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2004年8月・葉月の巻
十花の水 広重人情裁き1 by 霜月千尋 |
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高瀬川女船歌 三 銭とりの橋 (たかせがわおんなふなうた3・ぜにとりばし)
澤田ふじ子
装画:蓬田やすひろ |
♪『高瀬川女船歌』『高瀬川女船歌二 いのちの螢』に続く、高瀬川沿いの名物居酒屋に集う人々の想いを豊かに綴る、シリーズ第3集。シリーズ3作目の今回は、宗因が出合った僧・普照(ふしょう)を中心に、連作形式の物語が展開する。 宗因は、以前に僧形に身をやつし、四条小橋の南・斎藤町の庚申堂に住みついていた。その頃、托鉢僧として門付けにも立ったが、ひどく侮られることも、再々だったことから、何かと托鉢僧の普照の面倒をみることになる。普照は、木賃宿の小倉屋に泊まりながら、托鉢して浄財を得ていたが、そのほとんどが木賃宿の支払いに充てられて、物乞い同然の姿だったので、以前に宗因が住まいにしていた庚申堂に住めるように世話をした。 宗因の居酒屋に集う常連客たちが、澤田さんの作品らしく、貧乏ながらも人情味あふれる人たちで、読んでいくうちに心が温まっていく好編。しかも、前作で隠岐島に遠島になった、お蕗も帰ってきてファンにはうれしいところ。 泥鰌の蒲焼や茄子の田楽、松茸昆布の佃煮など、宗因のつくる居酒屋メニューがおいしそうで、読んでいると酒が飲みたくなる。
物語●木屋町筋で高瀬船の船頭や曳き人足を相手に、居酒屋・尾張屋を営む宗因こと奈倉宗十郎は、僧・普照が故郷の川に立派な橋を架けようと銭を集めるために勧進していることを知る。 目次■短夜の笛/やぶからし/密かの藪/扇塚/八坂の剣/銭とり橋/解説 縄田一男 ここから始まる本のリンク▼『火宅の坂』(澤田ふじ子著・徳間文庫) |
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討たせ屋喜兵衛 秘剣陽炎 (うたせやきへい・ひけんかげろう)
中里融司
装画:百鬼丸 |
♪奥州の小藩・三善藩で、専売吟味方改め役についていた鈴鳴喜兵衛は、藩士久宝治右衛門を斬り、次席家老柿沢掃部を斬殺した嫌疑をかけられ逐電した敵持ち。今はその経験と鹿島神流の剣術の遣い手という腕を生かして、「討たせ屋」稼業についていた。「討たせ屋」とは、仇を討たせるか、思いとどまらせるか、仇討を差配する例のない稼業。今回の仇討ちは、松代藩士の妻が五十七年にわたって仇を追い求めるというもの。敵役は、微塵流の達人ながら、八十を超えて健在かどうかも不明なところ。一方、江戸では、稽古ごとに通う娘のかどわかしが続いているという。「討たせ屋」稼業をつとめる喜兵衛自身は、相変わらず久宝伊織、彦一郎の姉弟に敵として追われている中で、老婦人の仇討ちを助けることができるのか? 敵役の田鎖甚三の怪人ぶりに凄味があって痛快な一編。
物語●正保二年、信州松代藩で御膳奉行を務める鷹取忠資は、配下で微塵流の田鎖甚三という若侍に斬り殺された。甚三はすぐに逐電したが、忠資の息子の嫁のひなは生まれたばかりの一子・忠吾と仇討ちのための暇乞いを藩に願い出た。それから十四年、忠吾は日向で甚三と思われる男を見かけたが、その男が披露した恐るべき剣技を前に、忠吾は仇討ちを止めることにした。 目次■序章 魔剣/第一章 宿下がり/第二章 意地/第三章 微塵流/第四章 修羅/第五章 家族/第六章 秘剣陽炎/終章 太夫来訪 |
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酔いどれ小籐次留書 意地に候 (よいどれことうじとめがき・いじにそうろう)
