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時代小説 2006年3月・弥生の巻
胡蝶の剣 by 高妻秀樹 |
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居眠り磐音 江戸双紙 紅椿ノ谷 (いねむりいわね・えどそうし・べにつばきのたに)
佐伯泰英
カバーイラストレーション:蓬田やすひろ |
♪深川六間堀の金兵衛長屋に住む浪人・坂崎磐音が活躍する『居眠り磐音 江戸双紙』シリーズの第17弾。この巻でシリーズの一つのヤマ場を迎えた。今津屋吉右衛門とお佐紀の祝言が済み、奥にお佐紀が入ったことで、奥女中のおこんはほっとした思いと心の疲れ、居場所がなくなる感じが一挙にでてしまう。現在でいうところの軽いうつの症状である。恋人の苦境に胸を痛めた磐音は、リフレッシュのために温泉の旅を提案する。磐音の優しさや男らしさが出る好編。 次回作は磐音とおこんの祝言が描かれるのだろうか。
ブログ◆ 物語●両替商今津屋吉右衛門と小田原の脇本陣の娘お佐紀の祝言の準備に奔走する坂崎磐音。媒酌人を将軍家御側御用取次速水左近に依頼し、御家人の品川柳次郎と浪人竹村武左衛門に当日の夜の警固を頼む。祝言は厳粛な中にも和やかなものだった。その夜、祝いに来た三河万歳の太夫が店に隠れていて、仲間を引き込もうとする事件が起きた……。 目次■第一章 十三夜祝言/第二章 鰻屋の新香/第三章 冥加樽の怪/第四章 ふたり道中/第五章 法師の湯 ここから始まる本のリンク▼『闇を斬る 直心影流龍尾の舞い』(荒崎一海著・徳間文庫) |
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居眠り磐音 江戸双紙 螢火ノ宿 (いねむりいわね・えどそうし・ほたるびのやど)
佐伯泰英
カバーイラストレーション:蓬田やすひろ |
♪深川六間堀の金兵衛長屋に住む浪人・坂崎磐音が活躍する『居眠り磐音 江戸双紙』シリーズの第16弾。今津屋の主人・吉右衛門と小田原の脇本陣の娘・お佐紀の婚儀の準備が進むかたわらで、磐音の愛にも進展がみられる。今津屋の奥女中のおこんとの愛が深まっていく中で、唯一の気がかりだった、かつての許婚で吉原を代表する遊女白鶴太夫こと、奈緒の行く末。その白鶴太夫に、山形の紅花商人による身請け話が起こる。 宿命の女性は、住む世界が違うとあきらめ、陰から見守ることを決める磐音。人間ができ過ぎていて物足りなさも感じるが、逆に明朗もののヒーローらしい望ましさでもある。
ブログ◆ 物語●今津屋の主人・吉右衛門と小田原の脇本陣の娘・お佐紀の婚儀が間近に迫り、磐音はその準備に追われる。同じ頃、磐音の元許婚の奈緒で、吉原を代表する遊女・白鶴太夫に身請け話が持ち上がった……。 目次■第一章 おいてけ堀勝負/第二章 白鶴の身請け/第三章 禿殺し/第四章 四人の容疑者/第五章 千住大橋道行 ここから始まる本のリンク▼『酔いどれ小籐次留書 寄残花恋』(佐伯泰英著・幻冬舎文庫) |
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功名が辻(一)〜(四) (こうみょうがつじ)
司馬遼太郎
カバー画:長谷川信春「牧馬図屏風(部分)東京国立博物館蔵 |
