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2001年11月・霜月の巻
北辰の剣 千葉周作 開眼 by 千野隆司 |
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御隠居忍法 不老術 (ごいんきょにんぽう・ふろうじゅつ)
高橋義夫
カバー画:西のぼる |
♪伊賀者の子孫で元・幕府隠密、鹿間狸斎の活躍を描くシリーズ第2弾『黄金谷秘録』(実業之日本社)を改題。不惑、中年? 微妙な年頃なせいか、老いをテーマにした作品が苦手である。とはいえ、この物語の主人公鹿間狸斎は、『剣客商売』の秋山小兵衛のように、下女に手を出し子どもを作ったり、武技にすぐれ事件を解決したり、鉄脚膏という疲労回復薬を売り出したりと八面六臂の活躍をするのところが面白い。 作者は、奥州の笹野藩という架空の場所を舞台に物語を紡いでいる。1作目ではわかりづらい、笹野藩の様子がだいぶ広がりが出てきた。 物語●伊賀者の子孫で、四十歳で家督を譲り隠居となり、奥州の笹野藩に暮らす鹿間狸斎は、七ヵ月ぶりに江戸から五合桝村に帰ってきた。目明しの文次や文次の妻・おきみ、狸斎の妾・おすえと赤子・小松、狸斎の娘の舅・新野耕民らが出迎えた。帰ってきた狸斎は、勃起不全に悩まされた。そこで体を鍛えるために、回峰修行を始めるが、熊に襲われ大怪我を負ってしまう…。 目次■鳥骨鶏の卵|碁盤岩|微塵流霞の太刀|明暗|銅山浄土|天狗の落とし文|天狗のかのか ここから始まる本のリンク▼『剣客商売』(池波正太郎著・中公文庫) |
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猿若町捕物帳 巴之丞鹿の子 (さるわかまちとりものちょう・ともえのじょうかのこ)
近藤史恵
カバーイラスト:茶屋町勝呂 |
♪ミステリー畑で活躍する近藤さんの捕物時代小説。歌舞伎の世界を題材に取り上げているのが、女性らしい視点が新鮮。歌舞伎をちゃんと見たことがないくせに、歌舞伎を題材にした小説に惹かれてしまう。昔、戸板康二さんの中村雅楽を主人公にした推理小説を読んで以来のことだ。 無骨で堅物な同心玉島千蔭と若手女形水木巴之丞の取り合わせが絶妙。また、千蔭の周囲を固める人物たちも個性的で楽しい。シリーズ第2弾が楽しみな作品。 タイトルにもなっている巴之丞鹿の子は、少し赤みがかった鼠色の縮緬に、細かい絞りが斑のように入っている、娘が使うには華やぎに欠けるものである。
物語●草履の鼻緒を切ってしまったお袖は、お寺の軒下で雨宿りをしていた。そこへ黒縮緬の紋付を着た武士が飛び込んできた。お侍さんは、親切にも持っていた手拭いを裂いて鼻緒をすげてくれようとしたが、お袖はそのお侍を足で蹴ってしまった…。 目次■なし |
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火頭 密命・紅蓮剣 (かとう・みつめい・ぐれんけん)
佐伯泰英
カバーデザイン:中原達治 |
♪大岡越前の懐刀となった、金杉惣三郎が活躍する、『密命』シリーズ第5弾。大岡越前守による、町火消制の設立をテーマに描かれていて興味深い。現在の感覚から良い制度だから万人に受け入れられたものと思っていたが、反対するものたちが、やはりいたんだなあ。物語●火頭の歌右衛門に率いられた凶徒たちが、両替商を襲い、家族と奉公人を皆殺しにした上で、金蔵を破り、火付けをした。南町奉行所の近くの凶行に、大岡越前守忠相自ら出馬した。凄惨な現場には、甘酸っぱい匂いと、墨痕あざやかに「いろは4十七文字 揃えてみても 消すに消されぬ大岡の水」の木札が残されていた。大岡越前が全力を挙げて取り組む町火消制の設立をあざ笑うかのような戯れ歌である…。 目次■序章/第一章 大川端の猪鍋/第二章 車坂の小蝮/第三章 鍾馗の昇平/第四章 鹿島の若武者/第五章 町火消誕生/第六章 みわの手柄/解説 細谷正充 |
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慶次郎縁側日記 再会 (さいかい・けいじろうえんがわにっき)
北原亞以子
カバー装画:蓬田やすひろ |
