中で更に奥の獣みちを進んだ…。「白蔵主」狐釣りの名人だった弥作は、5年ぶりにかつての猟場だった夢山に戻ってきた…。「舞首」巴が淵のほとりの小屋に、鬼虎の悪五郎という荒くれ者が棲みつき、里の者を脅かしていた…。「芝右衛門狸」富農の芝右衛門の孫娘が、夏祭りの夜、何者かに殺された…。「塩の長司」小塩ヶ浦に、加賀で一二の富豪・馬飼長者がいた。主人・二代目長次郎の評判というのが…。「柳女」北品川の入口に、柳屋という旅籠があった…。「帷子辻」嵐山の破れ御堂で、御行の又市は玉泉坊という小悪党から「九相詩絵巻」を見せられた…。 目次■小豆洗い|白蔵主|舞首|芝右衛門狸|塩の長司|柳女|帷子辻 |
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勇魚 上・下 (いさな・じょうげ)
C.W.二コル
装画:古座浦捕鯨絵巻(国文学研究資料館蔵) |
♪十数年ぶりにニコルさんの続編『盟約』The Allianceが刊行されたのを機に、数年ぶりに『勇魚』を手にした。読みながら、何とまあ、ストーリーを忘れてしまったことか、自分でも呆れてしまう。無茶苦茶面白かったということと、ニコルさんに似た船長が登場することくらいしか、記憶にのこっていなかったのだ。読み直してみて本当によかった。初読のように、わくわくしながら読めて、大いに感動した。ニコルさんの温かく真摯な話しぶりが眼に浮かぶような作品だ。英文で書かれて翻訳されて出版された時代小説(英語のタイトルはHarpoon、銛の意味)というのは、これが初めてではないだろうか。訳者の村上さんは、冒険小説の名翻訳で定評がある方だが、この作品でも実にきめ細かい仕事をされたという感じで、翻訳ものという違和感がなかった。 初読のときは、主人公の鯨取りの息子・甚助を中心に読み進めていったせいか、海洋冒険小説の印象が強く残ったが、再読してみると、甚助を新しい世界へと誘う人物として登場する、松平定頼を中心とした、優れた幕末小説でもあることがわかった。 捕鯨の町、太地というと、津本陽さんの『深重の海』(新潮文庫)の舞台でもあるが、本作品と時代的に一部重なるところがあり、描き方や捕鯨業に対する観方の違いが対比できて面白かった。 物語●紀州・太地(たいじ)は、鯨取りの村。筆頭刃刺・達太夫の長男甚助は、はじめての鼻切り(捕まえた鯨に致命傷を与える重要な務め)を成功させて、意気揚々としていた。そんなある日、紀州藩士・松平定頼が太地を訪れた。日本の将来を案じ、海防の要を説く定頼は、熊野海賊の末裔で、組織だった捕鯨を行う太地の鯨取りたちを沿岸警備軍の中核に据えようと考えていたのだった…。 目次■目次なし |
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浪人列伝 (ろうにんれつでん)
柴田錬三郎
装画:東啓三郎 |
♪さまざまなタイプの浪人を通して、江戸という時代を活写する一冊。江戸初期の浪人と中期の浪人、幕末の浪人の違いがわかりやすく描かれている。「学問浪人」で描かれる頼久太郎(後の頼山陽)の話が、奇想天外で面白い。彼を主人公とした長編で読んでみたいものだ。「発明浪人」では、平賀源内の秘密に対して、作者なりの答えを示していて興味深い。話としては、「妄執浪人」が秀逸。 物語●「血まみれ浪人」加藤明成が堀主水事件で城明渡しの上使を迎えた頃、会津でひとつの決闘が行われた…。「妄執浪人」武家から商家に嫁いだ嫁が護持院ヶ原で、浪人に襲われた…。「どもり浪人」長宗我部盛親の旗奉行にどもりのさむらいがいた…。「片腕浪人」明石掃部助全登は、関ヶ原役の直後、左腕の激痛に襲われた…。「仇討浪人」赤穂浪士が、吉良上野介に報復した元禄十五年より三十年前にある出来事が起こった…。「学問浪人」天才と狂人は紙一重というが、芸州藩学教授の息子・頼久太郎はそれに近かった…。「乞食浪人」うだつのあがらない浪人の川村左五郎は、病気の妻と子どもを連れて、江戸に出てきたが…。「発明浪人」両国の回向院で、善光寺の開帳があり、大工の棟梁和泉屋和助は、一儲けを企み、平賀源内に相談した…。「幕末浪人」政治総裁松平慶永は、山岡鉄太郎らの献策を容れて、浪人を集めて、浪士組を組織した…。「誤説浪人」天草四郎、芭蕉、高山彦九郎のエピソードを綴る。 目次■血まみれ浪人|妄執浪人|どもり浪人|片腕浪人|仇討浪人|学問浪人|乞食浪人|発明浪人|幕末浪人|誤説浪人|解説 清原康正 |
