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2003年8月・葉月の巻 美食探偵 by 火坂雅志 |
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奇策 北の関ヶ原・福島城松川の合戦 (きさく・きたのせきがはら・ふくしまじょうまつかわのかっせん)
[戦国]
カバーデザイン:山下健一郎 |
♪風野さんの最新文庫。北の関ヶ原ものというと、『われ、謙信なりせば 上杉景勝と直江兼続』(風野真知雄著・祥伝社文庫)を未読なのを思い出した。関ヶ原前後の上杉家というと、いろいろな歴史小説に描かれている。いずれも上杉景勝や直江兼続を軸に、物語は描かれている。そんな中で、老将・本庄繁長を主人公に一局地戦を描ききった、本書は異色だ。本庄繁長と性格が異なる5人の息子たち、草の者(忍び)の矢源太らを中心に、話は展開される。 圧倒的な軍勢を前に、真っ向から立ち向かった老将の用いた奇策とは…。 物語●奥州福島城下を訪れた、芭蕉と曾良は、宿の主人から関ヶ原の合戦の頃、福島城を舞台に繰り広げられた攻防記を聞いた。城代として福島城を治めていたのが、このとき六十を越えていた老齢の上杉家の武将・本庄繁長。片や三十半ばの独眼竜、伊達政宗率いる大軍が相手…。 目次■序章/第一章 老将/第二章 人質/第三章 裏切り者/第四章 関ヶ原/第五章 前哨戦/第六章 背後/第七章 謀略戦/第八章 退却/第九章 おいぼれ/第十章 生き残った家/終章 夢の跡 |
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討たせ屋喜兵衛 秘剣稲妻 (うたせやきへい・ひけんいなづま)
[武家]
装画:百鬼丸 |
♪『討たせ屋喜兵衛 斬奸剣』に続く、第2弾。奥州の小藩・三善藩で、専売吟味方改め役についていた鈴鳴喜兵衛は、藩士久宝治右衛門を斬り、次席家老柿沢掃部を斬殺した嫌疑をかけられ逐電した敵持ち。今はその経験と鹿島神流の剣術の遣い手という腕を生かして、「討たせ屋」稼業についていた。「討たせ屋」とは、仇を討たせるか、思いとどまらせるか、仇討を差配する例のない稼業。 敵を探すために苦界に身を置く遊女の千歳太夫、喜兵衛を敵と狙う治右衛門の娘で小野派一刀流の達人・久宝伊織と病弱な弟彦一郎ら、前回からのメンバーに加え、赤穂浪士・高田郡兵衛も加わり、ますます好調な痛快仇討時代小説。 物語●松江藩御番医師・半井清道は、町奉行城所平右衛門を往診した帰り、藩士沢田嘉兵衛に襲われ、斬殺して逐電した。それから五年後、吉原で討たせ屋を裏稼業とする鈴鳴喜兵衛のもとに、沢田の嫡男小平太と妹の早苗が仇討の助太刀の依頼にやってきた…。 目次■序章 医師逐電/第一章 剣客兄妹/第二章 花見/第三章 急襲/第四章 秘剣稲妻/第五章 血花の宴/終章 脱落 |
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一十郎とお蘭さま (いちじゅうろうとおらんさま)
[幕末]
装画:小村雪岱 |
♪裏表紙の「明治維新前後・激動の世に展開する酷薄な美神と剣士の奇妙な物語。円熟の筆が冴える時代ロマン長篇」という作品紹介コピーに惹かれて手に取る。藩主の美貌の側室・お蘭の方に忠誠を誓う剣士、と聞くと、ロマンあふれる伝奇小説を期待するが、南條さんはそんな浅はかな読者を見事に裏切る。幕末から明治へ、激動の時代に翻弄されるヒロイン・お蘭の方に、魅入られ、一途に仕える男・一十郎の、究極の愛の物語である。時代小説の姿を借りた純文学である。封建時代の主従関係と純愛とエロティズム、稚ないセンチメンタリズムが渾然一体となり、不思議な味を醸し出している快作だ。 歴史にほとんど登場しない越後の三万石の小藩・村松藩を舞台にしているのが、新潟県人にはうれしいところ。とはいえ、村松を訪れたことはないが…。 物語●越後の小藩・村松藩の下級武士、欅一十郎(けやきいちじゅうろう)は、江戸藩邸では、けやきの盆栽づくりで有名になっていた。一十郎は、桃井春蔵門下で剣を磨き、その後、機迅流の依田新八郎秀政の門に移り、剣の達人としても知る人ぞ知るであった。その一十郎は、国許の村松に戻り、藩主堀右京亮直賀の前で、機迅流の秘術「畳返し」を披露することになった…。 目次■目次なし |