♪2006年のNHK大河ドラマの原作。1997年に、山内一豊を宅麻伸さん、千代を壇ふみさんで、テレビ朝日でドラマ化されている。読み始めてみると、山内一豊は、信長、秀吉、家康の三代を生き抜いたという割には、合戦や謀略などでの活躍シーンの少ない人物像。小心、誠実、律儀、愛妻家と、どこにでもいるようなキャラクターである。しかし、千代という最良のパートナーでかつ、優れたプロデューサーの存在が、彼を土佐国二十四万石の大名になるという数奇な運命をもたらしたといって過言ではない。 一豊の美点は、自らの能力、限界を知っていること、そして自身の最大の強みが千代であること。その意味では、マーケティング感覚に優れた、きわめて現代的な人かもしれない。事実、信長、秀吉、家康と常に勝ち組に加わって出世をしてきた。この点で、著者の司馬さんのお眼鏡にかなった人物といえるのかもしれない。
ブログ◆ 物語●織田信長が、尾張清洲城から岐阜に本拠を移した永禄十年九月。織田家の将士三万のほかに、信長の内室濃姫やその侍女たち、さらに将士の家族までが行列に加わり、ちょっとした「民族移動」であった。その行列の中には、織田家で馬廻役を務める山内伊右衛門一豊の姿もあった。伊右衛門は、トッパイの兜に、粗末な桶皮胴の具足をつけ、剥げ槍をかかえ、馬は脚がみじかく、ひどく老いぼれていた。「ひどいなりの侍じゃな」と、沿道の百姓たちからひそかな嘲笑を送られてた。しかし、伊右衛門は、縁談が決まりまだ見ぬ嫁の千代のことで、ときめくような期待でふくれていた。……。 目次■嫁の小袖/戦場/空也堂/姉川/唐国千石/長篠合戦/乱世の奉公人/十両の馬(以上第一巻)|鳥毛の槍/賤ヶ岳/家康/秀吉/春日遅々/掛川六万石/伏見桃山(以上第二巻)|虫売り/淀のひと/醍醐の花見/雲満つ/東征(以上第三巻)|東征(承前)/大戦/再会/浦戸/種崎浜/あとがき/解説 永井路子(以上第四巻) ここから始まる本のリンク▼『信長の棺』(加藤廣著・日本経済新聞社) |
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陰陽師 太極ノ巻 (おんみょうじ・たいきょくのまき)
夢枕漠
カバー:村上豊 |
♪「陰陽師」シリーズ第七弾。このシリーズが楽しいのは、平安の都の怪事件をズバッと解決するという晴明の活躍ぶりが水際立っていることばかりでなく、晴明のパートナーとして事件現場に向かう博雅の存在、そして、二人の掛け合いにあるように思う。 「陰陽師」にはストーリー展開のゴールデンパターンがある。物語の発端で、晴明の屋敷で、二人が季節の趣きを肴に酒を酌み交わす。秋の陽光であったり、天から降りてくる雪であったり、闇の中で匂う桜であったり……。「まことに不思議なものだなあ、晴明よ」と博雅は心に浮かんだ思いを、溜め息のように言う。そのときの博雅は、詩人のようであり、哲学者のようであり、割り振られたワトソン役を逸脱した素敵な存在である。 今回は、博雅以外にも、素敵な登場人物がいる。一人は晴明の好敵手であり仲間でもある市井の陰陽師で蘆屋道満。「鬼小槌」と「針魔童子」に出てきてバイプレーヤーぶりを発揮する。もう一人は、『陰陽師 龍笛ノ巻』に収録された「むしめづる姫」で二人に助けられた露子姫。「二百六十二匹の黄金虫」で「むしめづる姫」ぶりを遺憾なく発揮してくれる。 マンネリといわれようともいつまでも読んでいたいシリーズである。 物語●「二百六十二匹の黄金虫」醍醐寺の恵増上人は、若いころから秀才で知られていた。『仁王経』や『涅槃経』をたちまち諳んじてしまい、読むよりも速く楽々と唱えることができるという。しかし、その次に覚えようとした『法華経』がうまくいかない。その中の二文字だけが、どうしても覚えられないのである……。「鬼小槌」左衛門府の平実盛がひと月前の夜出て行ったきり行方不明だという。