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魔岩伝説 (まがんでんせつ)
荒山徹
カバーフォト:Joe Drivas/iconica/amana |
♪『高麗秘帖』『魔風海峡』に続く、朝鮮半島と日本のかかわりを描く伝奇三部作の完結篇。前作『魔風海峡』から時代が二百年下った文化八年(1811)に舞台を移し、泰平の時代をどう描くか興味深かったが、荒山さんはとんでもない物語を作り上げていた。謎の少女金春香が仄めかす徳川幕府二百年の泰平を震撼させる、李氏朝鮮と家康の密約とは? 国禁を犯し、朝鮮に渡る景元と追う柳生卍兵衛と、林大学頭の四男で若き日の耀蔵(後の鳥居甲斐守忠耀)。卓抜なる奇想で波瀾万丈の物語が紡ぎだされていく。ネタばれになるので、あまり書けないが、今回も山田風太郎さんと隆慶一郎さんの作品に匹敵する伝奇時代小説の傑作に仕上がっている。 朝鮮の歴史の勉強にもなるので、描かれている時代は少し後になるが、「宮廷女官 チャングムの誓い」で李氏朝鮮時代のことに興味をもった人にもおすすめ。また、朝鮮への玄関口として対馬が出てくる。対馬藩の剣術は東軍流だが、藩内に密かに流布しているという、山崎常左衛門という謎の刀術士が編み出した一睡流(いっすいりゅう)の黄梁剣(こうりょうけん)という秘剣が登場し、興味深い。
ブログ◆ 物語●五十年ぶりに朝鮮通信使が来日する直前、その窓口となる対馬藩の江戸屋敷に、「鈴木伝蔵」と名乗る曲者が侵入した。曲者は、「ハクセキトウの方々はおられぬか」と謎の言葉を残して去っていく。しかし、その人物は五十年前に死んでいた。事件の後、勘定奉行柳生主膳正久通の屋敷に、幕府の官学朱子学を司る林家の八代目当主林大学頭衡が訪れて密談を交わした。その後、主膳正は、庶子の柳生卍兵衛(ばんべえ)に、鈴木伝蔵と名乗る曲者を捕らえるように命じる。卍兵衛の魔手から曲者、実は美貌の少女金春香を救ったのは、家出中の若き遠山景元(遠山の金さん)だった……。 目次■序章 徘徊する亡霊/第一章 剣客・柳生卍兵衛/第二章 朝鮮通信使を廃絶せよ/第三章 対馬脱出/第四章 追撃と迎撃の宴/第五章 耽羅忍法フェオリバーラム/第六章 真説・春香伝(チュニャンジョン)/第七章 虎口からの脱出/第八章 湖底の魔岩/第九章 孤城、雪原に陥つ/第十章 日光東照宮の血戦/終章 はるかなる雲に帰る/解説・北上次郎 ここから始まる本のリンク▼『十兵衛両断』(荒山徹著・新潮文庫) |
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織江緋之介見参 不忘の太刀 (おりえひのすけけんざん・わすれじのたち)
上田秀人
カバーデザイン:ムシカゴグラフィックス スズキ・クモ |
♪御免色里の吉原が舞台に、織江緋之介が活躍するシリーズ第2弾。今まで入手しそびれていたものをようやくゲットした。上田さんは『竜門の衛』でデビュー以来、文庫書下ろしで10タイトルほど、長編をリリースされている。いずれもハラハラドキドキで、趣向を凝らした、エンターテインメント度の高い面白い作品ばかりで、外れがない作家の一人だ。『不忘の太刀』は、『悲恋の太刀』に続く、「織江緋之介見参」シリーズの第2弾。主人公は、将軍家剣術指南役小野次郎右衛門忠常の三男・小野友悟こと織江緋之介。武者を鎧ごと両断するために作られた普通の太刀よりも肉厚で刃渡りも長く重い胴太貫を愛刀としている。 しかし、吉原での死闘で刀身を曲げてしまい、傷ついた部分を取り除き摺り上げて定寸より少し短い二尺五寸(約75センチ)ほどの太刀に変えた。刀を変えたことで、一刀流独自の後の先の技が使えなくなり、先の先の剣に変わっていく。緊迫感あるチャンバラシーンが随所に見られて剣豪小説ファンにはうれしいところ。 堀田正信の奇行と、三代将軍家光が亡くなったときの殉死、家光の弟忠長の自害の謎を絡めて描いた時代小説。もちろん、織江緋之介の剣の冴えも堪能できる見せ場はたくさんある。敵役として、老中首座松平伊豆守信綱が配されていて、悪巧みと執念深さでいい味を出している。