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人斬り半次郎 賊将編 (ひとぎりはんじろう・ぞくしょうへん)
池波正太郎
カバー装画:唐仁原教久 |
♪角川文庫からも1972年に刊行されている。影山さんの解説によると、「人斬り半次郎」は、もともと、新国劇の脚本として辰巳柳太郎さんのために書かれ、短編『賊将』(新潮文庫『賊将』収録)として発表された。その後、桐野の京都で活躍していた時代=人斬り半次郎と呼ばれていた時代を描きたくて、長篇の『人斬り半次郎』が生まれたという。エピソード1といったところか。作者の筆が、桐野ばかりでなく、西郷にもかなり当てられているのが意外な感もする。おそらく、池波さんの描いている西郷像が一般的な人のイメージに沿ったものだと思えるが、それにしても、西郷というのは描きにくい難しい人物だなあ。単純明快型の桐野と好対照である。 『人斬り半次郎』は、幕末編と賊将編に分かれているが、便宜上分けているのに過ぎず、上下巻とみた方が、作品を理解しやすい。桐野に仕える女中・おまきが、池波さんの曾祖母にヒントを得ているようで、何やらうれしくなった。ともかく、池波作品の面白さは、歴史小説より時代小説にあることを感じさせる一編でもある。 物語●中村半次郎は西郷の腹心として、存分に働き、維新は成った。薩長を中心とした明治政府のもとで、半次郎は桐野利秋と改名し、日本初代の陸軍少将となった。フランス風の軍服を身につけ、金銀をちりばめた特別製の軍刀を腰につるし、ザンギリ頭にフランス香水をつけ、馬丁にひかせた栗毛の駿馬にまたがり、得意の絶頂にあった。が、西郷は次々と改革を急ぐ新政府のやり口に苦りきっていた…。 目次■目次なし |
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幽霊屋敷の女 はやぶさ新八御用帳 (ゆうれいやしきのおんな・はやぶさしんぱちごようちょう)
平岩弓枝
装画:風間完 |
♪シリーズ10作目。シリーズものの捕物を読む愉しみは、おなじみのキャラクターたちと再会できることである。「はやぶさ新八」シリーズでは、主人公新八郎をめぐる、三人の女性(根岸肥前守の奥女中・お鯉、新八郎の妻・郁江、名岡っ引鬼勘の娘・小かん)がどのように描かれているかが毎回気になるところ。今回は、久々にお鯉が活躍し、郁江が危難にあうという、シチュエーションが面白い。根岸肥前守ファミリーの温かさと、賄賂が横行し、腐敗ぶりが目立つ幕閣の高官たちとの対比が強調され、行き先の見えない現在の政治状況にも通じるようで、作者の視線の厳しさを感じる。 物語●「江戸の盆踊り」新八は、お鯉とともに根岸肥前守のお伴で、芝大門の盆踊りを見物にでかけた。そこで、踊りの輪の中で人を捜していた…。「郁江の危難」祖母が亡くなり、法要などのために郁江はたびたび根岸の祖母の別宅を訪ね、そこで昔馴染みに出会う…。「大田屋の三人娘」御用部屋手付同心の大竹金吾に縁談があるという、相手は蔵前の札差で、そこには年頃の3人の娘がいた…。「幽霊屋敷の女」江戸に大雪が降った翌日、北町御番所に、毒入りの見舞酒が届けられ、それを飲んだ三人が亡くなるという事件が起こった…。「江戸の狼」駿河台あたりで、狼が出たという噂が大きくなりつつあり、新八はその捜査に乗り出すことになった…。「小町踊り」根岸肥前守が母代わりに慕う、向島の叔母が怪我をし、介添えのために、お鯉が派遣された。その頃、向島では、寮の空き巣狙いが続発していた…。 目次■江戸の盆踊り|郁江の危難|大田屋の三人娘|幽霊屋敷の女|江戸の狼|小町踊り |