佐伯泰英
カバーフォト:オリオンプレス |
♪来島水軍流剣法の達人で、元豊後森藩藩士・赤目小籐次(あかめこうとうじ)が活躍する、シリーズ第二弾。中年というか初老のスーパーヒーローの再登場で、ワクワク。主人公の赤目小籐次は、まもなく五十に手が届く、中年で、五尺一寸(153センチ)の矮躯、お世辞にも格好いいとはいえない。その小籐次は見掛けによらず、来島水軍流剣法の遣い手で、前作では旧主豊後森藩の久留島通嘉の無念を晴らすべく、大名四家(丸亀藩、赤穂藩、臼杵藩、小城藩)を相手に回し、御鑓を強奪し、主君の意趣返しを果たした。今回は、その騒動に起因した逆襲編といったところ。いかに、小籐次が相手を迎え討つかが見どころ。 浪人になった小籐次が、日々の糧を得るために、刃物研ぎの仕事を始めるのが物語のアクセントとなっている。鰻割きをする坂崎磐音や火事場片付けの帳付けを行う金杉惣三郎など、佐伯泰英さんの作品の浪人たちは、剣ばかりでなく、副業をしっかりともち、地に足がついた生活を送ろうとするところに好感が持てる。庶民の生活に根ざした仕事をすることで、市井との関わりが深くなり、物語に人情味が加わるように思われる。
物語●新しく始めた刃物研ぎの材料を取りに竹林に出かけた赤目小籐次は、大身旗本水野監物の奥女中おりょうが、五、六人の無頼浪人たちに襲われるところを助けた。おりょうは、小籐次が十五年来、ひそかに想いを寄せていた女性だった。 目次■第一章 四人の刺客/第二章 夏の雪/第三章 呼び出し文/第四章 御殿山の罠/第五章 小金井橋死闘 ここから始まる本のリンク▼『居眠り磐音 江戸双紙 遠霞ノ峠』(佐伯泰英著・双葉文庫) |
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恋椿 橋廻り同心・平七郎控 (こいつばき・はしまわりどうしん・へいしちろうひかえ)
藤原緋沙子
カバーイラスト:蓬田やすひろ |
♪廣済堂文庫の「隅田川御用帳」シリーズで活躍中の、藤原さんの新シリーズ。主人公が橋廻り同心というのが興味深い。主人公の立花平七郎は、北辰一刀流、師範代格の剣客でもある設定。定服として黒の紋付羽織、白衣(着流し)に帯刀という同心姿ながら、十手の代わりに、コカナヅチ大の木槌を手にする。 橋廻りの仕事の第一は、橋げたや橋の欄干、床板を叩いて橋の傷み具合を確かめること。第二は、橋の通行の規制や橋袂の広場に不許可の荷物や小屋掛けの違反者はいないかなど、高積見廻り方同心に似たお役目もになっていた。橋下を流れる川の整備も定橋掛のお役目であった。定町廻り同心がきれいな房のある十手をひけらかして、雪駄を鳴らし、町を見廻るのに比べると、この仕事は地味で、木槌を手に町を歩くのはあまり格好のいいものではなく、奉行所内でも閑職とされ、定員は与力一騎に同心二名、一度この定橋掛に配置されたら、そこから抜け出すのは容易でなかった。 橋廻り同心の仕事を紹介しながら、物語は、なぜ平七郎が閑職に回されるようになったのか?を明らかにしていく。また、話の展開の中で、手馴れた形で、同僚の平塚秀太、上役の大村虎之助、かつての上司の一色弥一郎、平七郎の継母里絵、なじみの水茶屋『おふく』の女将おふくと抱え船頭の源治、読売屋の一文字屋のおこうらの、主要な登場人物を紹介していく。 主人公の仕事を橋廻り同心と設定したところで、本書の面白さが約束されたようなもの。江戸町奉行所の役目を見て、常々気になっていたものだ。今からは想像しにくいが、江戸は川や堀が多い町で、それだけ架けられる橋の数も多く、その橋をめぐるドラマに事欠かないように思われる。藤原さんは巧みに橋を舞台装置として使い、人情の機微に触れる物語を綴ってくれた。 平七郎は、左遷されながらもやけにならないで、人情味あふれる事件解決能力を見せてくれて、救われる連作形式の捕物小説。平七郎の活躍ぶりや読売屋のおこうとの関係が進展するかなど、今後の展開が楽しみなシリーズができた。