ブログ◆ 物語●織江緋之介は、吉原の用心棒を務めながら、大切な人を守りきれなかった後悔に苛まれ、なにもかも捨てて放浪し、高崎の刀鍛冶の旭川(きょくせん)の元に身を寄せていた。時は万治三年(1660)九月、下総国佐倉城主堀田上野介正信は願人坊主姿で、駒込の水戸藩中屋敷を訪れた。執政を非難し、所領を返上する上申書を書き、無断で出家し、徳川光圀に別れを告げに来たという。幕閣の不穏な動きを察知した光圀は、織江緋之介を探せと命じるが……。 目次■第一章 江戸の熾火/第二章 厳冬の戦い/第三章 新吉原攻防/第四章 妄執の権/第五章 骨肉の残滓/終章/上田秀人 著作リスト ここから始まる本のリンク▼『吉原御免状』(隆慶一郎著・新潮文庫)、『竜門の衛』(上田秀人著・徳間文庫) |
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秋の金魚 (あきのきんぎょ)
河治和香
装画:三谷一馬 |
♪小学館文庫小説賞受賞作。迂闊なことに三省堂書店で本書を手に取るまで、時代小説だとは思ってもみなかった。著者の河治さんは、映画のシナリオライターとして活躍されたのちに、画家で江戸考証の大家であった三谷一馬さんのもとに弟子入りした人。
『秋の金魚』は、ヒロイン留喜(るき)が、江川家の侍医の息子肥田浜五郎と手代の息子松岡磐吉との間で揺れ動く様子を書き綴る形をとっている。この本を読むまでは、浜五郎も磐吉も、江川家の家臣であるばかりか、長崎海軍伝習所で学び、日米修好通商条約批准書交換のために、咸臨丸で渡米する一行に名を連ねた実在の人物だとは知らなかった。浜五郎は同じく咸臨丸で渡米した福沢諭吉らと一緒に写った写真が残されて、切れ長の目をした、なかなか男前である。 そのほかにも、同じく咸臨丸で太平洋を渡った赤松大三郎(則良)も傍役で登場するほか、明治の文豪の名も出てきて、知的好奇心をくすぐられる。 幕末から明治にかけて、二人の男性の間で揺れ動く女心をきめ細やかに描いた物語の面白さとは別に、対照的なこの二人の人物に興味を持った。ちょうど、佐々木譲さんが『幕臣たちと技術立国 江川英龍・中島三郎助・榎本武揚が追った夢』を出されたところで、読んでみたくなった。
ブログ◆ 物語●安政三年夏、十八歳の留喜は九つ年上の浜五郎から、ビードロ玉の中に浮かぶ赤い金魚を買ってもらった。留喜は伊豆韮山代官江川太郎左衛門の手代だった柏木林之助の娘だが、父は十数年前に自らの妻と一人息子を惨殺した揚げ句、近隣の十名もの人々を殺傷し、その果てに自害したのだった。原因は、突然の乱心という。乱心者の娘という烙印を押され、ただ一人生き残った留喜は、いつも周囲に気兼ねしながら小さくなって生きていた。その留喜にいつもやさしくするのが、江川家の侍医肥田春安の息子浜五郎だった。しかし浜五郎に心引かれながらも彼にはすでに妻がいる。やがて、留喜に江川家元締手代の次男松岡磐吉との縁談が持ち上がった……。 目次■第一章 金魚玉/第二章 金波銀波/第三章 帰り花/第四章 迷子札/第五章 隔夜/受賞にあたって/解説 高橋治 ここから始まる本のリンク▼『開陽丸、北へ 徳川海軍の興亡』(安部龍太郎著・講談社文庫) |
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風雲 交代寄合伊那衆異聞 (ふううん・こうたいよりあいいなしゅういぶん)
佐伯泰英
装画:「大日本五道中図屏風」(三井記念美術館蔵) |
♪『変化』『雷鳴』に続く、「交代寄合伊那衆異聞」シリーズ第3弾。激変する幕末という時間軸が、波瀾万丈で展開の大きなストーリーとぴったりマッチして、今回も文句なしに面白かった。主人公の座光寺藤之助為清が、老中首座の堀田正睦に長崎行きを命じられ、激動する時代を乗り越えるためには、剣術で肚(はら)を練り、肝を鍛えることが役立つと答えるシーンがカッコいい。 物語は江戸から長崎に舞台を移して展開していく。佐伯さんの他のシリーズの主人公たちと同様に、藤之助がどのような成長ぶりを示していくのか、この後の展開が楽しみだ。 物語の冒頭で、異端の剣士、大石進を彷彿させる武芸者が登場する。大石進は柳河藩士で大石神影流の祖。天保三年(1832)に江戸へ出て、その実力を他流試合で問うた。江戸府内の名門道場に次々と挑み、彼の突きを打ち破るものはいなかった。千葉周作は、大石の突きを防ぐために樽の蓋を竹刀の鍔に使用し、辛うじて引き分けたといわれる。
