新・極楽の読書録
2001年7月・文月の巻

飢狼の剣 by 鈴木英治
源氏無情の剣 by 火坂雅志
真説 仕立屋銀次 by 満坂太郎
血疾り by 鳥羽亮
双頭の鷲 上・下 by 佐藤賢一
歳三奔る by 江宮隆之
地名で読む江戸の町 by 大石学



地名で読む江戸の町
(ちめいでよむえどのまち)

大石学
(おおいしまなぶ)
[江戸学]

装幀者:芹澤泰偉+野津明子
解説:菊池仁
時代:慶応三年(1867)十二月
場所:京都・堀川、伏見奉行所、大坂、品川、江戸城、甲府、上野、千駄ヶ谷、赤坂氷川下ほか
(PHP新書・720円・01/03/29第1刷・01/06/07第4刷・251P)
購入日:01/06/22
読破日:01/07/31

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地名で読む江戸の町 最近、江戸の町歩きを始めた。その関係で江戸の町の発生に興味をもっている。岸井良衞さんの名著『江戸の町』に続くもの。
わかりやすい筆致で、江戸の町の成り立ちや地名の由来、故事が確認できる。とくに、「武蔵野」の章(江戸といいながらも周辺の町も押さえている)が、現在住んでいることもあり、興味深かった。「府中」というと、JRAの東京競馬場の所在地「競馬の町」として知られているが、戦国から江戸時代にかけて、馬市が催されていたとは知らなかった。

読みどころ●丸の内、新宿、八丁堀、上野、築地、吉原、中野、巣鴨…。地名の由来を探れば、過去の社会制度や事件、人々の暮らしが身近に見えてくる。本書は、地名をもとに、江戸の歴史と町へアプローチ。第1部では、江戸の町がいかにつくられ、発展していったかを概観する。第2部では、エリアや機能別に50の地名の具体的な歴史を探訪する。

目次■はじめに|第1部 江戸の町の誕生と成長 1 首都の成立(中世から経済・交通の拠点だった/家康関東移封のいきさつ/参勤交代、そして外交の場/城と城下町の普請/寺社の建立・町人地の整備/青梅と五日市の大事な役割/神田上水と玉川上水) 2 巨大都市への道(明暦の大火による焼失/武家屋敷や寺社の移転/本所・深川の開発/世界一の都市/鷹場制度の整備/将軍吉宗の首都圏再編/上納物あれこれ/行楽地は鷹場の中に/武蔵野の新田開発) 3 成熟、崩壊、そして東京へ(宝暦〜天明期の変化/化政期の成熟/軍事施設の設置/教育機関と公使館/開城と上野戦争/東京改称への道のり)|第2部 地名で読む江戸 第1章 幕府が造った町 丸の内(千代田区)/大手町(千代田区) /北の丸(千代田区)/見附(千代田区) /高田馬場(新宿区)/お台場(港区) 第2章 武家地 有楽町(千代田区)/八重洲(中央区)/御茶の水(千代田区)/後楽園(文京区)/番町(千代田区)/八丁堀(中央区) 第3章 寺社地 上野(台東区)/浅草(台東区)/門前仲町(江東区)/目黒(目黒区)/高輪(港区)/小石川(文京区) 第4章 町人地 銀座(中央区)/蔵前(台東区)/両国(墨田区)/馬喰町(中央区) 第5章 水辺の町 佃島(中央区)/木場(江東区)/築地(中央区)/永代(江東区) 第6章 交通の要所 日本橋(中央区)/品川(品川区)/高井戸(杉並区)/新宿(新宿区)/千住(足立区)/板橋(板橋区) 第7章 遊び場 吉原(台東区)/猿若町(台東区)/向島(墨田区)/飛鳥山(北区) 第8章 武蔵野 中野(中野区)/練馬(練馬区)/石神井(練馬区)/吉祥寺(武蔵野市)/小金井(小金井市)/深大寺(調布市)/府中(府中市) 第9章 東の郊外 日暮里(荒川区)/下谷・入谷(台東区)/巣鴨(豊島区)/小松川(江戸川区)/柴又(葛飾区)/金町(葛飾区)/水元(葛飾区)|おわりに/参考文献・史料一覧/執筆者一覧