♪『傷』に続く慶次郎縁側日記シリーズ第二弾。舞台を思わせる豊潤な北原ワールドが堪能でき、期待に違わず泣かせる話が多い。「お見舞い」や「再会」3部作など、良質な一幕ものを見る思いがする。解説ページで、寺田農さんが書いているように、映像化させたい作品である。最愛の娘を亡くした、初老のイメージと、「仏の慶次郎」と呼ばれた定町廻り同心のイメージを演じられる役者さんがいるかどうか思いつかないが…。「慶次郎」シリーズは、第1弾「傷」、第2弾「再会」、第3弾「おひで」、第4弾「峠」、第5弾「蜩」と刊行されている。 物語●「恩返し」慶次郎は藤寺と呼ばれる円光寺で、十徳姿の男と出会った…。「八百屋お七」根岸に帰る慶次郎は、市中見廻りの養子・晃之助と偶然出会い、方向が一緒でしばらく一緒に歩いていると、麻の葉の模様の着物を着た娘をよく見かけることに気付いた。芝居の八百屋お七が着ていたものだという…。「花の露」慶次郎のもとを和田屋彦七がたずねてきた。店仕舞いすることをきめたという…。「最良の日」慶次郎は、佐七から谷中感応寺の富突の当り籤を見てきてもらうように頼まれた…。「日々是転寝」山口屋の寮をお直が訪ねてきた。慶次郎が寮番を辞めてくれれば、後釜にお直の亭主が坐れるという…。「やがてくる日」三十五歳で一人暮しのおはまは、易者に呼びとめられた…。「お見舞い」料理屋花ごろもを営むお登世は、森口晃之助が世話してくれた娘おすみの最近の行動に不審の念をもった…。「晩秋」岡っ引の吉次は、下っ引きの一人からその男の所在を聞いた…。「あかり」「あかり」森口晃之助と慶次郎は暗がりで泣いている娘おさきを見かけた…。「再会 一 秘密」岡っ引の辰吉がおもんと出会ったのは、茗荷を買っているときだった…。「再会 二 卯の花の雨」慶次郎は、腹の虫おさえに蕎麦屋へ入って、おしんに出会った…。「再会 三 恋する人達」吉次はむきみ小屋へ遊女の取締りに来ていた。そこで彼が見たものは…。 目次■恩返し|八百屋お七|花の露|最良の日|日々是転寝|やがてくる日|お見舞い|晩秋|あかり|再会 一 秘密|再会 二 卯の花の雨|再会 三 恋する人達|「慶次郎縁側日記」、なんとか映像化したいなァ 寺田農 |
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堪忍箱 (かんにんばこ)
宮部みゆき
カバー装画:藤田新策 |
♪江戸に生きる名もない市井の人々を温かい目で見守る宮部さんの珠玉の作品集、遂に文庫化。揺れる乙女心を描いた「てんびんばかり」が見事。 それはそうと、宮部さんの独特の比喩が好きだ。たとえば、「幸い、その夜はよく晴れた。月は鏡のように明るく、まるで、夜を真ん丸に切り開き、そこから灯籠を傾けて下界を見おろしておられるかのようだった」(「十六夜髑髏」より)。作中に1、2回はこの必殺技を繰り出される。 物語●「堪忍箱」菓子商の近江屋には、堪忍箱という黒い漆塗りの文箱があった…。「かどわかし」畳職人の箕吉は、近所で見なれない子どもからかどわかしてほしいと頼まれた…。「敵持ち」三度も続けて刺し殺される夢を見た、板前の加助は、同じ長屋に住む浪人・小坂井又四郎に用心棒を頼んだ…。「十六夜髑髏」火事でふた親と弟を一度に失ったふきは、米屋の小原屋に上がったが、四代続く、その店には先輩の女中の話では、気味が悪いことがあるという…。「お墓の下まで」差配の市兵衛に育てられた、ゆきと藤太郎とおのぶは、みな捨て子だった…。「謀りごと」丸源長屋は、十年間、一度も火事に遭っていないというのが自慢だった。その丸源長屋の差配人黒兵衞が変死した…。「てんびんばかり」お吉は幼なじみで同じ長屋でいっしょに育ったお美代を嫁に出した時から、ずっとひがんでいた…。「砂村新田」お春はおきんおばさんに紹介されて、砂村新田の地主の家に下働きの女中として働くことになった…。 目次■堪忍箱|かどわかし|敵持ち|十六夜髑髏|お墓の下まで|謀りごと|てんびんばかり|砂村新田|解説 金子成人 ここから始まる本のリンク▼『幻色江戸ごよみ』(宮部みゆき著・新潮文庫) |
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北辰の剣 千葉周作 開眼 (ほくしんのけん・ちばしゅうさく・かいげん)
千野隆司
カバーイラスト:菊池誠 |
♪北辰一刀流の開祖、千葉周作の若き修行の日々を描く、剣豪小説。“音無しの剣”で知られる高柳又四郎との対決が描かれていて興味深い。 友のために、悪に立ち向かう主人公周作。剣だけではない千葉周作の青春が描かれていて面白い。もちろん、高柳又四郎や臼井亨、浅利又七郎らとの立ち会いシーンも丹念に描かれていて堪能できる。 物語●千葉周作の剣術仲間の赤堀民之助が、小普請支配の旗本土屋丹波守を仇として狙い、丹波守の供侍に返り討ちにあった。瀕死の友・民之助から父の仇討ちと、女衒の手に連れ去られた妹の救出を託された周作は…。 目次■第一章 音無しの剣/第二章 杏子の木/第三章 戸田の渡し/第四章 闇討ち/第五章 水月の矩 ここから始まる本のリンク▼『千葉周作』上下(津本陽著・角川文庫) |