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時代小説 2005年9月・長月の巻 |
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闇を斬る 刺客変幻 (やみをきる・しかくへんげん)
荒崎一海
カバーイラスト:蓬田やすひろ |
♪前作『闇を斬る 直心影流龍尾の舞い』が剣豪小説として滅法面白かった。そこで、今回も期待。前作以上にエンターテインメント度がアップし、スケール感がある。今治藩脱藩浪人鷹森真九郎を次々と襲う刺客たち。国元の宿敵、国老・鮫島兵庫が絡んでいるのか? はたまた、江戸を混沌に陥れようとするなぞの集団“闇”の仕業なのか? 真九郎が揮う直心影流の秘剣・弧乱そして霧月が冴える。 荒崎さんの作品が面白いのは、キャラクター設定とストーリー展開の大胆さとチャンバラシーンの迫力、時代考証の正確さが上げられる。細部まで目配りがされているので、読み味がいい。 剣豪時代小説の文庫書き下ろしというと、最近では佐伯泰英さん、鳥羽亮さんの活躍ぶりが目覚しく、鈴木英治さん、上田秀人さんと実力派の書き手がそれに続くという図式だ。その流れの中で、今後が楽しみな新星が登場という観がますます強くなった。次回作も楽しみだ。 物語●剣の遣い手である北町奉行所の隠密廻り同心が、薩摩藩蔵屋敷近くで殺されているのが見つかった。帯には、「黒子」と書かれた紙切れが隠されていた。同じ夜、本芝一丁目の古着屋に押し込み強盗があり、主と番頭ら五名が殺され、下男の一人が行方知らずになっていた。直心影流団野源之進道場の代稽古を務める浪人鷹森真九郎は、北町奉行所定町廻り同心の桜井琢馬に依頼され事件解決に力を貸すことに…。 そんな中で、真九郎の妻・雪江に読み書き、琴、活花を習っている弟子のおゆみがかどわかされた……。 目次■第一章 襲撃/第二章 影法師/第三章 運命/第四章 月下凄愴/第五章 対決 ここから始まる本のリンク▼『仲蔵狂乱』(松井今朝子著・講談社文庫) |
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似せ者 (にせもん)
松井今朝子
カバー装画:高橋洋々 |
♪歌舞伎界に題材をとった時代小説が多い松井さんの短編集。この分野の書き手が少ないだけに貴重な作品。松井今朝子さんの『似せ者』は、江戸時代の歌舞伎界から題材をとった、4つの短編小説を掲載している。プロフィールによると、松井さんは早稲田大学大学院文学研究科演劇学修士課程修了後、松竹に入社し、歌舞伎の企画・制作に携わる。のち、フリーとなり、歌舞伎の脚色・演出・評論を手がけたという。歌舞伎界に精通した人。 というわけで、第八回時代小説大賞受賞の『仲蔵狂乱』や『非道、行ずべからず』など、歌舞伎の世界を背景にした時代小説が多く、いずれも読みごたえのある傑作ぞろいだ。『似せ者』は、短編ということで紙数が限られた中で、役者の素顔や芸に対する思いを切り取って描いていて興味深い。 また、中国の周の時代には正月が今よりも2カ月早かったとの言い伝えから、十一月に顔見世狂言を行う歌舞伎界の新年を「周の春」というとか、顔見世狂言の台本を作る前の九月十二日に江戸三座で行われる芝居の大枠を決める儀式を「世界定め」と呼ぶとか、芝居の世界で引退する際に演じる舞台を「一世一代」というとか、独特のことばも解説されていて、歌舞伎の門外漢も楽しめる。 一篇一篇異なった味わいがありながら、いずれも人の道と芸の道の対立を見事に描いている。 物語●「似せ者」初代坂田団十郎の付人だった与市は、伏見で小さな芝居小屋に出ていた伏見藤十郎こと桑名長五郎を、役者の評判記を書いている大仏餅屋庄左衛門と訪ねた…。「狛犬」市村座で若手随一といわれている市村助五郎は、ぱっとしない役者の大瀧広治といつもつるんでいたので、暑中見舞いに伺っていた太夫元の羽左衛門に狛犬のようだといわれるほど仲がよかった…。「鶴亀」角座の仕打の亀八は、役者の大立者の嵐鶴助が、今度の顔見世興行を最後に役者を引退すると聞いてうろたえた…。「心残して」芝居の囃方に勤める三味線弾きの巳三次は、喉自慢の旗本の次男坊神尾左京と出会った…。 目次■似せ者|狛犬|鶴亀|心残して|解説 末國善己 ここから始まる本のリンク▼『仲蔵狂乱』(松井今朝子著・講談社文庫) |