ここから始まる本のリンク▼『江戸の町』(岸井良衞著・中公新書)

歳三奔る 新選組最後の戦い
(としぞうはしる・しんせんぐみさいごのたたかい)

江宮隆之
(えみやたかゆき)
[新選組]
★★★★

カバーイラスト:菊地誠
カバーデザイン:中原達治
解説:菊池仁
時代:慶応三年(1867)十二月
場所:京都・堀川、伏見奉行所、大坂、品川、江戸城、甲府、上野、千駄ヶ谷、赤坂氷川下ほか
(祥伝社文庫・552円・01/06/20第1刷・299P)
購入日:01/07/14
読破日:01/07/28

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歳三奔る 新選組最後の戦い 作者は、1989年に『経清記』で第13回歴史文学賞を受賞した、新進作家。山梨生まれの作者が、新選組の甲府進軍を中心に描いた作品。 新選組の土方歳三というと、司馬さんの『燃えよ剣』がデーンと前に立ち塞がり、遺された写真の端正なマスクと相俟って、作家泣かせの歴史人物である。
作者の江宮さんは、新選組が落ち目になりかけた鳥羽伏見の戦い直前からストーリーを始め、甲府の戦いをメインに据えたことで、オリジナリティある作品に仕上げている。
以前から、甲陽鎮撫隊のちぐはぐさが気になっていたが、この作品で納得できる説明がなされていた。
『経清記』もぜひ読んでみたくなった。

物語●土佐海援隊の陸奥陽之助や岩村精一郎ら十六人が、油小路の天満屋に投宿していた紀州藩の家老代理・三浦休太郎を急襲した。坂本龍馬暗殺の下手人と見て、その仇を討つためであった。新選組は、そうした動きを察知して、三浦を警護していた。事件の二日後。土方歳三は、身も心も疲れきり、悪い夢を見た。
それは新選組の運命を大きく変えていく前兆だった。「王政復古」をうたった薩摩藩兵が力攻めで御所に押し入り、京都に駐屯している幕府軍を後退させ、新選組も維新の嵐の中に投げ出されるのだった…。

目次■第一章 王政復古/第二章 甲府城/第三章 江戸警護/第四章 偽勅使事件/第五章 甲陽鎮撫隊/第六章 鎮撫隊出陣/第七章 柏尾の戦い/あとがき/解説 菊池仁

ここから始まる本のリンク▼『燃えよ剣』(司馬遼太郎著・新潮文庫)

双頭の鷲 上・下
(そうとうのわし)

佐藤賢一
(さとうけんいち)
[西洋]
★★★★☆☆

カバー装画:高橋常政
デザイン:新潮社装幀室
解説:北上次郎
(新潮文庫・各781円・01/07/01第1刷・上573P、下602P)
購入日:01/07/05
読破日:01/07/24

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双頭の鷲 佐藤さんの名作が文庫化。『傭兵ピエール』の姉妹編的な作品。圧倒的なスケールで描かれる西洋時代小説の傑作。全く歴史観がない、中世フランスの百年戦争の頃を舞台にしていながら、門外漢の読者を惹きつけ虜にする、佐藤さんの筆致とストーリーテリングに脱帽。
野蛮で、礼儀知らずで無教養、四十歳過ぎまで女性に縁がない、見てくれも奇妙な男、ベルトラン・デュ・ゲクランがこの上ない、ヒーローに思え、親近感が湧いてくるから不思議だ。その容貌も「浅黒く焼けた顔は丸く、飛び出した目玉も丸く、どっしりしとした鼻までが丸く胡座をかいている。白々と頭皮を露にしながら、髪も綺麗に丸刈にして、いやが上にも目立った耳は、これまた休憩する揚羽蝶のようだった」と描写され、腕はだらりと下げれば膝まで届くといった異形ぶりだ。
ベルトラン・デュ・ゲクランの魅力を語るのに、筆者は多士済々の人物を配した。従兄弟で托鉢修道士エマヌエルは、その相談役。幼なじみで占い師のティファーヌは、ベルトランの初恋の人。ひ弱な王太子でのちにフランスを統一するシャルル五世。イングランド軍の戦争の天才、グライ―。
友情あり、恋あり、戦争ありで、面白いこと100%保証付きだ。