ブログ◆ 物語●千葉周作亡き後の北辰一刀流千葉道場玄武館に、かつて江戸の剣術界を震撼させた大石進ばりの道場破りが現れた。五尺三寸の長竹刀、左利きを利しての左手片手突きを得意にする武芸者熊谷十太夫である。熊谷と立ち合った千葉道場の高弟佐和潟清七郎は喉を突き破られ重体になる。師の千葉道三郎の代わりに座光寺藤之助為清が立ち合う……。 目次■第一章 左片手突き/第二章 講武場の鬼/第三章 伝習所候補生/第四章 カステイラの味/第五章 鉈と拳銃/解説 縄田一男 ここから始まる本のリンク▼『悲愁の剣―長崎絵師通吏辰次郎』(佐伯泰英著・ハルキ文庫) |
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無言殺剣 火縄の寺 (むごんさつけん・ひなわのてら)
鈴木英治
カバー立体切り絵:百鬼丸 |
♪剣の腕は無類だが、一言も口を利かない謎の浪人と古河のやくざ郡兵衛一家の三男坊・伊之助の活躍を描く「無言殺剣」シリーズの第二弾である。片や過去をもつニヒルで無口な剣豪、片や純情ぶりとやさしさがらしからぬやくざの息子の二人が、不思議なことにお互いを認め合い思いやるところが何ともいい。剣豪小説の名手である鈴木さんの作品らしく、チャンバラシーンが面白い。とくに、謎の浪人、音無黙兵衛(無口なので伊之助が便宜上付けた名前である)が、掟破りなほど強いのが面白い。1対多の闘いで、多勢に無勢ということがなく、完膚なきまでに相手を倒してしまうのである。 前作が伏線となり、謎の浪人の命が何者かに狙われるのだが、ただ、狙っても倒せないので、敵は卑劣な手を使うのだが……。今回は、伊之助の兄弟が登場したり、黙兵衛が江戸での住まいとする寺の住職として休雲と美人の娘初美が彩りを添えたりして、物語の興趣を盛り上げてくれる。敵役(荒垣外記)がスケールアップして、主人公(黙兵衛)の強さを引き出してくれるのもいい。面白い剣豪小説の登場である。
ブログ◆ 物語●関宿城主・久世豊広を斬殺した謎の浪人・音無黙兵衛は、古河のやくざ一家の三男坊の伊之助を伴い江戸へ出る。伊之助は、江戸でやくざ見習中の兄、作兵衛と伝之助の二人に再会する。しかし、三兄弟の背後には、黙兵衛に大切な人を殺され、復讐を誓い命を狙う何者かの罠が迫る……。 目次■第一章/第二章/第三章/第四章 ここから始まる本のリンク▼『半九郎残影剣』(鈴木英治著・ハルキ文庫) |
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山峡の城 無茶の勘兵衛日月録 (さんきょうのしろ・むちゃのかんべえじつげつろく)
浅黄斑
カバーイラスト:渡辺文也 |
♪ミステリー畑で活躍する浅黄さんの時代小説。『芭蕉隠密伝 執心浅からず』が面白かったので、今回も期待して読み始める。主人公の勘兵衛は、七十石で郡方勘定役小頭を務める落合孫兵衛の長男で、このとき十一歳だったが、「無茶の勘兵衛」と周囲から呼ばれていた。 そのあだ名の由来はこうだ。三歳のときに雪に埋もれて死にかけたことがあり、五歳のときには湧水池で溺れかけたことがあり、七歳のときには三丈(約9m)の楠に登って樹上で立ち往生して大騒ぎになり、九歳のときには梅雨で水かさを増した川に飛び込んで半里(2キロ)も流され、一年おきに無茶をしでかす童だとの評判が立ち、ついには「無茶の勘兵衛」と呼ばれ、城下で有名人になってしまったのだ。 物語は、「坊ちゃん」を連想させるような無鉄砲な勘兵衛少年の成長とあわせるように、藩内の不吉な影が大きくなり、抗争劇が激化していく。そしてついには、一人の藩士の斬殺体が発見される……。 藩内の抗争を背景に少年の成長を描く作品としては、藤沢周平さんの『蝉しぐれ』や宮本昌孝さんの『藩校早春賦』、羽太雄平さんの『峠越え』などの傑作がある。青春時代の友情や初恋、純情などが、どす黒い大人の争いと対比して描かれることで、清冽さがいっそう際立ち、読み味がよくなっている。