物語●北町奉行所定橋掛(じょうばしがかり)、通称橋廻りと呼ばれる同心立花平七郎(たちばなへいしちろう)の父親は、生前『大鷹』の異名をとった凄腕の同心で、平七郎もかつて定町廻りだったころ、『黒鷹』と呼ばれた俊才の人で、若手ではもっとも将来を嘱望されていた。それがあろうことか今は橋廻り同心である。 目次■第一話 桜散る/第二話 迷子札/第三話 闇の風/第四話 朝霧 ここから始まる本のリンク▼『雁の宿』(藤原緋沙子・廣済堂文庫) |
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湖賊の風 (こぞくのかぜ)
高橋直樹
写真提供:滋賀県西浅井町「北淡海・丸子船の館」 |
♪室町中期、本願寺の蓮如が活躍した時代。類書があまりなさそうなので、新鮮。将軍足利義教が暗殺されてから、足利幕府の権力は安定をうしない、応仁の乱へと進む世上の不安は高まりつつある中で、中世の秩序の崩壊は、その周辺の琵琶湖でも始まっていた。本書を読むと、今まで歴史・時代小説でほとんど描かれることのなかった琵琶湖周辺を舞台にしながらも、著者の鋭い歴史観を通して、室町中期という時代を新鮮に捉え直すことができた。 また、湖賊を取り上げたということで、海洋冒険小説ばりのシーンが随所に散りばめられていて、エンターテインメント時代小説としても傑作に仕上がっている。とくに、主人公の魚鱗と若い漁師の藤次郎が敵船に向かっていくところは手に汗を握るほどスリリングだ。 冒険小説につきものの、男たちの友情も盛り込まれている。船道上乗の鳥羽将監が、魚鱗に堅田衆の団結の印である、惣庄の旗を託すシーンでは、ウルウルとしてしまった。 蓮如に、「魚鱗、そなたは地獄へ落ちても他力にすがるまいとしている男」だと言わしめ、比叡山と本願寺の抗争を盛り込むなど、当時の宗教界の状況にも目配りがされていて見事。 魚鱗が時折訪れる、粟津の茶屋で働く娘アイの存在が男臭くなりやすい物語の中でアクセントとなっている。
物語●中世、琵琶湖の水運がもっとも栄えた時代である。日本の経済と政治の中心である、京都へ国中の物資が集まり、東国と北国の物資は琵琶湖によって京都へ運ばれていた。その琵琶湖の喉もとにある堅田(かたた)の町は、湖上水運を扼する位置を占めていた。水運の権益をめぐって、湖賊と恐れられている鳥羽将監(とばしょうげん)、向兵庫(むかいひょうご)らの船道(ふなど)衆たち、絶大な権力で君臨する比叡山延暦寺の有力坊院で堅田奉行として湖上関を周遊している護正院(ごしょういん)の竪者隆拓(りっしゃりゅうたく)、新興の本願寺門徒の商工民の全人(まとうど)を束ねる本福寺の住職法住(ほうじゅう)などが、それぞれ機をうかがっている。 目次■湖賊の風/解説 清原康正 ここから始まる本のリンク▼『蓮如 夏の嵐』上・下(岳宏一郎著・講談社文庫) |
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喧嘩御家人 勝小吉事件帖 (けんかごけにん・かつこきちじけんちょう)
風野真知雄
カバーイラスト:井筒啓之 |