物語●イングランドとの百年戦争で劣勢に陥るフランスに登場したベルトラン・デュ・ゲクラン。ブルターニュ産の貧乏貴族、文盲で口を開けば乱暴で粗野なことばかり。だが、幼き日より、喧嘩が滅法強くて、見事な用兵で敵を撃破 する、軍事の天才だった。
ベルトランは、捕虜となった実弟のオリヴィエを救うため、イングランド軍の騎士トマス・オブ・カンタベリと決闘することになった…。(下巻)
ベルトランは、子どもの頃、占いの評判の高い修道女に占ってもらった。「この男子、人知の及ばぬ栄光の定めを授かりて、系譜に未踏の輝きを得ん。天下に無二の人となり、百合の花に飾られたる、未曾有の名誉を楽しまん。遠くエルサレムの果てにさえ、名を轟かせるに至るなり」。
ベルトランは、百合の花に象徴される王太子シャルル(後のシャルル五世)と出会い、奇蹟のデュオは、民衆に希望をもたらしていった…。(下巻)

目次■プロローグ ポワティエ(一、戦場/二、敗者)|第一章 ブルターニュ(一、悪童/二、ドールフィン館/三、猛獣遣い/四、占い/五、闘技場/六、決闘/七、美の厭うところ/八、弟たち/九、疑念/十、突破/十一、チャンドスの目/十二、主君)|第二章 パリ(一、ポントルソン/二、結論/三、図書館/四、決別/五、赤青帽/六、パリは燃える/七、預言の人/八、脱出/九、プロヴァン/十、地図/十一、遊戯/十二、モー/十三、パリ包囲/十四、目算)|第三章 ノルマンディ(一、旧主/二、見合い話/三、日課/四、石の質感/五、カレー/六、騎士は踊る/七、前日/八、ホロスコープ/九、過去/十、グーレー城/十一、コシュレル/十二、敵将/十三、動揺/十四、幕開け)(以上上巻)|第四章 スペイン(一、オーレ/二、展開/三、アヴィニョン/四、ピレネ越え/五、ナヘラ/六、サン・ポル館/七、彷徨/八、悪夢/九、対面/十、ガスコーニュ人)|第五章 フランス(一、プロヴァンスからの手紙/二、モンティエル/三、祝宴/四、表裏/五、モン・サン・ミシェル/六、最後の目/七、不純/八、フォワ伯の依頼/九、鋳型/十、鷲の帰還/十一、虐殺/十二、百合の花に飾られたる/十三、ポンヴァヤン/十四、死相)|第六章 ブルターニュ(一、軍神/二、愛しすぎて/三、遺言/四、生還/五、牢/六、初恋/七、難局/八、迷い/九、エキュ・ドゥ・フランス館/十、僧院/十一、シテ島/十二、両替屋橋/十三、ひとまち顔/十四、ボテ城)|エピローグ エルサレム(一、戦場/二、聖地)|主要参考文献/文庫版あとがき/解説 北上次郎(以上下巻)

ここから始まる本のリンク▼『傭兵ピエール』上・下(佐藤賢一著・集英社文庫)

血疾り 天保剣鬼伝
(ちばしり・てんぽうけんきでん)

鳥羽亮
(とばりょう)
[剣豪]
★★★☆☆☆

カバーイラスト:西口司郎
カバーデザイン:多田和博
解説:細谷正充
時代:天保十四年(1843)
場所:西両国、浅草元鳥越町、本所柳原町、浅草茅町、日吉神社、回向院ほか
(幻冬舎文庫・648円・01/06/25第1刷・320P)
購入日:01/06/09
読破日:01/07/12

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血疾り 天保剣鬼伝 首売りの大道芸で暮らしている島田宗五郎を主人公とした、剣豪小説。シリーズ第3弾にして、最終話と題された作品。何だか、とても残念な思いがする。
真抜流の遣い手の島田宗五郎は、浪人になる前は、陸奥国彦江藩の馬廻役で三十五石であったが、藩の抗争にまきこまれて上役を斬って、出奔し、江戸へ出て両国広小路で途方に暮れている時、堂本座の座頭・堂本竹造に、首屋なる珍商売を勧められ、娘の小雪と生計を立てていた。その宗五郎が、旧藩の御家騒動や堂本座の縄張り争いなどに巻き込まれるのが、このシリーズの特徴のひとつ。
著者の作品の特徴のひとつであるチャンバラシーンの圧巻ぶりに加えて、堂本座という異能集団の個性を生かしたメンバーの活躍ぶりがみどころ。今回もいかんなく発揮されている。江戸の見世物の様子も詳しく描写されていて興味深い。