ブログ◆ 物語●十一歳の落合勘兵衛は、二つ年上の親友伊波利三から、藩主の若君、左門が勘兵衛に会ってみたいという話を聞いて素っ頓狂な声を上げた。利三は左門の児小姓を勤めていたが、若君に城下の様子などを面白おかしく話して聞かせる中で、「無茶の勘兵衛」のことを話した結果、若君が勘兵衛に興味を覚えたらしい。若君への御目見得をすることになった七十石の落合家は大騒ぎに……。 目次■無茶の勘兵衛/松田拝領屋敷/清滝社/惜別の竹とんぼ/組屋敷の泥棒/不倫の余波/淀の小車/父の異変/凶事/勘兵衛と父/讒訴/酔芙蓉/転回/峠の刺客/有為転変 ここから始まる本のリンク▼『藩校早春賦』(宮本昌孝著・集英社文庫) |
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深川駕籠 (ふかがわかご)
山本一力
カバー:原田維夫 |
♪深川の駕籠舁き・新太郎を主人公とした時代小説。新太郎は臥煙(火消)の纏振りだったが、ケガがもとで高所恐怖症になり臥煙を止め、その相肩の尚平は安房勝浦の漁師だったが、草相撲で網元の息子にケガを負わせてしまい、駕籠舁きになった。駕籠舁きが主人公ということで、その自慢の脚にスポットを当てた話を連作形式で綴った市井人情小説だ。時間までに約束の場所に早駕籠が着けるかどうかを描いたり、超重量級の相撲取りを乗せた駕籠で、川船と速さを競ったりなど、スリリングな展開の話が描かれている。 クライマックスは、深川から高輪大木戸までの一里半を往復する駆け比べで、復路では大川を泳いで渡るという趣向が凝らされてた。この駆け比べに参加するのが、新太郎、千住の駕籠舁きの寅、飛脚の勘助、鳶の源次の四人。その一着を当てる単勝と一着、二着を当てる連勝の勝ち札まで発売され、深川の町は大いに盛り上がることに。 新太郎や尚平のほかにも、何かと二人とぶつかる千住の寅や、一筋縄ではいかない偏屈爺の家主の木兵衛、鳶の親方辰蔵、今戸の渡世人の芳三郎など魅力的な登場人物たちがいる。また、他の作品でおなじみの損料屋の喜八郎や料亭江戸屋の女将秀弥なども登場して、山本ファンにはうれしいところだ。 物語●「菱あられ入谷鬼子母神で、深川の駕籠舁きの新太郎と尚平は、鳶の源次に呼び止められて、鬼子母神を入谷と間違えた草加の米とあられ問屋の手代を雑司が谷まで乗せていくように頼まれた。しかも、鳶の辰蔵と八ツまでに送り届ける賭けまでして、早駆けすることになった……。「ありの足音」新太郎と尚平は、家主の木兵衛から、同じ長屋に住む正之助が筑波山で採ったきのこを江戸まで運ぶ仕事を命じられる……。「今戸のお軽」新太郎と尚平は、毎月十五日に文銭の詰まった箱と木兵衛とを、深川から入谷まで運ぶ決め事があった。その帰りに、坂本村の飯屋に寄った……。「開かずの壷」木兵衛が面倒をみて、武家奉公がかなった孤児の順吉が奉公先で大きなしくじりをしたという……。「うらじろ」いつものように文銭の箱と木兵衛を運んでいた新太郎と尚平の駕籠が神田川土手で、匕首をもった三人のならず者に襲われた……。「紅白餅」新太郎、飛脚の勘助、千住大木戸駕籠の寅、鳶の源次の四人が駆け比べをすることになり、深川の町は一枚二十文で買える勝ち札人気で盛り上がっていた……。「みやこ颪」南町奉行所同心の大野清三郎は、木兵衛におのれの面目を潰され、十手持ちを操っての意趣返しを考えていた……。 目次■菱あられ|ありの足音|今戸のお軽|開かずの壷|うらじろ|紅白餅|みやこ颪|解説・細谷正充 ここから始まる本のリンク▼『おんな飛脚人』(出久根達郎郎著・講談社文庫) |
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遠謀 密命・血の絆 (えんぼう・みつめい・ちのきずな)
佐伯泰英
カバーフォト:中村修 |
♪お気に入りの「密命」シリーズの第14作目。金杉惣三郎の次女結衣が出奔した。しかも、旅芸人一座とともに尾張に向ったという。またしても尾張徳川家の陰謀か?今回の最大の見どころは、尾張柳生の手に落ちようとする結衣の窮地に、金杉惣三郎と息子の清之助が力を合わせて立ち向かうところ。回国修行中の清之助は大和の柳生から、惣三郎は江戸から名古屋に向かい、二年四カ月ぶりの父子の再会である。 物語の主人公が、惣三郎から清之助に徐々に切り替わろうとしている。惣三郎がちょうど五十を迎え、この巻はそのターニングポイントになる作品のように思われる。尾張柳生から五人の遣い手が、清之助の修行する大和の柳生の庄を訪れるなど、見逃せない趣向もあって、楽しめる一編。