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居眠り磐音 江戸双紙 雨降ノ山 (いねむりいわね・えどそうし・あふりのやま)
[剣客]
カバーイラストレーション:蓬田やすひろ |
♪『陽炎ノ辻』『寒雷ノ坂』『花芒ノ海』『雪華ノ里』『龍天ノ門』に続く、浪人坂崎磐音が活躍する「居眠り磐音 江戸双紙」シリーズ第6弾。佐伯さんの作品は、どのシリーズもとても読みやすい。中でも、この居眠り磐音シリーズは読み味がとくによい。親友二人と恋人の姉を亡くし、恋人と別れながらも、悲劇性を引きずらない、爽やかな主人公像によるところが大きい。いままでほとんど印象がなかった、今津屋の内儀・お艶(えん)にスポット当てた作品。タイトルの「雨降ノ山」は、相州の大山、つまり阿夫利神社の別名をもつ石尊大権現と雨降山(あふりさん)大山寺不動尊の神仏混交の山から付けられている。 外他流(とだりゅう)の遣い手、元越後高田藩家臣釜崎弥之助や御側衆速水左近など、気になるキャラクターも登場し、ますます今後の活躍ぶりが気になるところ。 物語●六間堀の浪人坂崎磐音は、両国西広小路の両替商今津屋から、川開きの夜の接待の警護を依頼されたり、同じ長屋の水茶屋勤めのお兼の危難を救ったりと、八面六臂の大活躍。その磐音が、相州伊勢原の実家に戻る今津屋の内儀お艶と、それを送る主人吉右衛門ら一行の護衛を依頼された…。 目次■第一章 隅田川花火船/第二章 夏宵蛤町河岸/第三章 螢火相州暮色/第四章 鈴音大山不動/第五章 送火三斉小路 |
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陰陽師 生成り姫 (おんみょうじ・なまなりひめ)
[平安]
カバー:村上豊 |
♪気になっていた「陰陽師シリーズ」の長篇、『陰陽師 生成り姫』を読むことができた。 若き陰陽師・安倍晴明と朋友の源博雅が活躍するシリーズで、最初の長篇小説。強力コンビに、傍役として蘆屋道満も登場。あとがきを読んで、この本に関する疑問(1、なぜ朝日新聞に文藝春秋のシリーズが連載したのか 2、初読なのに読んだことがあるようなストーリーなのはなぜ?)が解消した。準備期間が1ヵ月というところで、朝日新聞夕刊への連載が決まったために、かねてから書きたかった「陰陽師」の長篇に取り組んだとのこと。また、朝日の読者のことを想定して、最初の部分で、安倍晴明や源博雅のプロフィール紹介や陰陽師そのものについての解説を加えていたのだそうだ。また、『陰陽師 付喪神ノ巻』の「鉄輪」をベースに長篇化したとのこと。なるほど。
物語●安倍晴明は、広沢の遍照寺の寛朝僧正と話をしているところに、公達たちが相撲節会での海恒世と真髪成村の取り組みについて予想を聞きに来た…。 目次■序ノ巻 安倍晴明/巻ノ一 源博雅/巻ノニ 相撲節会/巻ノ三 鬼の笛/巻ノ四 丑の刻参り/巻ノ五 鉄輪/巻ノ六 生成り姫|あとがき |
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美食探偵 (びしょくたんてい)
[明治]
カバーデザイン:南伸坊 |
♪レックス・スタウトの美食家探偵ネロ・ウルフ・シリーズを想起させるタイトルににやり。時代小説作家の新境地に期待大。 主人公の村井弦斎は、明治に活躍した実在の小説家で、作中でも紹介される『食道楽(しょくどうらく)』でベストセラー作家になっているという。読み進めると、ネロ・ウルフよりもシャーロック・ホームズに近い探偵ぶりを見せてくれて楽しい。ワトソン役の医学助手山田文彦とのコンビぶりもいい。明治を代表するリゾート地・大磯という、ハイカラな土地を舞台に選んだことも成功の一因か。次シリーズが楽しみな作品。 物語●「海から来た女」大磯の海水浴旅館の祷龍館を訪れた村井弦斎は、女の幽霊の話を聞く…。「薄荷屋敷」横浜の牛鍋屋で弦斎と山田文彦は、人気女形役者の変死に立ち会う…。「消えた大隈」弦斎は尾崎多嘉子から大隈重信の失踪事件について相談される…。「冬の鶉」弦斎は、明治政府初代陸軍軍医総監だった松本順より、新選組の永倉新八の甥留吉を紹介される。留吉が話す奇妙な事件とは…。「滄浪閣異聞」家業の牛乳搾取販売を手伝う松吉少年は、鴫立沢で、女性の死体を見つける…。 目次■海から来た女/薄荷屋敷/消えた大隈/冬の鶉/滄浪閣異聞|あとがき|解説 長谷部史親 |