物語●駒形の伝蔵が興業主を務める大坂下り娘軽業が、西両国で人気を博し、両国を縄張りとする堂本座は閑古鳥が鳴いていた。両国の岸辺で、浪人島田宗五郎と娘の小雪は、首屋の見世物をやっていた。宗五郎の前に、国許で真抜流の道場に通っていた頃の同門の友人青木伸次郎がやってきた。そして十日ほど前に、八年前に宗五郎が国許で斬った藩の重役の息子と三人の剣の遣い手が上府したことを告げた…。

目次■第一章 千両役者/第二章 無念流一門/第三章 巌波/第四章 我が子/第五章 攻防/解説 細谷正充

ここから始まる本のリンク▼『鬼哭の剣 介錯人・野晒唐十郎』(鳥羽亮著・祥伝社文庫)

真説 仕立屋銀次
(しんせつ・したてやぎんじ)

満坂太郎
(みつさかたろう)
[明治]
★★★★

カバー装画:蓬田やすひろ
編集協力:(株)元気工房
時代:明治二十一年(1888)
場所:日本橋蠣殻町、池之端、下谷、上野広小路、新橋ステーション、両国橋、八丁堀、市ヶ谷監獄ほか
(光文社文庫・495円・01/06/20第1刷・281P)
購入日:01/06/09
読破日:01/07/08

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真説 仕立屋銀次 結城昌治さんの小説を読んで以来、気になっていた明治の掏摸の大親分・仕立屋銀次を描いた長篇小説。
明治二十年代の東京が幕政下の江戸と同じように掏摸の街であったことに新鮮な驚きを感じる。根津の親分こと巾着豊と清水熊が二大親分で、清水熊の跡目を仕立屋銀次が継ぐことになる。“デコ政”、“ネショ吉”、“目細安”、“タコ源”のように江戸の盗賊のように、二つ名というかニックネームがあるところが興味深い。
掏摸の世界に近代化とも思われる合理性をもたらした銀次が、国家警察の体制が整えられて行く過程で、駆逐されていく歴史の非情さを感じさせる作品。

物語●日本橋蠣殻町で仕立屋を営む富田銀蔵(銀次)は、堅気の人間には見えない若い男から、おくにから手を引くように脅された。柔術の心得がある銀蔵は、若い男を撃退した。おくには、十八で週に三回ほどお針を習いにやってくる娘で、両親は下谷に居るらしいが、蠣殻町の伯父夫婦の家で暮らしていた。その伯父夫婦の家で、銀蔵は、おくにが掏摸の大親分清水熊の娘であることを知った…。

目次■第一章 掏摸の家/第二章 東京監獄/第三章 浪華チボ/第四章 火吹竹/第五章 贋金始末/第六章 かわいそ節/第七章 台湾便り/第八章 三宅坂/あとがきに代えて/参考文献

ここから始まる本のリンク▼『仕立屋銀次隠し台帳』(結城昌治著・中公文庫)

源氏無情の剣
(げんじむじょうのけん)

火坂雅志
(ひさかまさし)
[源平]
★★★★☆

カバー画:柳澤達朗
カバーデザイン:中原達治
解説:細谷正充
時代:「心なき者」延久四年、「にせの義親」天仁元年、「為朝島渡り」久寿二年、「鵺」仁平年間、「熊野の美姫」永暦元年、「もうひとりの義経」治承四年、「人穴」建仁三年、「幻の将軍」建仁三年、「独眼法印」建保六年。
場所:「心なき者」三井寺園城寺、「にせの義親」伯耆大山山中、「為朝島渡り」七条、「鵺」五条天神社、「熊野の美姫」熊野新宮、「もうひとりの義経」鎌倉、「人穴」富士裾野ほか
(祥伝社文庫・619円・01/05/20第1刷・389P)
購入日:01/05/12
読破日:01/07/05