ブログ◆ 物語●結衣の異変に気づいたのは母親のしのだった。口数が急に少なくなり、夢見るような表情で思いふけっていた。しのはわが娘の思春期にありがちな微妙な変化を自分の胸のうちだけにしまっておこうとした。そんなある日、結衣が使いに出るといって家を出たまま戻ってこなかった。着替えや貯めていた小遣いも持ち出し、覚悟のうえの家出だった。惣三郎らが調べてみると、旅回りの芝居の一座の後を追ったらしい……。 目次■序章/第一章 掛け取り屋/第二章 結衣の失踪/第三章 柳生の若武者/第四章 十兵衛杉の決闘/第五章 広小路親子舞/解説・井家上隆幸 ここから始まる本のリンク▼『剣客商売』(池波正太郎著・新潮文庫) |
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熾火 勘定吟味役異聞(二) (おきび・かんじょうぎんみやくいぶん2)
上田秀人
カバーイラスト:西のぼる |
♪前作『破斬』が抜群に面白かった「勘定吟味役異聞」シリーズ第2弾。綱吉時代の恣意的で乱脈な政治を儒学の考え方に沿って革新しようとする新井白石。その手足として白羽の矢が立ったのは、部屋住みのため、本来継ぐはずではない勘定筋の家を継ぐことになった、一放流の剣士・水城聡四郎だった。 前作で、紀伊国屋文左衛門や荻原近江守重秀、後藤庄三郎光富らの、小判改鋳をめぐる不正を暴いた聡四郎。今回立ち向かうのは、吉原運上金をめぐる疑惑。隆慶一郎さんの『吉原御免状』を彷彿させる物語展開に引き込まれた。 物語●荻原近江守重秀を勘定奉行の座から追い落として、水城聡四郎(みずきそうしろう)が得たのは、わずか五十石の加増と新井白石の走狗という烙印であった。逆に、勘定筋を裏切ったことにより、同僚、上司からの恨みを一身に集め、回ってくる書付一枚ない状態だった。そんな折、新井白石は執務部屋に残された吉原運上手控(メモ)から、将軍家が年に一万二千両の運上を取り上げていたことを知る……。 目次■第一章 闇の再動/第二章 金色の操糸/第三章 剣閃の舞/第四章 傾城の戦い/第五章 女城陰陽/あとがき ここから始まる本のリンク▼『織江緋之介見参 悲恋の太刀』(上田秀人著・徳間文庫) |
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江戸の精霊流し 御宿かわせみ三十一 (えどのしょうりょうながし・おんやどかわせみ31)
平岩弓枝
カバー:蓬田やすひろ |
♪「御宿かわせみ」シリーズの第31巻。文庫の最新作。単行本のほうは、江戸最後の作品『浮かれ黄蝶』がリリースされたところ。かわせみを読んでいると、江戸の四季が抒情的に描かれていて、現在の東京の喧騒を忘れて、しばし和める時間がもてる。今回の巻では、お盆の精霊流しのように、はかなくせつない女性を描く表題作が見事。「北前船から来た男」もこのシリーズらしい結末のつけ方で印象に残る話の一つである。 さて、「野老沢」と書いて「ところざわ」と読み、今の「所沢」のことだとわかった。その名の由来は、在原業平がこの地に差し掛かり、「野老(ところ)」という山芋が群生している沢を見ながら「この地は野老の沢か?」と話したことを土地の人がこれを聞いて土地の名を野老沢(ところさわ)と呼ぶようになったということだ。幕末までは「野老沢」と表記されていたという。 この秋からは、「御宿かわせみ」の明治編が始まるという。楽しみだ。
