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2002年1月・睦月の巻
大川わたり by 山本一力 |
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御金座破り 鎌倉河岸捕物控 (ごきんざやぶり・かまくらかしとりものひかえ)
佐伯泰英
装画:浅野隆広 |
♪金座裏の宗五郎親分の周囲に集まる若者たち(しほ、政次、亮吉、彦四郎)を中心に描く、青春捕物シリーズ最新刊。 『橘花の仇』、『政次、奔る』に続く第3弾。宗五郎らは、金座役人殺しの謎を追う傍ら、屋台の料理人殺しや商いの指南塾塾頭の娘の誘拐事件、紀州藩士の辻斬り、美人が絡んだ詐欺、偽金事件など、多様な事件を解決して行く。捕物小説としての魅力が堪能できるばかりか、宗五郎の後継者として、政次が手先に加わることにより、しほ、亮吉、彦四郎の関係が揺れる青春ものの部分も興味深い。 しほが働き、亮吉、政次、彦四郎らが集まる、酒と田楽がおいしい豊島屋は、白酒が有名で、現在も営業を続けている江戸の老舗である。
物語●戸田川の渡しで金座の手代・助蔵の斬殺死体が見つかった。小判改鋳にともなう極秘の任務に携わって京へ出張していた助蔵の死によって、金座に戦慄すべき危機が迫った…。 目次■序章/第一話 屋台騒動/第二話 塾頭弦々斎/第三話 仁左とはる/第四話 外面似菩薩/第五話 ほたるの明かり/第六話 御金座破り |
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御宿かわせみ 初春弁才船 (はつはるべんざいせん・おんやどかわせみ)
平岩弓枝
装丁:蓬田やすひろ |
♪「御宿かわせみ」シリーズの第26巻。正月にふさわしい、めでたそうなタイトルと蓬田さんの爽やかな色彩に装幀に惹かれる。表題作以外は、今回は悲惨な事件ややるせなくなるような話が多かった。そんな中で、気になったのは、偽金事件を描いた「メキシコ銀貨」である。当時の状況をうまく取り入れていて、後日譚が読みたくなった。 物語●「宮戸川の夕景」江戸にこの冬一番の霜が降りた朝、宮戸川に舫ってあった猪牙に半裸体の女の死体が流れついた。東吾は、軍艦操練所の同僚を見舞った帰りに、長助から、猟奇的な事件について聞いた…。「初春弁才船」麻生宗太郎が樽廻船の船長を父に持つ若者を連れてかわせみにやってきた…。「辰巳屋おしゅん」洲崎の水茶屋の娘、辰巳屋おしゅんが深川で人気を集めていた…。「丑の刻まいり」麻布飯倉の熊野権現の境内で、丑の刻まいりの女が見かけられた…。「桃の花咲く寺」かわせみを常宿としている男が、青山権田原にある寺で、面白い話を聞いた…。「メキシコ銀貨」神林麻太郎と畝源太郎は、江戸湾に浮ぶ帆船で幕府の軍艦蟠竜丸を見ていた…。「猫一匹」東吾は軍艦操錬所から帰ると、虎猫を抱いた老女と女中のお吉が話をしているのを見かけた…。 目次■宮戸川の夕景|初春弁才船|辰巳屋おしゅん|丑の刻まいり|桃の花咲く寺|メキシコ銀貨|猫一匹 |
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火城 (かじょう)
高橋克彦
カバーイラスト:森英二郎 |
♪高橋克彦さんの作品を集中的に読んでいた頃(1992)、時代小説(歴史小説)と思わずに手により読み出して、感動した記憶がある。剣や血に拠らないで、幕末を迎えた人物の物語が熱い。あとがきによると、高橋克彦さんの初の歴史小説とのこと。ちなみにこの作品の前年に書かれた「舫鬼九郎」は初の時代小説と本人の中ではその位置付けを使い分けておられた。 幕末という日本中が沸騰した蒸気機関のようになっていた時代に、思想や政治ではなく、ひたすら技術革新に目を向けていた佐賀の特異性、先進性が、佐野栄寿という実在の人物を通して描かれている。 