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源氏無情の剣 『源氏無情剣』(1997、青樹社刊)改題。清和源氏一族の宿命を描く異色時代小説。
なぜ、源氏が武家の棟梁と呼ばれるのか? その成り立ちだけでなく、一族に脈々と流れる熱き武士(もののふ)の血がその証しだろうか? ロマンを感じさせる短編集である。
鎮西八郎為朝や二代将軍頼家といったおなじみの人物から、源三位の頼政や新羅三郎義光などの名前だけは知っている人物、丹鶴姫や山本義経らこの作品集で初めて知った人物まで、興味深い源氏一族が次々と登場し、伝奇的手法で描かれていくのが面白い。

物語●「心なき者」源頼義の三男義光は新羅明神にちなんで“新羅三郎”と名付けられたが、その名号に不満をもっていた…。「にせの義親」西国の官物を押領し、暴虐をはたらき、平正盛に討ち取られた謀反人源義親の首が春の都大路をゆく…。「為朝島渡り」源氏の棟梁、源義朝は、十六歳下の弟、鎮西八郎為朝の勝って気ままぶりを苦々しく思っていた…。「鵺」仁平年間、天皇は夜な夜なあらわれる鵺の鳴き声に悩まされ、重い病の床についていた。比叡山の高僧の加持祈祷は何の効験もなく、鵺の脅威はゆゆしきものとなっていた。その変化の噂を兵庫頭源頼政は、ばかばかしく思っていた…。「熊野の美姫」以仁王の令旨を持って参戦した新宮十郎行家は、破れて熊野新宮にもどり、姉の丹鶴姫(たんかくひめ)に慰められた…。「もうひとりの義経」近江の山本冠者義経は鎌倉の地に愛妾の白拍子の千鳥とやってきた…。「人穴」二代将軍源頼家は、御家人の仁田四郎忠常に、富士裾野の洞窟探検をさせた…。「幻の将軍」平賀朝雅は、美しい義母の牧ノ方にあれこれと世話を焼かれてまいっていた…。「独眼法印」高野山の僧侶貞暁のもとに、鎌倉からの使者として大山山伏の娘がやってきた…。

目次■心なき者|にせの義親|為朝島渡り|鵺|熊野の美姫|もうひとりの義経|人穴|幻の将軍|独眼法印|あとがき|解説・細谷正充

飢狼の剣
(きろうのけん)

鈴木英治
(すずきえいじ)
[剣豪]
★★★★☆

装画:百鬼丸
装幀:野津明子(芦澤泰偉事務所)
解説:細谷正充
時代:明記されず。享和(1800年代初め)頃か
場所:陸奥の某所(架空)
(ハルキ文庫・743円・01/06/18第1刷・367P)
購入日:01/06/16
読破日:01/07/02

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飢狼の剣 『義元謀殺』で注目される新進時代小説家、鈴木さんの剣豪ミステリー。
若い浪人吉見重蔵のキャラクター造型が新鮮。その容貌は「鼻筋の通った精悍な面がまえをしているが、額の左にある小さな傷跡が人相にすごみを与えていた。形はいいが酷薄そうな薄い唇…」「二十七、八といったところか。何人もの人を殺してきた目つきに感じられた。いや、まちがいなく殺している。暗闇のなかでも餓狼のような光を放つ瞳の色は、これまで見てきた幾多の犯罪人と比しても際立っていた」などと描かれている。人を殺すことに大義名分や倫理観をふりまわさない現代風のキャラクターで、物語の展開を複雑にしている。
陰外流の達人で、そのチャンバラシーンも凄味がある。逐電した朋輩の消息を追う旅で、誘拐事件や山賊の襲撃、お家騒動に巻きこまれる重蔵の活躍ぶりは…。

物語●町奉行所同心清水角兵衛は、若い浪人に千人神社へ呼び出されて殺された。大友屋の番頭万蔵のもとに文が届けられ、久左衛門を誘拐し、身代金を要求するものだった。文を渡した男は清水を殺した若い浪人だった。万蔵は久左衛門の若い妻おあきや目明しの伊平と相談し、二千両の身代金を用意し、届けることになった…。

目次■なし

ここから始まる本のリンク▼『孤剣』(大藪春彦著・徳間文庫)