ブログ◆ 物語●「夜鷹そばや五郎八」夜鷹蕎麦売りの老人五郎八が柳原の堤の草むらで殺されているのが見つかった……。「野老沢の肝っ玉おっ母あ」かわせみの女中お石の姉おてるがお石に会いにきた……。「昼顔の咲く家」麻生宗太郎は、清国の酒を入手したので、東吾と二人で、神林麻太郎や畝源太郎、花世らが入り浸り世話になっている高山仙蔵のもとを訪ねた……。「江戸の精霊流し」かわせみで新しくやとった女中のおつまは二十五歳。奉公人の周旋業者の紹介だったが、すれたところがなく、無口だが気が利き、勤めぶりも陰日なたなかった……。「亥の子まつり」十夜法要に出かけた老女が寺で急に亡くなった。義理の息子に疑いがかけられるが……。「北前船から来た男」東吾は、麻生麻太郎と畝源太郎の二人の子どもたちを舟釣りに誘う出だすが、その舟の船頭で、北前船に乗っていた卯之吉と知り合う…。「猫絵師勝太郎」江戸で虎猫の七福神の絵が流行っていた。築地の茶道の師匠の家で催された茶会の帰り、るいはくくり袴を着た男に跡をつけられる……。「梨の花の咲く頃」もと、かわせみに奉公していたお梅が嫁ぎ先の行徳から遊びに来た。従妹の許婚の男が植木屋で奉公していたが消息がわからなくなったという……。 目次■夜鷹そばや五郎八|野老沢の肝っ玉おっ母あ|昼顔の咲く家|江戸の精霊流し|亥の子まつり|北前船から来た男|猫絵師勝太郎|梨の花の咲く頃 ここから始まる本のリンク▼『はやぶさ新八御用帳』(平岩弓枝著・講談社文庫) |
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恋ぐるい (こいぐるい)
諸田玲子
カバー装画:村田涼平 |
♪本草学者として戯作者として名高い平賀源内。彼に一途な思いを寄せる女・野乃の情愛を描く時代長編。『源内狂恋』(2002年1月、新潮社刊)を改題し加筆改稿したもの。平賀源内というと、小学生のころ(1971〜1972)にNHKテレビで見た「天下御免」(早坂暁脚本)の原初体験のせいか、山口崇さん演じる颯爽とした源内像にあこがれ、江戸と現代がクロスオーバーするような新感覚の時代劇に、毎週楽しみに見たことを記憶している。 そのせいもあって、今まで時代小説に出てくる平賀源内のイメージについていつも違和感を感じていた。 本草学者、戯作者、浄瑠璃作者、山師、絵師その他もろもろの肩書をもち、エレキテルを作ったり、源内櫛や金唐革の小間物を作って売ったりしたり、八面六臂の活躍をしながら、逆にどこか一流になりきれない甘さをもった不思議な人物。この作品は、彼の不思議な生涯を、源内に仕える下女の視点から描くことで解き明かした傑作。新しい源内像が再構築できた気がする。 源内の半生を描くことは、よく知られている人物ゆえに、多くの史資料を調べなければならないし、源内の戯作や浄瑠璃などの著作物にあたってみることも必要で、なかなか難作業だと思うだけに、この作品に出合えたことに感謝している。
ブログ◆
物語●平賀源内は、癇癪が高じて、米屋の次男で門弟の久五郎と喧嘩騒ぎを起こした末に、斬殺してしまい、小伝馬町の牢に収容された日から始まる。源内は、喧嘩の際に左の脇腹を刀傷を負い、鬱屈して自暴自棄になっていた。揚屋と呼ばれる大牢で、そんな源内を面倒をみるのが、患家の人妻とねんごろになった末に、その亭主を斬殺し、収容されていた老医師・芳玄だった。牢内で痛む脇腹を抱えてまどろむ源内の記憶は、二十七年前の初夏、郷里の讃岐国志度浦に帰っていた……。 目次■なし ここから始まる本のリンク▼『誰そ彼れ心中』(諸田玲子著・新潮文庫) |
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闇を斬る 残月無情 (やみをきる・ざんげつむじょう)
荒崎一海
カバーイラスト:蓬田やすひろ |
♪『闇を斬る 直心影流龍尾の舞い』『刺客変幻』『四神跳梁』に続く「闇を斬る」シリーズ第四弾。主人公の鷹森真九郎は、今治藩の目付役を務めていたが、藩内の抗争に巻き込まれて、妻の雪江を伴って出奔し、江戸で直心影流十二代目団野源之進義高の代稽古で、筑後国柳河藩立花家の江戸藩邸道場に通っている。 江戸に出てすぐに、数人の侍に襲われた大店和泉屋宗右衛門を救ったことから、“闇”と呼ばれる謎の徒党と対決することになる。前作では、北町奉行所同心の桜井琢馬や岡っ引き藤二郎らの協力で、江戸を震撼させる盗賊集団四神一味の捕縛に成功するが、それは闇のごく一部であった。 物語は、剣難に加えて女難の雰囲気も漂わせつつ展開していく。このシリーズの魅力の一つは、ふんだんに出てくるチャンバラシーン。真九郎は、弧乱と霧月の秘剣を持っているがいずれも多人数を相手にしたときの見切りとかわしを中心とした剣技である。そして彼の強さを引き出しているのが、放火、強盗、殺人で江戸の震撼させるかたわら、真九郎に次々と刺客を送り込む闇の存在。 真九郎と雪江の夫婦が育ちがいいせいか、お金や欲に恬淡としているので、その言動が爽やかであり、チャンバラシーンが多い割りに、血なまぐささをあまり感じず、読み味がよい。