そして、彼を可愛がっていた藤原中将が猿叫の病に罹り寝たきりだという……。「棗坊主」叡山の祥寿院に恵雲と名乗る奇妙なことを話す僧がやってきた。その恵雲の吐く息からは、ほのかに何かの果実の香が匂った……。「東国より上る人、鬼にあうこと」月の夜、酒を酌み交わしている晴明と博雅のもとに、鬼から追われている男が助けを求めてきた。男は東国の住人で平重清という者で所用で都まで上ってきたという……。「覚」紀道孝と橘秀時の二人が、覚(さとる)という気の病にかかったという……。「針魔童子」晴明は捜しものを、円教寺の性空聖人の身の回りのお世話をしている者に頼まれて、博雅と羅城門あたりまで出かけた……。 目次■二百六十二匹の黄金虫|鬼小槌|棗坊主|東国より上る人、鬼にあうこと|覚|針魔童子|あとがき ここから始まる本のリンク▼『長人鬼』(高橋克彦著・ハルキ・ホラー文庫) |
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おこう紅絵暦 (おこうべにえごよみ)
高橋克彦
装画:小泉英里砂 |
♪『だましゑ歌麿』に続くシリーズ第2弾。前作とは違い、捕物の主人公が南町奉行所同心仙波一之進から、その妻で元柳橋芸者のおこうに移る。一之進は前作の活躍により、おこうを妻に得たばかりか北町奉行所に移り筆頭与力に出世している。(同心・与力は建前として一代抱えだが、現実にはほとんど世襲の形になっていたので、南町から北町奉行所に移ることも、同心から筆頭与力に昇進することもきわめて異例のこと) おこうの魅力は、粋と気っぷのよさで、法が守れない弱い者を救うためにとことん闘うこと。元柳橋芸者であるばかりか、「ばくれん」だった少女時代も明らかになる。その過去も彼女にとってはマイナスではなく、事件を解決する力になっている。おこうの行動力と謎解きの楽しさ、登場人物たちの掛け合いの面白さ、人情味があふれる、楽しい捕物帳になっている。これは前作とまったく異なる味わいである。 おこうは霊験などの特殊な能力をもっているわけでも、武勇に優れているわけでもなく、頭脳が並外れて優秀なわけでもない。おこうは、つい見落としがちなちょっとしたことが気になったり、不審な点に目がいくと、なぜ、そうなのか調べてみる。そこに解決の糸口が見つかる。喉につかえがあると落ち着かない性格が、事件を解く行動力となる。そして、このおこうを助けるのが、隠居の左門であり、浮世絵師春朗(若き日の葛飾北斎)である。 物語●「願い鈴」筆頭与力の妻おこうのもとに、柳橋時代の同僚のおしずがやってくる。柳橋で花や辻占売りをしていた少女お鈴が幇間(たいこもち)殺しの疑いで捕まったという。無実のお鈴を助けてほしいと頼むが……。「神懸かり」柳橋の料亭に勤めるおそのの三年前に家出した息子の鏡平が戻ってきた。しかし、頭に大きな瘤をこしらえて三年間の記憶はないという……。「猫清」左門のお気に入りの絵師春朗が仙波家を訪れ、おこうに、猫好きの彫師が首をくくって死んだ話をした……。「ばくれん」おこうの柳橋時代の友達のお信がやってきて、ばくれん時代の仲間のお秋が殺しの疑いをかけられて番屋で毎日取り調べを受けているという話を教えた……。「迷い道」おこうは、気晴らしに八王子を旅してきた左門を訪ねて府中に出かけた……。「人喰い」かつて仙波家の家事手伝いをしていたお光が人喰い鬼に襲われた死骸を見て寝込んだという話を聞いて、おこうは見舞いに訪れる……。「退屈連」春朗は、退屈連と名乗る狂歌好きの者が集まる酒席で聞いた奇妙な話を左門とおこうにはじめた……。「熊娘」小者の菊弥は、浅草で見てきたばかりの見世物の話を厨でしていた。