タイトルの「火城」とは、陣の周囲に松明をならべて防壁となすことで、佐賀藩主・鍋島閑叟が栄寿に「佐賀ほど先を照らす人間を集めている国はなかろう。」「おまえも佐賀に燃え盛る火の一つだ」と言葉をかけるシーンがあり、なぜ佐賀藩が武力行使のイメージがあまりないままに、明治維新にあって重要なポジションに着けたのかがわかった気がする。 再読してみて、意外なところに井伊直弼の懐刀である長野主馬(主膳)が出てきてびっくりした。 物語●泣く、ということはひとつの才能である。武士の世にあって男はけっして涙を見せるものではないと厳しく教育されている。まして、『葉隠』を家訓とした肥前佐賀藩ではもっとも徹底していたはず。そんな中にあって、しばしば泣き、その見事な泣きぶりによって人の心を揺さぶり、歴史に足跡を残した男がいた。日本赤十字社の生みの親佐野栄寿(えいじゅ、後の常民・つねたみ)である。 目次■切り火/非常の人/対峙/航海/黒船/火城/曙光/あとがき/解説 清原康正 ここから始まる本のリンク▼ 『女陰陽師』(加野厚志著・祥伝社文庫) |
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戦鬼たちの海 織田水軍の将・九鬼嘉隆 (せんきたちのうみ・おだすいぐんのしょう・くきよしたか)
白石一郎
カバー:西のぼる |
♪柴田錬三郎賞受賞作。2001年12月に伊勢・志摩を訪れる機会があり、志摩国の大名・九鬼嘉隆の本が読みたくて、久々に再読した。志摩の土豪から身を起こし、海賊から織田信長配下の武将として、水軍を指揮し、毛利船団を破ったり、朝鮮出兵したりと、戦国の歴史に異彩を放った戦国武将・九鬼嘉隆の生涯がスケール大きく描かれている。 蓄積した結果を収穫する農耕民族型とは異なる、海に生きる人間を感じさせるヒーローの人格形成が興味深い。嘉隆にとっては、なぜ、信長でなければだめなのか、家康とは本質的に相容れないのかがよくわかった。
物語●十五歳の九鬼嘉隆は、大王崎で時化にあって座礁した千石船を襲い、伊勢内宮の小宮司のもとへ嫁入りする土佐一条殿衆の娘お咲を略奪し、妻にした。 目次■第一章 大王崎/第二章 志摩を追われて/第三章 天下布武の人/第四章 織田水軍/第五章 志摩平定/第六章 艦砲射撃/第七章 石山海戦/第八章 船は日本丸/解説 縄田一男 ここから始まる本のリンク▼『覇王の海』(二宮隆雄著・角川文庫) |
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大川わたり (おおかわわたり)
山本一力
画:葛飾北斎/富嶽三十六景(深川万年橋下) |
♪御贔屓の山本さんの最新作。スローネット(http://www.slownet.ne.jp/)に、日刊で連載した江戸市井小説。銀次と猪之介との間で交わされた借金返済のための条件が、借金を返すまでは大川を渡って深川に戻って来るなの一条。深川で生まれ育った銀次にとって、大川を渡り川の向こうに住むことの難しさとは…。冒頭の設定の妙でぐいぐい引きこまれる、プロットの巧みさが見事。 一途な若者・銀次。それゆえに、挫折し、周りの助けで立ち直り、一生懸命生きていく。人を信じること、智恵と勇気で困難に立ち向かうことの大切さを改めて知ることができる。こんな厳しい時代だからこそ、読んで感動したい作品である 物語●二十七になったばかりの銀次は、一月に二両も稼ぐ腕のいい大工だったが、失意がもとで博打にはまり、半年でニ十両もの借りを作ってしまった。持ち金はすべて借金の返済に取り上げられたばかりか、仲間を賭場に引き入れる役まで強いられた。昨日、銀次が賭場に引き込んだ鏝屋の一家が夜逃げをした。鏝屋の暮らしを潰したことで、銀次は腹を決め、賭場を開いている達磨の猪之介に掛合いに行った…。 目次■壱/弐/終章 |