ブログ◆ 物語●本所亀沢町にある団野道場からの帰り、仙台堀で真九郎は闇から送られた四人の浪人たちに命を狙われる。そこで、二カ月前に両国薬研堀で八人の浪人に襲われた際に、腕の傷の手当てしてくれた門前仲町の芸者染吉と再会する……。 目次■第一章 門前仲町の名妓/第二章 蠢動/第三章 罠/第四章 雨の影/第五章 名花一輪 ここから始まる本のリンク▼『密命 見参! 寒月霞斬り』(佐伯泰英著・祥伝社文庫) |
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あきんど 絹屋半兵衛 上・下 (あきんど・きぬやはんべえ)
幸田真音
カバー:平凡社『きもの文様図鑑』より |
♪『藍色のベンチャー』改題。単行本刊行時から気になっていた作品。幸田さんは、『小説ヘッジファンド』『偽造証券』『日本国債』『代行返上』『傷―邦銀崩壊―』など、多くの経済小説で活躍されている。この作品は、著者初の歴史小説だが、あとがきで三十年近く前に湖東焼の染付の皿と出会って以来、ずっと温めてきた題材だという。 その湖東焼の窯を起こした人物はどんな思いで始めたのか、彦根藩でどのようにしてそれが発展し、幕末の激動の中で数奇な運命をたどっていくのか、著者が長年集めてきた豊富な歴史資料を駆使しながら、リアリティーがありながら、ロマンあふれる物語が展開されていく。 物語の序章で桜田門外の変を伝える江戸からの第一報が紹介されている。それは近江の豪商「丁吟」による仕立便(臨時速達便)で、丁吟江戸店から京店へ、わずか三日半で送って伝えられ、京店から近江本店へ同日中に転送された。彦根藩が江戸藩邸から国元へ報じたものよりも半日も先んじていたという。大老井伊直弼の駕籠への襲撃の様子や、死傷者の人数、名前に至るまで実況描写されたうえで、この異変後の店の対策も忘れずに記されていた。 最初から時代経済小説の面白さを味わいつつ、「近江商人」と呼ばれる人たちの情報伝達力の見事さ、凄味を感じ、物語に引き込まれていく。物語の前半は、彦根に有田や瀬戸や京に負けない新たなやきものを作ろうとする絹屋半兵衛とそれを支える妻・留津のベンチャースピリッツを描いていく。最初の窯での失敗や販売ルート開拓の困難、共同出資者の脱落という問題を抱える中で、何とか良質なやきものを作り出すことに成功するが……。 そうした苦闘の日々の中で、半兵衛は、「埋木舎(うもれぎのや)」と呼ぶ屋敷に住み、鬱屈した生活を送る部屋住みの鉄三郎(後の井伊直弼)と出会う。激動期の幕末、湖東焼は品質を大きく高める。そして、それは半兵衛の手中を離れ、彦根藩自体の命運を握るものに重大なものに変わっていく。後半では、半兵衛と留津とともに、井伊直弼の生き様にもスポットが当たっていき、物語はダイナミズムを加えてますます面白さを増していく。 井伊直弼の幕末における言動について、現代的な視点から肯定的にとらえ再評価していたのが印象的だった。 幸田真音さんHP http://www.kt.rim.or.jp/~maink/
ブログ◆ 物語●買い付けの旅から戻った彦根の呉服古着商の絹屋半兵衛は、新妻の留津にきれいな染付の皿を見せた。「きれい……」と留津は思わず声を漏らした。これまで見たこともないようなきめ細かな白。その白の地が皿の周囲をぐるりと取り囲み、中央には太い松の幹に降り立った精悍な鷹の姿が描かれている。この見事な皿のような石物と呼ばれる茶碗類が京で流行っているという。半兵衛は、自身もこの石物の茶碗作り、やきものを始めてみたいと言った…。 目次■序章/第一章 起業/第二章 絹屋窯/第三章 出会い/第四章 藩窯(以上上巻)|第五章 移管/第六章 絵師/第七章 近江の商人/第八章 湖東焼/終章/あとがき/参考文献・取材協力/解説 縄田一男 ここから始まる本のリンク▼『桜田門外ノ変 上・下 』(吉村昭著・新潮文庫) |