♪勝海舟の父、勝小吉が探偵役を務める、時代推理小説。勝小吉が登場する時代ミステリ小説というと、永井義男さんの「蛍狩殺人事件」(読売新聞社刊『鮮魚師』に収録)が思い出される。『西郷盗撮』(新人物往来社)や『水の城』(祥伝社文庫)などで、活躍する風野さんの最新作は、捕物小説。探偵役の勝小吉が座敷牢に入れられたまま、悪友の早川又四郎と本所界隈を縄張りとする岡っ引きの仙吉親分の力を借りて、難事件を持ち前の推理力と洞察力でズバリ解決する、安楽椅子探偵物(アームチェア・ディティクティブ)。都筑道夫さんの「砂絵シリーズ」を彷彿させるオモシロ捕物帳。奇想天外、凝りに凝った設定やトリックも、都筑ファンをニヤリとさせて楽しませてくれる。 事件解決のヒントを毎回、小吉の生まれたばかりの息子、麟太郎(後の海舟)が与えてくれるのが、親子愛を感じさせてくれていい。 物語●「座敷牢の男」勝小吉は町人毒殺の嫌疑がかけられ、父の男谷平蔵の命で、座敷牢に入れられることになった…。「ひきこもった男」子分格の早川又四郎から、小吉は幼なじみで暴れん坊の藤七がここ三年ほど家に引きこもって外に出ないという話を聞いた…。「房州から来たいい男」小吉は、又四郎から、房州から出てきた色白のいい男が本所界隈の娘っ子たちにひどくもてているという話を聞いた…。「流れ月」小吉は、本所の横川にかかる北中之橋のたもとに、お面をかぶったそば屋が店を出しているという話を聞いた…。「読めない屋号」小吉は、又四郎から高輪南町の大通りに、何と読むのかわからない本屋ができて、たいそう繁盛しているという話を聞いた…。「ダルマ髭の子どもたち」座敷牢に入っている小吉のもとに、三島の造り酒屋の息子清二郎が訪ねてきた。一緒に江戸に出てきた番頭夫婦のひとり息子が神隠しに遭い、何とか見つけてほしいと頼みにきた…。「鯉のぼりは夜泳ぐ」大川沿いのろうそく問屋の鯉のぼりが夜中に一匹増えるということで巷で話題になっていた…。「死美人湯」又四郎が通う湯屋で、美人の清元の師匠が殺される事件が起き、第1発見者の又四郎に嫌疑がかかった…。 目次■座敷牢の男|ひきこもった男|房州から来たいい男|流れ月|読めない屋号|ダルマ髭の子どもたち|鯉のぼりは夜泳ぐ|死美人湯|解説・末國善己 ここから始まる本のリンク▼『鮮魚師』(永井義男著・読売新聞)、『喧嘩侍 勝小吉』(小松重男著・新潮文庫) |
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甘露梅 お針子おとせ吉原春秋 (かんろばい・おはりこおとせよしわらしゅんじゅう)
宇江佐真理
カバー:蓬田やすひろ |
♪苦界・吉原を舞台にした、宇江佐さんお得意の人情時代小説。ヒロインのおとせが岡っ引きの女房ということで、捕物小説を思い浮かべたが、吉原の人と出来事、四季を描いた人情物語だった。とはいえ、随所に岡っ引きの女房らしい、詮索好き、好奇心、お節介が顔を出し、語り部としては恰好の存在である。 桜の季節から始まり、雪の季節で終わる。その間に、夜桜見物、お年玉代わりの甘露梅仕込み、八朔の白無垢衣裳、八月十五夜の月見と九月十三日の後見の月見、蜜柑投げ、くくり猿のまじない、仮宅など、吉原の四季の風物を巧みに物語に取り入れている。幼なじみながら、互いに想い合っている海老屋の花魁喜蝶と妓夫の筆吉の、許されない二人の恋の行方と、相談相手で、何かと頼りになる、引手茶屋の主・凧助とおとせの関係があわせて描かれていき、最後まで目が離せないところ。
物語●前年の春に、岡っ引きの夫に先立たれた三十六歳のおとせは、吉原・江戸町二丁目の遊女屋「海老屋」にお針として住みこんでいる。おとせには鶴助という二十歳になる息子と十八歳の娘・お勝がいる。おとせは二年前にお勝を嫁に出していて、鶴助と当分二人暮らしを続けるつもりだったが、呉服屋に奉公して手代になったばかりの鶴助は所帯を持ちたいと切り出した。同じ店の女中と相惚れで、腹に子ができているという。嫁を迎えるにも裏店のひと間暮らし。新婚夫婦とおとせが枕を並べて眠るというわけにもいかず、吉原の海老屋にお針子として住み込んで働く仕事を引き受けた。 目次■仲ノ町・夜桜/甘露梅/夏しぐれ/後の月/くくり猿/仮宅・雪景色/解説 末國善己 |