その話に耳をとめたおこうは、その見世物の女が知っている娘ではないか思われ、菊弥に詳しく調べるように命じた……。「片腕」半月ほど前に顔を潰された死骸が両国橋の橋下に投げ捨てられる事件があった。顔ばかりか左の腕もなぜか切り落とされていたという……。「耳打ち」小屋が開いて間もない刻限だというのに河原崎座は中村滝太郎目当ての客の熱気でむせ返っていた……。「一人心中」お鈴の母親捜しをしていた菊弥が、それらしい女を見つけたという……。「古傷」おこうは、人足寄場から解き放ちになった鏡平から、秋太郎という人に牢屋で知り合ったと聞いた……。 目次■願い鈴|神懸かり|猫清|ばくれん|迷い道|人喰い|退屈連|熊娘|片腕|耳打ち|一人心中|古傷|解説 諸田玲子 ここから始まる本のリンク▼『だましゑ歌麿』(高橋克彦著・文春文庫) |
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犬吉 (いぬきち)
諸田玲子
装画:黒鉄ヒロシ |
♪赤穂浪士討ち入りと生類憐れみの令を結び付け、狂気と恋を描く長編。討ち入りの興奮が冷めやらない、中野の野良犬収容小屋という、特異なシチュエーションで展開される恋と狂気が、サスペンスに満ちた描かれる新感覚の時代小説でグイグイ引き込まれた。 生類憐みの令のもと、中野村に野良犬収容所が作られた。最盛期には十万匹ともいえる犬が集められたという。今まで、話にはよく聞いていたが、実際に時代小説でこの巨大な犬小屋を舞台に描いた作品はなかったのではないだろうか。諸田さんは、この野良犬収容所(御囲)のある特別な一日を、とんでもなく面白い話に仕立てている。 語り手が「犬吉」と呼ばれる、御囲で犬の世話にあたる娘なために、最初こそ、その蓮っ葉な口調に違和感を覚えるが、読み進めるうちにこの一人称の語り口がしっくりくる。 そういえば諸田さんには、同じように歴史における特別な一日を描いた、『其の一日』という作品もあった。
ブログ◆ 物語●元禄十五年十二月十五日、御囲で犬の世話にあたる娘・犬吉(いぬきち)は、詰所で御鷹御犬索(おたかおいぬさく)の依田峯三郎と出会う。依田は、将軍家の御狩場で働く猟犬を飼育することがお役目だったが、生類憐れみの令が発布されて殺生が禁止になり、狩が行なわれなくなり、仕事がないので御囲にまわされたのだった……。 目次■犬吉/参考資料/犬吉あとえ 黒鉄ヒロシ ここから始まる本のリンク▼『黄門さまと犬公方』(山室恭子著・文春新書)、『ほうけ奉行―若宮隼人殺生方控』(えとう乱星著・ベスト時代文庫) |
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深川澪通り燈ともし頃 (ふかがわみおどおりひともしごろ)
北原亞以子
カバー装画・デザイン:蓬田やすひろ |
♪北原亞以子さんは、『夜の明けるまで 深川澪通り木戸番小屋』で第39回吉川英治文学賞を受賞された。これを機に、「深川澪通り」シリーズの第二弾の長編小説を読み返した。「第一話 藁」は、狂歌師を目指して肩肘張って生きる若者政吉を描いている。政吉と女房のおきく、そして薄幸の女性おうたの人間模様が哀しくてせつない。しかし、それが深川澪通りの人情の中で描かれると、ほのかな温かみを感じる。 「第二話 たそがれ」では主人公は仕立て屋のお若に変わる。お若は三十五歳で、駿府に妻子がいる綱七という薬売りの男と十八年来の不倫関係にあった。一年のうちに三月(みつき)か四月(よつき)しか江戸にやってこない綱七への恋愛感情。仕事を持ち生計を立てられる身ながら、一人老いていく将来への不安。結婚した幼なじみとの比較。お若を通して、江戸に生きる一人のキャリアウーマンの姿を鮮やかに描いた作品である。