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真葛ヶ原の決闘 祇園社神灯事件簿 三 (まくずがはらのけっとう・ぎおんしゃしんとうじけんぼ)
澤田ふじ子
カバー装画:蓬田やすひろ |
♪『奇妙な刺客』『夜の腕』に続く、「祇園社神灯事件簿」シリーズ第三弾。主人公は、平堂上(公家)・植松雅久の庶子で、馬庭念流の達人で祇園社の神灯目付役・植松頼助(うえまつよりすけ)。珍しくカバーの装画とデザインのクレジットが入っていなかったが、イラストは蓬田やすひろさんの絵。表題作は、弱者の味方である神灯目付役らしい活躍ぶりが見られる仇討ち話。 中川卯之助の父新兵衛は、敵探しに出て十五年、今では病に伏してしまい、やっと見つけた敵から逆に命を狙われていた。父に代わり敵を討とうとする卯之助はわずかに十歳あまり。卯之助の健気さ、新兵衛の無念さに共感した植松頼助、孫市、村国惣十郎の三人の神灯目付役は助太刀を決意する。しかし、敵は卑怯にも六十人もの助勢があった。六十人の敵に、三人の目付役が挑む。目付役が敵討ちの場に選んだのが、真葛ヶ原だった。そこには数的な不利を覆す秘策があった。 「僧兵の塚」はハートウォーミングだが、「梟の夜」と「鳥辺山鴉心中」はちょっとせつないお話。とくに、「鳥辺山鴉心中」では博打とお金の怖さを痛感させられた。 村国惣十郎がかつて出仕していた藩について、「僧兵の塚」までは出石藩だったのが、「鳥辺山鴉心中」では篠山藩に変わっていたのが気になる
ブログ◆ 物語●「僧兵の塚」祇園社の南参道の先で、頼助と相役の孫市は、料理茶屋・阿波屋が盗賊に押し入られるの見つけ、店内に助けに入る……。「真葛ヶ原の決闘」惣十郎の息子で十七歳になる喜平太は、頼助に頼まれて、ろうそく屋の林屋に、麻袋いっぱいのろうそくの燃え滓を持ち込んだ。その帰りに、かつて住んでいた長屋で顔なじみの少年・中川卯之助と出会った……。「梟の夜」頼助が祇園社の見廻りに出かけている間に、祇園祭で警固をともにする四座雑色荻野家の雑色小頭の安蔵が訪れたが用件も残さずに帰っていった。頼助は訝しく思うが……。「鳥辺山鴉心中」祇園社秘蔵の狩野探幽作「神武天皇東征図」が補修と表具替えのために市中の表具屋に出されたことから事件が起こった…。 目次■僧兵の塚|真葛ヶ原の決闘|梟の夜|鳥辺山鴉心中|あとがき/解説 菊池仁/著作リスト ここから始まる本のリンク▼『足引き寺閻魔帳』(澤田ふじ子著・徳間文庫) |
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月ノ浦惣庄公事置書 (つきのうらそうしょうくじのおきがき)
岩井三四二
カバー:東京国立国博物館所蔵重要文化財「月次風俗図屏風」 |
♪第10回松本清張賞受賞作。単行本刊行時に一度読んでいるが、読書録を残していなかったので、再読にチャレンジ。室町中期の近江の農村を舞台にした土地をめぐる公事(裁判)という、おそろしく地味なテーマを扱っていながら、リアリティーに富んだ一級のエンターテインメントに仕上げている。とくにラストに向かって、公事のプロセスが丹念に描写され、その一方で代官源左衛門の復讐じみたような圧政ぶりが生き生きと描かれていて、面白かった。 この本を読んでいて、中世の近江地方は京や比叡山にも近いこともあり、歴史において重要な地だったのだなあと思った。そういえば、戦国時代以前は、近江が歴史小説の舞台になることも少なくない。
ブログ◆ 物語●室町時代中期、琵琶湖の北端の惣庄月ノ浦。はるか昔から開墾してきた米舞、苧ヶ端の耕地をめぐって隣村の高浦と争いを続けてきた。そんな折、京の土倉の手代源左衛門が高浦に荘園の代官としてやってきた。源左衛門は、年貢の取り立てが厳しく、住民を合戦に賦役に酷使し、搾取の限りをつくした。そして彼には幼くして親に捨てられ、月ノ浦を追われた過去があった…。 目次■嵐の前/代官/申状/相論/寄せ沙汰/山門/対決/落居/日嵐/解説 縄田一男 ここから始まる本のリンク▼『神無き月の十番目の夜』(飯嶋和一著・小学館文庫) |