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近藤勇 (こんどういさみ)
秋山香乃
装画:宇野亜喜良 |
♪『歳三 往きてまた』(文芸社)など、新選組の隊士を描いた作品で注目される、新進女性作家の書き下ろし長編時代小説。実際には番組をほとんど見ていないにもかかわらず、NHKの大河ドラマの影響からか、近藤勇のイメージが香取慎吾の方に傾きかけている。えらが張り、アゴがしっかりとした、肖像写真のイメージに戻したいと思っていたところで、ちょうど、この本と出合った。 著者は若い女性の作家だったので、ヒロイックな新選組像が展開されるのかと思っていたら、端正にかつオーソドックスに新選組の隊士群像を描いていて好感が持てた。とくに、目を見張ったのが、伊東甲子太郎の描き方である。裏切り者として扱われ、敵役のように憎々しく描かれることが多い中で、品格が高く、節義をもって公儀の行く末を憂いながら勤皇に生きた爽やかな人物として描いている。秋山さんによる、伊東甲子太郎を主人公とした作品を読んでみたいと強く思った。 激動の中で、主義の違いから取る行動に違いはあっても、誰が善くて誰が悪いといったものはないように思う。結果論で捉えると歴史になり、プロセスの中で埋もれているものを取り上げるのが小説の役目であろうか。新選組が日本人に好まれるのは、小説やTV、映画などのおかげであろう。
物語●文久三年の幕開け。天然理心流の道場“試衛館”で、宗家四代目近藤勇が師範席に座して見守る中、初稽古が行われた。土方歳三と山南敬助が立ち会っているとき、「近藤さん、京へ行く気はないか」 目次■なし |
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十花の水 広重人情裁き1 (とはなのみず・ひろしげにんじょうさばき1)
霜月千尋
カバーイラスト:安里英晴 |
♪絵師安藤(歌川)広重が捕物を扱うという設定に惹かれてGet! 著者は小学校教員を経て、不登校児のための適応指導教室指導員を経て、現在、歴史、時代小説執筆中というプロフィールの人。タイトルの「十花の水」は南蛮渡来の化粧水だが、製造元も発売元もわからないという。肌のシミ取りに特効があるが、毒性があり、少しずつ食べ物に混ぜれば、気に入らない者を人知れず殺すことができるという。 この「十花の水」にまつわる事件の謎を解くのが、絵師歌川広重(定火消し同心安藤重右衛門)と北町奉行所定廻り同心磯貝小平太である。 作品の魅力の一つは登場する女性キャラクターが個性的に生き生きと描かれていることである。事件に絡む吉沢数馬の恋人・深雪、小平太の恋人で喰い処《伊勢屋》の女将・奈津、広重の新妻・理緒、いずれも印象的だ。 物語●奥州からの帰路の吉沢数馬は、小塚原近くで、十五、六歳の少年・幸太が二十半ばの遊び人風の男・弥蔵を仇 呼ばわりして、仇討ちをしようとしているところに出くわした。二人の間に力の差がありすぎるのを見て、数馬は幸太を助太刀して、仇討ちをやり遂げさせた。その後、数馬は恋人の深雪は、借金のかたに、刀屋の野田屋伊兵衛のところへ後妻に行き、引っ越していた…。 目次■序章 助太刀と伊兵衛殺し/第一章 〈十花の水〉の噂/第二章 定火消し同心、変死探索/第三章 闇の訪問者/第四章 聞き込み/第五章 毒消し売り一味/第六章 一橋家勘定組頭/第七章 人質、幸太/第八章 黒幕/終章 両国之宵月/あとがき |