ブログ◆
物語●「第一話 藁」煙草の行商人の政吉は、『一大事』を話したくて、真先に中島町澪通りの木戸番夫婦の笑兵衛とお捨のもとへ向かったそれは政吉の狂歌が二首、本にのることだった。二人は、『一大事』『おおごと』と手放しに喜んでくれた。自分のつくった狂歌が本にのるという大事件を、一番言ってもらいたかったことばで喜んでくれたのだった…。 目次■第一話 藁(一大事/祝宴/朝帰り/朝寝の死/不満/崩壊/明りの色/絶縁/燈ともし頃)|第二話 たそがれ(夕立/しじまの鐘/澪通り/嵐のあと/心のしみ/怪我/姉弟/長い道)|燈はともる。僕たちの奥に。 マキノノゾミ ここから始まる本のリンク▼『恋忘れ草』(北原亞以子著・文春文庫) |
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冬の蝉 (ふゆのせみ)
杉本苑子
装画:宇野信哉 |
♪本書は昭和六十三年に刊行された文庫の新装版。時代小説ファンを掲げているが、本格的に読み始める前に活躍されていた大御所の作品までカバーしきれていないのが実情。杉本さんもこれから楽しみに読んでいきたい作家の一人だ。
「墓石を打つ女」旗本内藤家とお匙医の棚橋のエスカレートしていく対立ぶりが面白い作品でもある。内藤新宿宿が享保三年(1718)から明和九年(1772)まで廃止されていた理由がわかる短篇。
ブログ◆
物語●「墓石を打つ女」知行四百石の旗本内藤新五左衛門は、隣に移ってきたばかりの医師棚橋佑庵の妻・百瀬に突然、水が薬の調合に適しているから井戸を譲ってくれと申し入れられる。身勝手な申し分に腹を立てて断るが、棚橋はお匙医(江戸城に詰める歴々の治療に当たる公儀のお雇い医師)だった……。 目次■墓石を打つ女|菜摘ます児|礼に来た幽霊|冬の蝉|ゆずり葉の井戸|嫦娥|仇討ち心中|仲蔵とその母|解説 山村正夫
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胡蝶の剣 (こちょうのけん)
高妻秀樹
カバーイラスト:宇野信哉 |
♪第11回歴史群像大賞受賞作。作者は1955年、宮崎市生まれで、宮崎県内で高校の教員として倫理・政経を担当する。四十六歳のときに、県下の進学校で歴史科目を担当することになり、一日一冊の歴史関係書を読破するようになり、歴史小説の執筆の契機となる。本作品がデビュー作。主人公の森本右近太夫一房(もりもとうこんのたいふかずふさ)は、時代小説のヒーローでは珍しいタイ捨流(作中では体捨流の表記)の剣豪。一房は、加藤清正の家臣、森本儀太夫(実在の人物で司馬遼太郎さんの『功名が辻』にも一瞬登場する)の庶子。 裏柳生との戦いというと、隆慶一郎さんの『影武者徳川家康』『捨て童子松平忠輝』などを思い出すが、一房の剣の冴えも『吉原御免状』松永誠一郎に通じるものを感じる。誠一郎は、師の宮本武蔵ゆずりの二天一流だが、一房もタイ捨流から二刀を自在に遣う体捨二刀流を確立していく。
ブログ◆
物語●主人公のタイ捨流の剣豪・森本一房の前に、柳生宗矩の命を受けた柳生五郎右衛門宗俊(石舟斎の四男の柳生五郎右衛門宗章ではない)が率いる裏柳生が立ちはだかる。時は、慶長十五年三月、豊臣秀頼が伏見にて徳川家康と会見することになった。 目次■第一章 雌伏/第二章 試練/第三章 雄飛/第四章 流転/第五章 廻国/第六章 別離 ここから始まる本のリンク▼『吉原御免状』(隆慶一郎著・新潮文庫) |